2009年12月7日(月)「しんぶん赤旗」
主張
ハンセン病基本法
人権と希望の療養所作り急げ
今年はハンセン病隔離政策が始まってから100年の節目の年でした。おりしも今年4月、ハンセン病への偏見や差別をなくし国の隔離政策の被害者である療養所の入所者が安心して暮らせるようにすることをめざした、「ハンセン病問題基本法」が施行されました。
しかし新政権のもと、患者、元患者らが願う法の具体化は遅々として進まず、入所者から大きな不安の声があがっています。
命けずる職員数の削減
国の隔離政策は熊本地裁が2001年に憲法違反であると断罪し、政府も責任を認めました。これを受けて全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)などがねばりづよい運動にとりくみ、昨年6月、全会一致で「基本法」が成立しました。市民92万人の署名も大きな力になりました。
ハンセン病療養所の入所者は、いま全国13の国立療養所に約2500人、平均年齢は80歳を超えました。国の強制隔離政策によって人権と生きる希望を奪われ、偏見と差別のもと、筆舌に尽くしがたい苦しみを強いられてきた人たちです。入所者が最後の一人まで「地域社会から孤立することなく、安心して豊かな生活を営むことができるよう」(基本法3条)保障することは、国の重要な責任です。
ところが、新政権のもと厚生労働省は来年度の概算要求で、ハンセン病療養所に55人の職員定員の削減を求めています。
療養所の入所者は、高齢化や障害の重度・重複化により、いまでさえ職員不足のために誤嚥(ごえん)や入浴中の事故さえ起きています。職員定員の削減は、事態をさらに深刻化させることは明瞭(めいりょう)です。法の趣旨に真っ向から反します。
今年7月衆院本会議で、「国立ハンセン病療養所における療養体制の充実に関する決議」が全会一致で採択されています。政府は職員削減計画を撤回し、手厚い医療・介護の体制こそ確立すべきです。
ハンセン病療養所の地域開放も、焦眉(しょうび)の課題です。隔離政策は国民のあいだに根深い偏見、差別を生み出しました。入所者は、故郷に帰りたくても帰れない悲しい現実に置かれているのです。「住みなれたこの地で、地域住民とともに生涯を送りたい」―地域開放は入所者の悲願です。
この願いにこたえて各地で、療養所の将来構想づくりが、地域住民、自治体ぐるみで広がっています。しかし、ここでも立ちはだかっているのが行政の「壁」です。
多磨全生園(東京・東村山市)では、土地や緑を「人権の森」として残し、保育所も併設をと入所者、自治体がとりくんでいます。ところが保育所設置には、国有地を理由に年1000万円近い借地料の支払いが必要になるとされ、計画が困難に直面しています。
地域開放へ国の支援を
国は、療養所の地域開放のために、土地、建物、施設等を自治体や地域住民の利用に供するにあたり、「必要な措置を講ずることができる」(基本法12条)とされています。土地を無償で提供するなど速やかに支援策を講じるべきです。
残された時間は長くありません。入所者の生活保障や地域開放への支援は一刻を争う課題です。日本共産党は、入所者、市民の運動と連帯して、ハンセン病の歴史への国の責任を果たさせるために、全力をあげます。
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