2009年11月6日(金)「しんぶん赤旗」
「普天間」 無条件撤去が沖縄の心 本腰入れて対米交渉せよ
衆院予算委員会 笠井議員の質問
日本共産党の笠井亮議員(政策委員会副責任者)が4日の衆院予算委員会で行った基本的質疑を紹介します。
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笠井亮議員 まず、鳩山総理に確認をしておきたいと思います。沖縄の普天間基地問題について質問いたします。
先の総選挙での民主党の公約は何かということであります。民主党は2008年版「沖縄ビジョン」というものがありますが、ここでは「米軍再編の中で在沖海兵隊基地の県外への機能分散をまず模索し、戦略環境の変化を踏まえて国外への撤去を目指す」と、こう書かれています。
さらに、今回の総選挙のマニフェストを拝見しますと、「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても引き続き見直しの方向で臨む」と、こう書かれております。
そして、鳩山総理は総選挙中のテレビの党首討論の中で8月23日だと思いますが、わが党の志位委員長の問いに答えて、普天間基地は「県外、国外移設が望ましい」と明言されております。そういうことについて間違いありませんね。
鳩山由紀夫首相 私もそのようなことを申したと、そのように思っておりまして、間違いはありません。
笠井 普天間基地の周辺に住宅・公共施設・保育園。基地が市のど真ん中にある。危険な基地は一刻の猶予なしになくさねば。公約の意味は重い
鳩山首相 (県外・国外移設と)選挙で申し上げた言葉は重い
笠井 この沖縄の普天間基地がいかに危険かということであります。
全長2800メートルの滑走路を持つ米海兵隊の普天間基地は、宜野湾市のど真ん中にあって市面積の25%を占めております。基地の周辺は住宅と公共施設、幼児の保育施設が、相当あります。
アメリカの安全基準からいいますと、利用禁止区域が900メートル、滑走路の端から4500メートルの範囲には住宅、学校、病院、文化施設、集会所をつくれないと。ところが、そんな基地が平然とこの宜野湾市のど真ん中にあるわけであります。
1995年に米兵による少女暴行事件がありました。その直後にわが党の調査団に私も参加しましたが、当時の宜野湾市の桃原市長がこう言われていました。「人間で言えば胸と腹を、体のど真ん中をえぐられたようなものだ。生きていけない」と切々と話されまして、胸にずしりと響きました。
米軍ヘリは基地周辺の住宅地上空を低空飛行で旋回をするタッチアンドゴー訓練をするということで、どこからも離着陸できます。まさに市民の命と安全が日夜脅かされている。年間の推定離着陸は4万5000回以上、騒音発生は2万回を超えている。米軍機による事故も頻発しまして、2004年8月には沖縄国際大学への衝撃的な米軍ヘリ墜落事故まで起きたわけであります。
そのヘリもイラク戦争派遣のための訓練中でありました。まさに世界に例を見ない危険な基地は一刻の猶予もなく無くさなければいけない、これが県民の総意だと思います。
そういう事態の中での総選挙で、総理自身が今も確認されました、県外・国外移設が望ましいと民主党は公約をされて、その結果、沖縄でも議席を伸ばされ、小選挙区でも新基地建設反対が占めたということです。そして民主党中心の政権ができたということの意味は極めて重いと思うのですが、総理、そのことについてどう思っていらっしゃるでしょうか。
首相 言うまでもありません。選挙で申し上げた言葉というのは重いと。その認識は有しております。笠井委員からお話がありましたように普天間の基地、このヘリをはじめとして大変に騒音も含めて、危険な状況も変わっておりません。一刻も早く普天間の移設を図らなければならないという認識でございまして、そのためにどの移設先があるかということに関して、私どもとしてまずは県外・国外ということを申し上げました。
同時に、ご案内の通り、日米の合意というものも旧政権の中においてされている。しかも13年間もこのような状況になっているという状況を考えたときに、時間的にもそれほど多く残されていないという認識もございます。
この中でわれわれとして選択肢というものをさまざま考えていきながら、沖縄の県民の皆様方の思いを一番重く受け止めさせていただいて答えを見いだしてまいりたい。そのように考えております。
笠井 重要閣僚から公約を覆す発言が相次いでいる。総理が容認するのは無責任ではないか
首相 (公約の)範囲の中だと理解
岡田外相 「公約」と選挙中の発言とはイコールではない
笠井 有権者は何を頼りに判断するのか
笠井 総理がまさに言われたように、選挙で言われたことは重いんですよ。
県民の思いは、11月8日に県民大会がありますけれども、即時閉鎖なんです。そういう問題だということを申し上げておきたいと思いますが、「県外・国外が望ましい」と今も総理が言われた。そういう形で選挙をやって、国民にたいして県民にたいして支持を訴えながら公約してきた。
ところが、この間、ゲーツ米国防長官が来日して辺野古への新基地建設をこわもてな態度で求めて以来、重要閣僚から公約を覆す、そういう発言が相次いでいるわけであります。
岡田外務大臣はそれまでの態度を翻されたと私は思いますが、「県外は事実上選択肢として考えられない」と言われて、米軍嘉手納基地への統合案を検討していると発言されました。
これは総理に伺いたいのですが、この外務大臣の発言は、総理が選挙中に「県外・国外が望ましい」と言われた、その範囲内なのか、それに即しているのか、私は明らかに違うと思うのですが、総理の認識を伺いたいと思います。総理お願いします。総理です。
岡田克也外相 民主党のマニフェストは日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨むというものであります。これは連立にあたっての3党間での政策合意も同じものであります。
1年前の沖縄ビジョンでは、たしかに県外・国外という表現がありました。
そういう中であえて、この表現をとったということは、そこに一定の意味も込められている。そういう表現になっているということをご理解いただきたいと思います。
首相 先ほど岡田大臣が申し上げたように、この普天間の移設を含めて日米の問題に関して見直しの方向で頑張りますということをですね、選挙の時にメッセージとしてお伝え申し上げたところであります。私はその見直しの中の、議論をしているさなかの発言だと、そのように考えております。
笠井 選挙中の党首討論が重いということも総理が言われたんです。選挙中にそう訴えておいて、選挙終わって政権についたらいやそれはという話はとてもおかしいと思いますね。岡田大臣が言われたことは、(首相が)言われてきたことの範囲内というご認識なんですか。この点、端的に伺いたいんですが。
首相 今、見直している最中でありますから、見直しの中の発言のひとつだということで、当然範囲の中だと理解をしています。
笠井 明らかに公約の範囲の話じゃないですよね。聞いてておかしいです。
北沢防衛大臣のほうは辺野古への基地建設において、(米軍再編の)日米合意は基地機能の一部をグアムや岩国に移すから公約違反ではないというふうに言われました。これは岡田大臣も論理的に苦しいといわれるほどの、私はあえて詭弁(きべん)だと申し上げたい。総理、県民・国民は、民主党が移転先というのは「県外・国外が望ましい」と言われてきた、総理もそうやって言われてきた、だから、沖縄の外に出すと受けとめているのに、こんな議論、辺野古はいいんだという議論が成り立つと思いますか。民主党の公約に照らして、こちらのほうは認められる範囲内だというふうに総理はお考えでしょうか。総理に伺いたいと思います。総理にお願いします
北沢俊美防衛相 お答えいたします。私の発言がですね、勝手に解釈されて私がいかにも辺野古に移すことに賛成だというようなことを断定的に言われることはきわめて遺憾であります。
笠井 私は10月27日の(北沢)大臣会見録をここに持っております。“まずグアムへの移転、それから岩国の基地へ移転するということで合意案には県外それから国外移転というのがまず第一にあって、その後の処理として辺野古沖が残った”と。新政権として検証した結果として、三段構えの合意案であったということを認識するという話になっているわけですから、これは明らかに、民主党が選挙の前に言ってきた選挙で公約してきたことと違うわけであります。
総理は本会議で「岡田外務大臣と北沢防衛大臣のもとで真剣な検証を行っていただいている」と答弁されましたけれども、自らの公約、そして選挙の党首討論でも言われた、それと違うことを言い立てることが真剣な検討なのか。この問題を直接担当する重要閣僚が、自らの党が選挙で訴えてきたこと公約してきたこと、それと違うことを公に言って総理が構わないんだと。検討中の過程だということで容認するというのは、これは私、無責任じゃないかなということを思うんです。総理に伺いますが、これおかしいと思いませんか、ご自分でおっしゃってて。
総理に伺います。総理の認識を聞いてるんですよ。
外相 まず笠井委員、言葉を正確に使うべきだと私は思うんです。つまり公約だという言葉の中でいろんな意味をこめて笠井委員は語っておられるんですよ。公約と選挙中の発言とはイコールではありません。公約というのはマニフェストです(騒然)。
総理も望ましいという言われ方はしました。私たちもそれは県外・国外移転ができればそれは望ましいという思いが強くあります。しかしあえてマニフェストの中では普天間という言葉も書きませんでしたし、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨むという表現にとどめたわけですから、そこは違う。
われわれの公約というのはこのマニフェストですから。私たちの思いの話と公約、マニフェストの話を、それをあえて混同して質問されるのは私はおかしいと思います。
笠井 国民の皆さんが聞いたらおかしいですよ。公約というのはマニフェストのことであって選挙中に党首や代表が党首討論で発言したことは関係ないんだと(騒然)。整理しますよ。いいですか。公約は厳密にはマニフェストなんだと、選挙中に言った事は公約じゃないんだということを言ったわけですよ。
では有権者は何を頼りにして政党と候補者を選ぶんですか。マニフェスト全部読まなきゃわかんないんですか。テレビの党首討論はみんな見てるんです。どの党に入れようか、沖縄県民の願いを託せるのはどの党かと一生懸命考えるわけですよね。そのときに民主党の代表が、県外・国外が望ましいとはっきり言われたわけですから、そういうかたちで動くのが当たり前で、しかも鳩山代表は選挙前の7月に沖縄に行かれて演説会で、かりゆし姿で(同様のことを)言われました。そういう県民の思いをしっかり受けとめて、積極的にその思いに立って行動するとまで言われたわけですね。
今政府の中で出ている案というのは県内でどうしようかという話ですよね。検討する、嘉手納で統合できるかどうかと。三段構えで辺野古にもという話もされている。沖縄の思いに立って県外・国外、積極的に行動するということで誰がどうやって内閣の中で行動されてるんですか。
首相 私は笠井委員がお話しされたように、今でも、県外・国外が望ましいと思ってますよ。それは沖縄の県民のほとんどがそのように思っている、その思いを私は大事にしてそのために行動したい。当たり前の政治家の言葉だと思います。ただ一方で、日米の合意というものが旧政権の中でできているということも事実だと。その中で時間的な状況を考えたときに選択肢というものをいくつか持たなければならない、その選択肢を今、一つ一つそれぞれの大臣の中で検証していただいている最中であります。もし笠井委員がこういう所がある、それがいいじゃないかみたいな話があればまたいろいろとご指導いただければと思いますが、今の私どもの選択肢の中で議論を進めさせてもらっている、そういう状況であります。
笠井 嘉手納統合案は地元も「断じて許さない」。辺野古新基地建設は負担軽減どころか基地の拡大強化そのもの
外相 あまり時間をかけてはいけない
笠井 「いろんな選択肢の検証」いうが、県内たらいまわしの範囲。旧政権と同じ理屈
笠井 いろんな選択肢がある、積極的な思いに立って、行動したいといわれているんだけれども、県民からみても、国民から見ても、その思いに立って、何をどう検討しているのか、何も見えないんですよ。そうですよね。私たちは、これはもう(普天間基地の)即時閉鎖、そして撤去と。国外に行けと、これがいいと思いますよ。でも、そういうことも含めて、検討しているのか全然見えないわけですよ。日米合意が大事だといいましたが、日米合意というのは旧政権でやった。それを根本から見直して、県民、国民の立場に立ってどうするかということで、旧政権のやり方を見直すといわれたわけです。まさにそういうことが問われている、政治主導で。戦後長い間、アメリカ追随外交といわれてきて、そして、アメリカの方は脅せば、いいなりになる国民だと思っているという点では、県民、国民の立場で解決しようとしたら、内閣がそれこそ一体になって、国民の思いに立って、県民の思いに立って、その最善の努力を先頭からやるというのは当然だと思うんですよ。それをやらないから、見えてこないから、結局は対米追随ではないかと。ゲーツ氏が来たら、それを機会にガラッと変わったとみんな思っているんです。沖縄でも思っている。
では聞きますけれども、岡田大臣。大臣が検証しているという嘉手納基地への統合案について、地元の嘉手納町議会は先月28日に、統合案に反対する意見書を全会一致で採択をしております。意見書にはこのようにあります。「岡田外相発言は、町域の83%を嘉手納基地として接収され、日夜激しい米軍機の爆音下で生活環境が破壊され、基地の機能強化が進み、基地負担の大きい嘉手納町民に新たな犠牲を強いるものであり、絶対容認できるものではない」「嘉手納基地の実態は、米軍再編下で」「町民の基地被害が激増し、負担軽減どころか我慢の限界をはるかにこえる『戦場の町』となっている」「今この案を持ち出すことは、町民、県民の心をふみにじる非人道的な行為であり、断じて許せるものではない。発言の撤回と県民意思をふまえた対米交渉を強く求める」。北谷の町議会も11月2日に決議をあげていますが、同じく嘉手納基地統合案の発言を撤回すること、普天間飛行場を無条件で撤去すること。まさにこれが県民の思いだと思います。大臣は、この地元の厳しい声、怒りをどう受け止めていらっしゃいますか。
外相 嘉手納の基地の地元の市および町のみなさまが、日ごろ大変、騒音など厳しい状況にあるということは十分承知をしております。地元のみなさんがそういう決議をされたということは重く受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、先ほど笠井委員は、即撤去、廃止といわれました。これはやはり日米安保条約そのものを認めておられない共産党さんと、それから日米安保条約というものは、これは日本の、あるいは極東の平和と安定に必要であるという前提で考えるわが党とのあいだの根本的な違いであって、これは基本的な見解の相違である、そういうふうに思います。
笠井 重く受け止めなきゃいけないと思うんですが、いま共産党との見解の相違といわれました。私、いま安保の議論をしているんじゃないんです。
しかし、岡田大臣、そこまでいわれるので、私は2004年9月4日に、沖縄の新聞に出た岡田代表(当時)のインタビューを紹介したいと思います。「民主党が政権をとった場合、普天間飛行場の代替施設なき返還を求めている。実現は可能か」と問われまして、岡田代表はこう答えています。「実現可能かと、自問自答する前に、そのことをしっかりと主張すべき。主張する前に米国は認めないとか、という発想自体が間違っている。ここは日本の領土であり、沖縄の土地だ」「普天間を日本の外に出すことは十分説得力をもって米国と議論できる」と。安保の立場はちがいますよ。大臣が「笠井とはちがう」といわれましたけれど、04年当時、代表として岡田さん自身が、そういう立場で安保のちがいがあっても、これはできるんだと、いわれたわけですよね。どうなんですか。
外相 いまの笠井委員のお話は、04年当時の、私が代表の当時のインタビューであります。つまり4年前の状況と、そして日米間の再編論議が煮詰まってきて、そして今日にいたっている状況は、かなり状況においてちがう、ということを申し上げたいと思います。
笠井 04年と現在と状況が違うとおっしゃいましたが、基本的には違わないんです。この問題の性格というのは、米軍再編があったからこうなったんじゃなくて、1996年のSACO合意がありました。そのときに、普天間を撤去すると、そのときの条件として移設をセットにした。私も当時、参議院にいて議論をやったんです。条件つけて移設する、たらいまわしするというところから始まってきたわけです。
だから、04年といまと状況は違うといわれたけれど、根本的にはこの問題の性格は変わっていないんです。その問題、しっかりいっておきたい。岡田大臣自身がですね、05年の代表当時に記者会見でですね、「基地のプレゼンスを固定化するような県内移転というのは、選択肢ではない。県外への移転をめざして、もちろん民主党としては国外移転を政策として掲げているが、しっかり対応していきたい」。いいこといっているじゃないですか。それなのに、これ以上、地元の反対を押し切って、嘉手納の統合案を検証していくというのは、信じられない話です。
もう一つ、私申し上げたいんですが、北沢大臣が容認した、辺野古への新基地建設の問題について聞きますが、この基地は、単なる普天間からの移設ではなく、機能を拡大・強化した最新鋭の基地を新たにつくろうというものであります。4月に発表された環境アセスの準備書というのは、もう偽りだらけだと、ジュゴン、それから海浜の環境、騒音など問題だらけだと、当時、外務委員会で私も民主党の議員のみなさんとも追及した問題です。そして、県知事も再調査を求めている。
それだけじゃなくて、爆音をまきちらして、事故も多発しているオスプレイという垂直離着陸機、これがヘリに替わって、新たにつくる新基地の主力機になるということまで明らかになっています。
新基地とパッケージになっているグアム移転についても、この間の国会論戦の中で明らかになりました。沖縄の海兵隊8000人減らすというのが、実際には減るのは2000人程度しかいないじゃないか、ということが疑問になってきた。そして、いつでも新たに海兵隊が沖縄にやってこれるものだということも、旧政権の時代に民主党も追及されて、私もやりました。まさに、あらゆる意味で沖縄の負担軽減どころか、基地拡大・強化そのものが、この新基地建設案だと思います。
総理に伺いますが、まさかこんなことを選択肢の中で、沖縄、県民に押し付けるということはないですよね。いかがですか。
外相 まず、私が代表を務めたのは、ご案内のように05年の9月まで。2プラス2の共同文書において、新たな案、つまり(辺野古での)L字型基地建設が決まったのが05年の10月、V字型が決まったのが06年の4月、つまり、私が04年に発言したときは具体案は決まっていない、そういう状況にあったということを申し上げておきたいと思います。
それから、先ほど申し上げた嘉手納移転なども、かなり乱暴な話であることは、私はわかっております。しかし、普天間の現状を見れば、あまり時間をかけることは、これはやってはいけないことだと。一定の時間の中で答えを出さなきゃいけない。嘉手納統合というのは既存の滑走路を使う、そういうことで早まるメリットがあります。
笠井 具体案がでたら、それはいっさい変えられないっていう話じゃないですよね。V字案とかっていう話がでる以前と後は違うっていわれたんだけども、ほかの問題でいえば、具体的には時間がないからいいませんけども、これまでやってきた具体案についてだって、民主党は止めたりやめたりっていうことはあるわけですよね。これだけ例外っていうことはないですよね。そういう問題だと思います。
しかも、時間がないということをいわれたんですが、この理屈もじつは旧政権がいわれたことなんです。普天間のこの被害がたいへんだから、一刻も早くということで、ゼロからのスタートをやったらだめだから結局それをのんでくれといってやってきたのが、この間の経過だったんですよ。結局は時間がないから、押し付けることになっちゃいけないということをいっているのに、同じ形で、時間がないから、そういう中でっていう話がでてくるというのは、私はほんとにおかしなことだと思います。
こういうやり方、普天間を撤去するということと、どこかにたらいまわしして移設することをセットにするやり方が、まさにこの13年間、結局は破綻(はたん)してきた。どの世論調査を見たって、県民の圧倒的多数がそういうことによる新基地建設は絶対だめだといっているわけでありまして、なによりも新基地建設で13年間たってますが、杭(くい)一本打たせてないと、あのジュゴンの海に。このことが示しているわけであります。
総理はいろんな選択肢ということを繰り返していわれております。では、何を検証しているかといえば、結局はたらいまわしの範囲の中でどうするかという話になっている。自公政権、旧来政権がやってきたことをほんとに見直して、根本から変えようということが見えてこないということだと思います。辺野古案にしても、嘉手納の統合案にしても、県内のたらいまわしの案しかでてこない。旧来の政権とどこが違うのか、ということになってしまうと私は思います。
普天間基地はただちに閉鎖をして、そして撤去、国外移設と、そういう選択肢しかないと思いますが、そういう選択肢について真剣に検討するとか、あるいは閣僚の中でちゃんと作業させるとか、そういうことはなさっていないのですか。
首相 普天間をすぐに閉じる、本来ならばそうしたいですよね。ただ、ご案内のとおり日米安保、そして抑止力の話も先ほどありました。そのことを考えたときに、代替地が見つからないかぎり閉じておしまい、海外移転という話にはならない、そのことも理解を願いたいし、その場合に、海外という話の場合にどこだということもしっかりと検討しなければならない。嘉手納ひとつでもちょっと名前をだしただけでも、あのように大きな反対運動がわき起こることになれば、当然のことながら慎重なうえにも慎重を期さなきゃならない。
笠井 最新の調査でも県民の意思は新基地建設反対で明確
外相 日米安保体制をしっかり持続していくため
笠井 日米同盟の話をしきりにされて、抑止力といわれましたけど、だいたい沖縄の海兵隊というのは抑止力じゃないと思うんですよ。現在なお、イラク、アフガンへの派兵を繰り返して、もうもっぱら他国への出撃を任務とする部隊で、日本を守る部隊ではありません。普天間の移設というのは、海兵隊の出撃部隊としての役割をさらに発揮できるように基地をつくりかえようというアメリカの戦略があると、これはそういう問題であります。しかも、結局は国民あるいは県民の意思に反することばっかり検討される形になっている。私、この問題で先ほどちょっと総理もふれられましたが、大きな焦点となっているこの問題の中で、最新の世論調査が発表されました。
琉球新報と毎日新聞が合同で10月31日と11月1日の両日、沖縄県民を対象に実施したものであります。県外か国外への移設をめざしてアメリカと交渉すべきだというのが69・7%。これにたいして県内移設というのはあわせて24・7%。嘉手納基地統合案にいたっては71・8%が反対であります。賛成は14・8でございます。そして辺野古沿岸建設案については、反対で67%。賛成が19・6%と、どれをみても県民の意思は明確ですよね。総理、嘉手納は少しでも軽減されるかもしれないから可能性といわれるけれども、県民はこういう意思を示しているということであります。総理は県民の意思を尊重する、そうしたいと繰り返されますが、県民の多数の意思は、県民の意思は県内移設ではありません。それはそういうことでよろしいですね。総理の認識を伺っております。総理に聞いているんです。
外相 沖縄の世論調査の結果は重く受け止めなければならないと思います。ただこの問題は、沖縄県民のみなさんの気持ちを尊重しながら、しかし、日米安保体制という日本の国全体にかかわる話でもあります。沖縄県民のみなさんのそういうお気持ちをしっかりと踏まえながら、しかし日米安保体制をしっかりと持続していくためにいったい何が必要かという視点でも考えていかなければならない問題だと思います。
まあわれわれも県民のみなさんのその考えを十分踏まえてできればもっと白紙から議論したいという思いはあります。しかし現実にはもう13年も前から議論されてきたことであって、われわれが政権をとったときにはもう9合目まで来ている話なんですね。
首相 私もまさに、沖縄県民の思いは世論調査の通りだと思います。そのことを、やはり重く受け止めて解決していかなければならないと理解します。同時に、こういう思いがありながら、仲井真知事を誕生させて今日まで歩んできているという沖縄県の苦しい思いというのも理解しなければならない。そういうなかで、いかにして沖縄県民のみなさんに最終的に理解をしていただけるような案をつくりだしていくかということがすべてだと思っていますし、だからこそ沖縄県民の思いをできる限り、しっかりとしたキャッチボールを重ねていく中で、最終的な結論をだしてまいりたい、そのように思っています。
笠井 外相は「県外移設へ政治生命をかけて交渉」といった(05年)。米側と正面からの交渉こそ必要
外相 状況が変わった
笠井 外交交渉に本腰入れよ、基地撤去は世界にいくつもある
笠井 県民の意思を尊重しながら、一方で安保体制があると、そしてそのもとで基地強化と。尊重しながらといいながら、結局沖縄に基地を押し付けてきたというのがこれまでの戦後の歴史なんですよ。なくそうというのは、県民の考えなんですよ。撤去しようというのは。それをあれこれいって、理解していただきたいというのは、(基地たらいまわしを)のんでくれという話にしか県民にしたら聞こえてこないと思いますよ。そんなことでは、本当に納得しないと思うんです。
県民の意思を尊重すると。それだったら、そういう立場にたって、じゃ、どっちを優先するのか、ということを考える必要があると思うんです。県民の安全、安心を本当にやるのか、それとも日米合意をいったんむすんだから、やめられないというのか、ということが問われている。
せっかく新政権になったから、変わってほしいと国民は思っている。9合目まで来たといわれるなら、なぜ直近の総選挙のときに、総理が先頭になって、「県外、国外が望ましい」ということを選挙のなかで、党首討論で重ねていわれたんですか。そのときに、もう9合目まできたから民主党も、県民の願いを尊重しながら、しかし、これは納得、理解いただいて、こういう可能性もあるよ、ということをなぜいわないのかということになります。
私は、県民の思いを正面から受け止めて、旧来の対米追随外交を転換して、そして、撤去・国外移設を正面から米国に提起して、本腰をいれた交渉をやるべきだと思います。
岡田大臣が先ほどから繰り返し、総理のかわりに立たれているので、では、岡田大臣に一言いいましょう。
05年の総選挙のときも民主党代表として、日本外国特派員協会で、8月25日に岡田代表は講演されました。
「私が総理になれば、普天間基地の県外・国外への移設実現をめざし、政治生命をかけて交渉したい」(どよめき)
ここまでいわれましたよね。民主党が政権についたのだから、それこそ、5年間のタイムスパンとかいわないで、9合目まで来ているといわないで、政治生命かけて公約してきた立場から、県民の意思を尊重する立場から、米側と正面から真剣に交渉する、これこそ必要なんじゃないでしょうか。鳩山さんいかがですか、総理どうですか。
外相 まず、先ほどいいましたように、05年の状況と現在では、かなり状況が変わっています。ただし、沖縄の負担を軽くしたいという私の思いは変わっていません。したがって、先般、ゲーツ長官がきたときも含めて、私は真剣勝負で議論をさせていただいています。
そしてもう一点。いま、基地を廃止をするということを共産党さんのように前提としたいのであれば、それはやはり、じゃあ、いまの普天間を放置していいかどうかという問題にかかわるんだということ、そのことを全国のみなさんにはわかっていただきたいと思います。普天間を、さらに長期間、危険な状態を放置するようなそういう答えにしてはいけないと、いうのが私は議論の前提だと思います。
笠井 そんなのは当たり前です。最初から私はいっているんです。放置しないためにも、真剣にアメリカと交渉して、そして県民の立場を伝えて、国民の立場からこうなんだと交渉して、撤去・国外移設とやるのが政治生命かけてやることなんでしょうと。
対等な日米関係、対米従属ではないとしきりにいわれます。そうであるなら、県民、国民の立場にたって正面から米政府にいうべきだと思うんですよ。それができないというのは、結局、旧政権とかわらないじゃないか、ということになると思います。
そういう点では、結局、アメリカの顔色をうかがって、腰の据わらない外交じゃだめだ。これまでの日米関係から、対等平等というなら、本当にそういう立場にたたなくちゃいけないし、だいたい世界を見ましても、国民の意思を背景に、外交交渉に本腰を入れて、米軍基地を撤去させた事例が、世界にはいくつもあります。それで国と国の関係が悪くなったところはありません。
政府が毅然(きぜん)としてのぞんで、国民はこうなんだといえば、アメリカだってちゃんとわかるんです。
フィリピンでは1991年9月に、米軍基地協定が終了した後は、基地をおかないという87年憲法に基づいて、米軍基地撤去をアメリカ側に提案しました。
アメリカ政府は、激怒してどう喝しましたが、議会の上院が政府のもちだした基地容認の新協定を拒否して、1年半の交渉で、1992年に完全撤退に追い込みました。
エクアドルだって、この9月に基地を撤去させたんですよね。まさに、その気になればできるということです。
11月8日には沖縄で県民大会が開かれます。昨日、実行委員会幹事会が開かれて、鳩山政権に米側の圧力に屈することなく、新基地建設と県内移設に反対という県民の声を堂々と主張すること、普天間基地の即時閉鎖・返還、日米地位協定の抜本的改善を求めるなど、大会スローガン、それから決議案を確認しました。
私はそれこそ県民の断固たる意思だと思います。この思いをしっかり受け止めて対米交渉を行うことを重ねて強く求めたいと思います。
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雇用・生活支援 緊急措置と抜本策を
笠井 失業給付が切れないよう「全国延長給付」規定を直ちに発動せよ
長妻厚労相 限られた財源の中発動は慎重に判断
笠井 一番大変なのは失業者だ。先進国でも最悪の基準を緩和し給付延長を
笠井 さて、次に雇用問題に入ります。まず総理、雇用・中小企業をめぐる情勢は極めて深刻であります。
旧来の自公政権のもとで、大企業の非道な派遣切り、非正規切り、下請け切りによって、職とともに住居も奪われる事態を事実上、放置をして、昨年末、首都のど真ん中に、年越し派遣村を出現させました。
もう年末まで2カ月をきりました。私が10月末に調査した東京の新宿、名古屋の中村区役所では、すでに派遣村状態が再びはじまっております。
「新宿にいけばなんとかなる」ということで、全国から深夜バスでやってきて、突然解雇されたという若者も続々、街頭労働相談に来ております。社会福祉事務所には、生活保護とその日の宿泊場所を求めてたくさんの人が順番待ちをしていました。
新宿の西口ハローワークには、連日4000人が殺到しているといわれています。
失業認定、教育訓練給付の手続き、パソコンに向かう人たち。本当に真剣であるけれども、あきらめ半分の表情でありました。名古屋でも、この11月に失業給付が切れるという人に何人も出会いました。
年末にむけて失業者をホームレスにしない、寒空に放り出すことは絶対にしない。政治の責任は重大だと思います。総理はすでにこういう事態になっているということをご存じですよね。いかがですか。
首相 数字のうえでは、失業率は若干改善してまいりましたが、これが本格的なものになるとはとても思えない状況であると理解しています。その意味では、笠井委員がお話されたように、雇用情勢、まったく楽観は許されない。その思いであります。
私どもは、二度とあのような派遣村のような状況を年末年始につくらせてはならない、その思いでございます。そのための手だてを講じなければならないということで、緊急雇用対策というものを本部もつくって、打ち出したわけでございます。大変生活が苦しみになっておられる方々への対策とか、あるいは、新卒者の支援、これはかなり、求人と求職のなかでミスマッチがあるようですから、そのミスマッチをいち早く直していかなければならない。こういった問題に加えて雇用創出をはかってまいりたい。
笠井 雇用創出は本当に大事な問題だと思います。同時に、緊急の対策ということも本当に欠かせません。私、今度の政府の緊急雇用対策で、そういう人たちを必ず救えるのか、という問題というのは真剣に問わなければいけないし、対策をうたなければいけない問題だと思います。年末まで2カ月を切った今、緊急に取り組むべき課題、私は三つあると思っております。
一つは、失業給付が仕事の見つからないままに切れてしまわないようにすること。二つ目は、住まいを失った人に国があらゆる手だてをうって住居を提供すると。そして三つは失業給付を受けていない人や切れてしまった人の生活を緊急に支えるということ。こういう点をですね、大いに知恵を出し合ってやらなければいけない問題だと思います。
そこでいくつか端的に聞きたいんですが、まず失業給付が切れないようにすることでありますが、総理は10月29日の本会議で、わが党の志位委員長の質問に、「平成21年の改正雇用保険法により、とくに再就職が困難な方に対し、60日間延長。90+60日間=150日。これによって4〜8月間に24万人に延長した。この延長給付を活用していく」と答弁されました。総理は前政権が対策を打ったことについて言われたわけなんですけれども、それで十分かということが問われてくると思うんです。それでは私、足りないと思うんです。特に、今春以降、「派遣切り」にあった人たちがこうやって1日過ぎるたびに現行の最短90日間、もしくはプラス60日間の失業給付では再就職を果たせずに切れていくのが現実であります。
現行の雇用保険法27条には、さらに失業給付を全国的に延長できるという項目があります。「全国延長給付」という規定でありますけれども、その基準、延長される日数は、法律ではなくて、政府が決める政令で定めております。これは法律を変えなくても、政府の決断ですぐできるのではないか。ただちに発動すべきだと思うのですけれども、この点はいかがでしょうか。
長妻昭厚生労働相 今の失業給付の問題でございますけれども、総理も申し上げましたように、60日分延長する個別延長給付を平成21年3月から開始をいたしまして、人数が笠井議員がご指摘されたよりも若干増えまして、本年4月から9月までで約29万人の方が、今その制度で延長を行っているところでございます。そしてご指摘の全国延長給付という制度もございますけれども、これについては連続する4カ月の各月における基本受給率が4%を超えるというのがひとつの発動条件とされておりまして、今現在は2・74%ということでもあり、限られた財源のなかでその発動にあたっては慎重な判断が必要であると考えております。
その一方で、雇用保険が切れた方に対して、無料で講座を受けていただく、職業訓練を受けていただく、かつ職業訓練を受けていただければ世帯の主たる生計者に関しては1カ月10万円、あるいは1カ月12万円の生活費をお支払いするという、こういう制度も今、取り組んでおります。
笠井 最後に言われた給付金ですね。職業訓練の話は、これは制度はあるんですが、なかなか使いにくい。要件がありまして、希望者が殺到してもなかなかという問題もあるわけです。
私は、それ以前に、全国的に失業給付を延長するということでいえば、これは条件、要件、基準をいわれましたが、百も承知なんです。35年も前にできた基準で、ハードルが高いんです。本当に今、(雇用情勢が)劇的に良くなるような状況じゃなくって、切れちゃうわけですから、まず切れないようにつなげるということが大事です。その点でいいますと、日本の失業保険というのは世界的にみても非常に遅れている。保険を受けていない失業者の比率というのは、先進国でみましても群を抜いているんです。77%です。アメリカ57、カナダで57、イギリス40、フランス18、ドイツが13%ということでありまして、まさに世界のなかでも失業給付期間が短いために、こういう事態があり、緊急延長がただちに必要です。大変だから、財政、財源のことがあるからといわれるんですけれども、一番大変なのは失業者であります。それなのに旧来の対策で十分だというのかという問題がある。雇用保険特別会計が、今、4兆8000億円ぐらい残っていると思いますが、積立金を活用してまずやるべきです。この点でも、これまでの延長ではない措置をぜひ取っていただきたいということを申し上げたいと思います。
次に住宅の問題でありますが、今、住居を失った離職者に対して、雇用促進住宅の活用が進められておりますが、他方で雇用促進住宅を全廃していくという2007年の閣議決定がございます。活用するといいながら、全廃するのでは、明らかに矛盾しております。
約4万戸の活用可能な雇用促進住宅を積極的に活用すべきだと思うんですが、そのために全廃の閣議決定は撤回すべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
厚労相 ご指摘のございました雇用促進住宅、これは雇用保険料をつかって、1兆円近くのお金を使って、建てられたものでございます。それについて、非常に空き室が多い等々、あるいは立地条件等々、あるいは本来は入ってはいけない公務員が大量に入ってしまったなどなどの問題等もあり、これを閣議決定としては、平成33年度までに廃止・譲渡するということでございまして、これは中に入っている方を丁寧に退去いただくということで、かなり時間を設けております。
今はただ緊急事態でございますので、緊急一時入居という制度をはじめまして、雇用促進住宅には、連帯保証人、敷金も要らないという前提で即時に入居していただくと、こういうこともこの廃止までの間、活用をさせていただくということで取り組んでいるところでございます。
笠井 非常に深刻な状況なんで、きちんとした姿勢を示す上でも、全廃方針の閣議決定をまず撤回するべきだ。本当に大事だと思うんですよ。安心感が大事ですから。しかも、これは前政権のときにさえ、舛添前厚生労働大臣は、閣議決定の見直しも含めて検討すると言われていたんですから、せっかく政権が代わったんでしょう、やはり撤回に向けてどうするかだと思うのですが、この閣議決定を見直しすると、撤回も含めて、それぐらいは言っていただきたいと思うんですが、どうですか。
厚労相 雇用促進住宅につきましては、ある意味では天下り団体の利権的な要素もあり、どんどんどんどん必要性の低い部分まで拡大をしてしまったという案件でございまして、まあ維持費も大変かかっているところでございます。平成33年度までの譲渡・廃止は決定は変えませんけれども、ただ今、緊急事態であります。まだ10年ありますので、その間、そういう方々がスムーズにここに入っていただいて、おうちがない方に対する支援、そしてこういう実際の住居だけでなくて、住宅手当、あるいはつなぎ融資こういうこともハローワークをワンストップサービスとして活用してやっていきたい。
笠井 あの雇用促進住宅はなんか目的が天下りのために、みたいな話になると違う話なんですね、もともと。だからこれを何でもかんでもそういう目でみないで、きちんとこれはあるものを活用する、それをなくそうという方向については見直す。前政権でさえやったんですよ。それぐらいやっていただきたい。そして失業給付が切れてしまった、あるいはもともと給付をうけとっていないため、生活の糧が奪われた状態に置かれている、そういう人たちに対しても対策をとっていただきたい。
私、今いくつか申し上げましたが、緊急措置というのはどれも法改正は必要ありません。補正予算の成立を待たずに、先行して実施できるものであります。政府のいわば決断次第でできる。再び派遣村をつくらなくてすむようにと、まさにそういう立場に立つなら、あらゆる手だてを使って知恵だそうじゃないか。そして、いままでのこともさらに抜本的に充実するという立場に立っていただきたいと思います。
笠井 使い捨てた人を増産のため再募集、半年後にはまた放り出すとは。正社員こそ増やすべきだ
首相 経済界、企業に申し入れたい
笠井 緊急対策とともに、大企業によるこれ以上の「派遣切り」「非正規切り」などをやめさせて、新たな大量の失業者を生まないことも非常に大事であります。ところがこの間、自動車、電機などの分野で、期間工や派遣の非正規雇用復活の動きが広がっています。自動車関連では、トヨタが1600人、三菱自工が650人、日産が300人、日野が900人等々、いずれも期間工募集ということであります。ところが、いずれも雇用契約期間は3カ月とか、6カ月ということで、再び「非正規切り」を行って、寮からも追い出すと、最初から使い捨て、また失業者を生むということを予定している。総理は本会議で、「企業に対しても、安易な雇用など行われないように、労働関係法令順守の指導をこれから徹底していく」と答弁されました。どう徹底されますか。
厚労相 やはり正社員でありたいという方々が多いわけでありまして、そういう雇い方をもっと増やしていくということは、これはいうまでもなく必要なことであります。政府としては、初めて相対的貧困率15・7%というのを発表させていただきました。やはり行き過ぎた労働規制緩和、これが背景にあるというのは私も同感でございます。そういう意味で、派遣に対する見直しもいま審議会で議論をして、登録型派遣、あるいは製造業の派遣は原則禁止ということの諮問をしているところでございます。政府としては、年長フリーターの方々が速やかに正社員となって、就職できるような対策も含めていま取っております。
笠井 さらに実態を申し上げたうえで総理に伺いたいと思うのですが、現場でいま大変なことが起こっていまして、トヨタ自動車の場合、昨年、2年11カ月働けるといって募集しながら、契約更新せずに次々雇い止めして、社会的批判を浴びました。昨年1月に9000人もいた期間工が、今年9月末には1200人に激減いたしました。ところがエコカーの生産増を理由にして、ついこの間、首を切った6000人を対象にして、こういうはがきを送ってですね、そして募集を行っております。いったん切った人たちに対して「この度、期間従業員の募集を実施することになりました。つきましては、貴殿の在職中のご経験・技量を弊社でぜひ活かして頂きたく、ご検討願えれば幸いです」ということで書いてありまして、いっせいにはがきが送られてきました。そして応募者に雇用条件を示した文書を送るとともに、指定日に出社すれば面接不要だということで、愛知県の豊田市内にある社員寮に入って研修を受けるように指示をした。ところが、雇用条件を書いた文書には、肝心の契約期間や更新の有無が記載されておらず、寮に入って研修を受けて初めて契約期間が知らされるという仕組みで、そういう人がたくさんいたんです。全員が400%増産のエコカー・プリウスを製造している堤工場配置です。来年4月以降、エコカー減税が切れたら、いつでも「期間工切り」ができるようになっている。総理、いらなくなったら放り出して、生産が増えたら経験・技能をいかしてほしいのでぜひといい、それも、せいぜい半年先しか見えない。来年3月にはまた放り出す。こんなご都合主義、こんな理不尽をいつまでも繰り返させていいんでしょうか。これ、総理の率直な感想、答弁を伺いたいと思います。
首相 特定の企業に対することを申し上げることは控えたいと思いますが、しかし、一般的にそのような現実があろうかと思います。やはり、景気が少しでもよくなると期間工を雇って、またおかしくなったらすぐに切る。そういう目的のために雇われてしまう。いくらたっても正社員になれない。これは、私もやはり悲劇だと思います。こういうことが起こらないように、ある意味では平準化的に生産を行うようなことも必要かと思っておりますし、企業やあるいは労働組合に対して、できるかぎり正社員的な状況のなかで、さまざまな待遇というものも改善しながら、雇ってもらえるようなことを望みたい。むしろ、そのようなことを企業、あるいは経済界、さらには労働組合などにこういうことを申し入れたいと思います。
笠井 やむにやまれず応募した九州の20代の男性は、「肝心な契約期間も示さず、『これで来い』なんてバカにしている」「4月末に雇い止めされて、雇用保険も9月で切れた。あれだけ多くの首を切りながら反省もない」と憤っております。6カ月契約を結んだ50代の男性も、「半年後に更新されるかも分からない。地元に帰っても仕事はない。できるだけ長く働きたいのに」と、不安の声は当然だと思います。増産で人員が必要なら正社員こそ増やせ、雇った期間工は正社員にせよ、少なくとも希望者には期間を延長せよ、やむを得ず解雇されてしまった人には就職あっせんして寮から追い出すなという声を現場からあげています。当然だと思います。しかも、エコカー減税といいますが、もともと国民の税金であります。国民の血税で増産してもうけておきながら、その結果、また「非正規切り」を繰り返す。こんなことが許されるか。まさにそういう問題だと思います。そういう点では、直接企業に対しても申し入れをされるといった。フランスでもルノーがやったときに、サルコジ大統領も、そして雇用担当大臣も工場に乗り込んでいって、工場閉鎖を止めるとか対策を打った。そういうことをやったわけですが、まさに毅然とした姿勢で臨まれるということでよろしいですね、総理。
首相 そのように頑張りたいと思います。
笠井 国会としても、「非正規切り」、新しい期間工のむやみな解雇を許さず、雇用を守りぬくうえでも役割を果たす必要があると思います。今年1月の当委員会で、日本共産党を代表して私は、トヨタなど自動車大手、日本経団連などの代表を参考人として招致するよう求めて、2月に全会一致で、まず日本自動車工業会の代表を予算委員会に招いて、企業の社会的責任をただす機会となりました。当委員会に、今度はトヨタ、日産、三菱自工、日野など自動車関連各社、それから電機業界、自動車業界の代表を参考人として呼んでいただきたい。そして、雇用問題の集中審議をやっていただきたいと思いますが、委員長、理事会に諮っていただきたいと思います。
鹿野道彦委員長 後刻、理事会で協議いたします。
笠井 人間らしく働ける社会に有期雇用の規制をしっかり
厚労相 審議会で議論し、通常国会に出す
笠井 こうした対策を打っていくという点でも、同時に抜本的な対策が必要であります。まさに安心して働き続けられる社会、人間らしく働ける社会に向かうこと、合わせてそれを実施してこそ効果をあげることができる。そういう点では、一つは有期雇用の規制をしっかりとやる。同時に、先ほど長妻大臣も労政審といわれました。そこで労働者派遣法の改正問題が議論が始まっているというわけでありますが、民主、社民、国民新の3党案のなかには、製造業派遣の禁止から専門業務を除いたり、「見なし雇用」に要件をつけるなど、まだ抜け道が残っている。財界・大企業は「失業者が増える。企業が海外に出て行ってしまう」ということで、派遣法改正に抵抗しております。だいたい、6カ月後には失業にするというつもりの非正規雇用をしながら、非正規を規制したら失業が増えるというのは、まさに不当だと思うんですけど、総理、そういう考えについてはどう思われるでしょうか。
厚労相 労政審で、そこらへんの問題、労使とも真剣に議論して法案を通常国会に提出を目指していま議論をしておりますので、ぜひ、またご意見をたまわれればと思います。
笠井 とにかく企業が雇いやすくすれば雇用は増える、雇いやすくするにはいつでも解雇できるようにしなければ。そんな理屈で使い捨ての雇用を広げてきた。まさにその結果が今日の事態であります。使い捨て雇用こそ、技術の伝承も経験も、現場のモチベーションも失わせて、本当の競争力を根底から崩している。まさに10年間の教訓、私は、企業も経営者もしっかり学ぶべきだと思います。まして、政府が、財界・大企業の理不尽な抵抗に屈してはいけない。毅然とした態度でものを言って、文字通り派遣法の抜本改正をやる、これこそ必要だということを強く求めて質問を終わります。
全国延長給付 失業手当(=失業給付の基本手当)の全国的な延長制度です。失業の状況が全国的に著しく悪化し、一定の基準にいたった場合、発動することができます。発動の基準や、延長される日数は政令で定められており、法律を変えなくても、閣議決定で政令を改正すれば実施できます。