2009年12月12日(土)「しんぶん赤旗」
生活保護の老齢加算廃止をどう考える?
〈問い〉 生活保護の老齢加算廃止の取り消しを求めて裁判がおこなわれていることを知りました。この制度が設けられた経緯を含めて、日本共産党の老齢加算への考えを教えてください。(東京・一読者)
〈答え〉 老齢加算は、1960年4月に創設されました。生活保護法には、年齢や健康状態をはじめ、要保護者の実態から生じる「必要の相違を考慮」(9条)するという「原則」があります。
そこで高齢者は、消化吸収がよく良質な食品や暖房費、保健衛生費、近隣・親戚(しんせき)への訪問や墓参などの社会的費用(「特別の需要」)が、他の年齢層に比べて余分に必要となることから、加算が設けられました。
ところが、2003年6月に小泉内閣が社会保障給付を抑制するために、老齢加算の「見直し」を打ち出しました。そして、同年12月、政府の社会保障審議会福祉部会の専門委員会が「中間とりまとめ」で、「廃止の方向で見直す」としたことを受け、04年度から段階的に削減、06年度に全廃しました。
その理由は、一般低所得高齢者世帯の消費支出額について、70歳以上と60〜69歳と比べて、「前者の消費支出額が少ない」からというものでした。
低所得の高齢者の消費支出額を比較して、「特別の需要」はないなどというのは、高齢者の実態をみない暴論です。高齢者は低年金、医療・介護の重い負担などにより、食費や暖房費、医療費などを切りつめ、消費を抑制せざるを得ないからです。
だからこそ、生活扶助基準が低すぎるなか、老齢加算が大きな役割を発揮してきたのです。それが廃止されたことにより、「食事を3食から2食に減らした」などの深刻な事態がひろがっています。これが憲法や生活保護法が保障する「最低限度の生活」といえないことは明らかです。本来なら70歳以上はもちろん、69歳以下も含めて、低所得の高齢者全体の生活水準を底上げすべきです。
日本共産党は、老齢加算廃止は憲法25条の生存権理念に反するものであり、直ちに復活するよう強く求めています。(文)
〔2009・12・12(土)〕