2009年12月2日(水)「しんぶん赤旗」
郵政法案が衆院可決
塩川議員 国民の立場から調査を
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郵政株式売却凍結法案が1日、衆院本会議で採決され、民主・社民・国民新の与党と、日本共産党の賛成多数で可決しました。公明党、みんなの党は反対、自民党は本会議を欠席しました。これに先立つ総務委員会で日本共産党の塩川鉄也議員が質問に立ち、日本郵政には「かんぽの宿」問題をはじめさまざまな疑惑があると指摘。「与党としてどのような真相解明を行ってきたのか」とただしました。
原口一博総務相は「資料開示・説明などを求めている」としたうえで「この総括を抜きにして新郵政が国民の郵政における権利を保障するとはいえない」と述べました。
塩川氏は10月20日の閣議決定―「郵政改革の基本方針」が「郵政事業の抜本的見直しについては、国民生活の確保及び地域社会の活性化のため、日本郵政グループ各社等のサービスと経営の実態を精査する」としていることを取り上げ、「国民の立場からの調査が必要だ」と求めました。
原口総務相は「おっしゃるとおりだ」と認め、「郵政のすべての事業を検証したい」と表明しました。
塩川氏は「国民サービスを後退させ、『新たな利権』を生み出した郵政民営化を凍結することは当然だ」と強調する一方、たった3時間の委員会質疑で採決を強行したことに抗議。「十分な審議を保障しない運営はおかしい。法案の内容については同意できても、審議の進め方については同意できない」と強調しました。
解説
抜本的見直しへ第一歩
衆院を通過した郵政株式売却凍結法案は、郵政民営化の抜本的見直しへ第一歩となるものです。
郵政事業は、2007年10月の民営化により、持ち株会社である日本郵政のもと、郵便事業、郵便局、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の4事業を担う株式会社へと分割されました。
公益よりも営利を優先する経営は、住民サービスの低下や労働条件の悪化をもたらしています。また、「かんぽの宿」問題など、三井住友銀行やオリックス、リクルートなどに国民共有の財産を食い物にさせる「郵政利権」問題もおきています。
当初、政府は100%保持していた日本郵政グループの株式を順次売却(17年10月以降も3分の1超は保持)して民営化を「完成」する予定でした。
今回の法案は、政府が、郵政事業の見直しに向けた具体策をまとめるまでの間、株式を売却できないようにするものです。
日本共産党の塩川鉄也議員は11月26日の衆院本会議で(1)郵便貯金と簡易生命保険のユニバーサルサービス(全国一律)義務の復活(2)4分社化をやめ1社体制にもどす(3)経営の目的を利潤追求ではなく公共の福祉のさらなる増進のためとする―という基本点で郵政民営化を根本的に見直そうと提起しました。
こうした見直しのためには政府が日本郵政の株式を保持し続けることが不可欠です。
一方で、政府による「見直し」は、「郵便、郵便貯金、簡易生命保険の基本的なサービスを全国あまねく公平に(利用できるようにする)」とユニバーサルサービスは義務付けましたが、郵政事業の再編成については引き続き、「株式会社形態」とすると明記しており、問題があります。
株式売却の「凍結」後、どのような郵政事業にしていくのかの国民的な議論が必要となっています。(清水渡)