2009年12月9日(水)「しんぶん赤旗」
COP15の課題(上)
笠井亮衆院議員に聞く
温室ガス削減
新たな枠組みの節目
法的拘束力ある条約の土台に
21世紀前半の地球温暖化対策を論議する国連の会議、COP15(気候変動枠組み条約第15回締約国会議)が7日、デンマークの首都、コペンハーゲンで開幕しました。COP15の課題は? 日本はどうすべきか? COP15に参加する日本共産党地球環境問題対策チームの笠井亮責任者(衆院議員)に聞きました。
進む温暖化
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COP15では、地球温暖化の大きな原因になっているCO2(二酸化炭素)など温室効果ガスの排出量削減の中・長期の目標をしっかり持ち、世界が一致して真剣な取り組みを進めるかどうかが問われています。COP15は、そのために京都議定書が定めた2012年までの第1約束期間(先進国の削減約束を実施する期間)以降の新たな国際枠組みを決めようという節目です。会議最終日の18日には約100カ国の首脳が直接参加する重要な会議となります。
この瞬間にも温暖化は進行しています。待ったなしの人類的課題です。10日ほど前に、数百個の氷山が南極海からニュージーランドへと漂流しているとの報道がありました。夏の北極海の海氷の面積の縮小や、グリーンランド、南極の氷床の解け方を見ると、温暖化は予想を上回る速度で進んでいます。従来は、2100年までに海面が18〜59センチ上昇すると予測されていたのが、1メートル、最悪の場合2メートル上昇するという警告も出ています。
世界気象機関(WMO)は、08年の温室効果ガスの濃度が観測史上最高を記録したと発表しました。対策の遅れは、取り返しのつかない被害を環境と人類に与えるという、ぎりぎりの段階に来ています。
交渉の現状
COP15は、科学の解明に基づき、温暖化の被害を最小限にする世界のルールをつくりあげることを目的とする会議です。国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長が言うように、「温暖化対策で10年のできるだけ早い時期に法的拘束力のある条約の確固とした土台を構築できるよう、世界各国の指導者にいっそうの推進の努力を求め」、「『野心的な合意、公正な合意、科学的要請を満たす合意』を得る決意を持ってCOP15に集まることが重要」です。
世界の科学者を結集したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書は、気温上昇を2度以内に抑えるため、(1)50年までに半減、先進国は80%以上削減(2)15年までの早期に、温室ガスが増大し続ける現状から減少に転じ、先進国は20年までに25〜40%削減―すべきだなどの課題を掲げています。
交渉全体を見ると、途上国は、先進国の削減目標がまだ小さすぎる、途上国の削減取り組みのための技術・資金援助の拡大が必要だと主張。先進国側では、日本や米国が、中国・インドといった新興国をはじめ途上国も削減目標を明らかにすべきだと主張するなど、まだ大きな隔たりがあります。
日本は、9月の国連気候変動首脳会議で鳩山首相が「20年までに1990年比で25%削減する」と演説し、歓迎されました。それ自体は旧政権と大きく違う点です。
ところが、その具体化が進んでいません。その後の国連の交渉の場で政府代表は、削減目標の基準年について前政権と同様の主張をしたりして、世界のNGOから批判されました。途上国支援の「鳩山イニシアチブ」を打ち出したのに、支援額を含む具体的な中身は示さず、ルールづくりの提案では何の変化も見られないことに、多くの国々もNGOも失望しています。
日本の役割
COP15を目前にして、米国は20年までに05年比17%減(90年比4%減)の削減目標を示しました。米国と並ぶ排出国となった中国も、GDP(国内総生産)あたりのCO2排出量を20年までに40〜45%削減する目標を示しました。インドも05年比で単位あたり20〜25%削減する目標を掲げるなど、COP15で新たなルールに関する政治的合意をかち取る弾みが出ています。
日本共産党は、「地球温暖化の抑止に、日本はどのようにして国際的責任をはたすべきか」(08年6月)との見解を出すなど、提案や論戦を繰り返し行ってきました。
オバマ大統領が出席して米国がCOP15で指導性を発揮しようとしているもとで、日本が筋の通った交渉を展開できるかが問われています。「25%削減」を掲げる日本は、「エネルギー効率」のみを強調する旧自公政権のやり方ではなく、歴史的な温室効果ガス排出の「責任」、1人あたりGDPなどの「能力」という総合的視点から、米国はじめ他の先進国に削減を求めていく必要があるでしょう。(つづく)