2009年11月19日(木)「しんぶん赤旗」
八ツ場上流 国交省ヒ素データ隠し
情報取りまとめ業務
天下り法人に集中
受注はすべて随意契約
群馬県の八ツ場(やんば)ダム建設予定地の吾妻川とその支流で、環境基準を超えるヒ素を長年にわたり検出しながら、国土交通省が公表していないことが明らかになっています。こうしたダム建設にかかわる情報の調査、取りまとめ業務は、国交省OBの天下り法人が随意契約で受注。隠ぺいの背景にある癒着構造が浮かび上がります。
国交省が長年ふせてきたのは同ダム予定地から約10キロ上流にある貝瀬地点などでの環境基準を超えるヒ素濃度データです。現在の環境基準となった1993年以降、毎年のように基準を上回る数値を検出していました。2006年の貝瀬地点の年平均データは基準の12倍、07年には約5倍でした。人体への影響は、下流の利根川で水道用水として取水するため、問題ないとしています。
今回、このヒ素検出の事実が明るみになったのは新聞報道によってでした。
八ツ場ダム事業をめぐっては、毎年多額の調査業務が行われています。06年度だけでも水質や環境調査にかかわる業務は8件、2億2200万円が使われています。調査業務は随意契約で発注したものが目立ちます。
代表的な受注業者が、国交省所管の財団法人ダム水源地環境整備センターです。01年度から28件、11億4000万円の業務を請け負っています。すべてが随意契約によるものです。「水環境影響検討業務」や「環境影響検討業務」といった、ヒ素検出に関連する情報の取りまとめをほぼ毎年のように請け負っていました。
同財団理事長の同省元河川局長など役員には同省OBや大手ゼネコン大成建設の元会長や準大手ゼネコン五洋建設社長が名を連ねています。04年から5年間に国交省OB7人が天下りをしています。
また本紙が入手した同財団設立時の資料には、鹿島建設や大成建設などのゼネコンや鉄鋼メーカー、建材メーカーが出資者として記されています。
人も金も受注者側のゼネコンなどが出す同財団による、情報取りまとめ業務。国交省と天下り法人とのなれあいで、ほかに情報隠しはなかったのか――。情報のさらなる開示が求められます。
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吾妻川の水質 吾妻川は魚も住めない“死の川”と呼ばれていました。上流の草津温泉や硫黄鉱山跡地から出てくる強酸性の水に高いヒ素が含まれています。住民はわき水から、生活用水を得ていました。こうした水質のために支流の湯川などでは石灰水で中和する事業を1964年から行い、酸性を弱めています。