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2009年12月16日(水)「しんぶん赤旗」

主張

「事業仕分け」

文化に効率主義を持ち込むな


 「費用対効果を短期間で期待する傾向があるが、芸術・文化は長い時間がかかることをまず認めなければなりません」―ピアニストの中村紘子さんは、こう語っています。政府の行政刷新会議の「事業仕分け」が文化予算に大幅縮減や事業廃止の結論をくだしたことに、芸術家や芸術団体の間で危機感と批判が強まっています。

 削減されようとしているのが芸術・文化への公的助成の中心部分であり、これを許せば、日本の芸術家・芸術団体の活動が重大な打撃を被るからです。

芸術文化支援は国の責任

 「事業仕分け」が対象にした文化予算は、文化庁の芸術活動重点支援事業、芸術文化振興基金、子どものための舞台芸術体験事業、芸術家の国際交流などです。いずれも「予算要求の縮減」と結論づけられました。「子どもゆめ基金」と「子ども読書活動の推進事業」は「廃止」と判定されました。

 芸術・文化は人びとの心豊かなくらしに欠かせないものです。文化をつくり楽しむ国民の権利を尊重し、その条件を整えることは、国の責務です。

 舞台芸術や映画などのジャンルで、多様な作品の創造や上演・上映を入場料収入だけでまかなうのは困難です。だからヨーロッパでは、芸術活動への公的助成が大きく発展してきました。

 日本でも文化人の長い運動のすえ、芸術活動への公的助成が1990年代から本格的に始まりました。文化庁の重点支援事業や芸術文化振興基金による助成事業は、多くの問題点があるとはいえ、芸術創造活動に対する国の支援事業の中心的な役割を発揮してきました。子どもたちへの芸術鑑賞機会の保障にも役立ってきました。

 もともと日本の文化予算は、長い自民党政治のもとで、ヨーロッパ諸国や韓国に比べ貧困な状態におかれてきました。2009年度の当初予算は1015億円で、米軍への「思いやり予算」の約4割です。そのなかで芸術文化振興費は371億円しかありません。「構造改革」路線のもとで、文化庁の重点支援事業は、03年から08年の5年間で、舞台芸術では67億円から47億円と3割減、映画は13億円から6億2千万円と半分以下に削られてきました。

 鳩山政権下の来年度の文化庁予算概算要求は、自公政権の内容をほぼ踏襲し、総額も1040億円でほとんど変わりません。他方、今回の「事業仕分け」の対象額は約171億円で、芸術文化振興費の半分近くです。そこに大ナタを振るうのは、芸術文化振興への国の責任放棄に等しいものです。

予算縮減路線の撤回を

 文化予算の「事業仕分け」は、最初から「整理のうえ縮減を図るべき」「国費等による助成対象は…絞り込むべき」だと“削減先にありき”の内容でした。その結論を導くために「効果説明が不足」「税金投入の説明が不足」といった理由づけがされています。

 しかし、芸術・文化は短期的な効率主義や成果主義とは最も相いれない分野です。日本オーケストラ連盟が「経済効率や数値で示せる成果、効果だけを優先するという、世界の通念からも非常識な結論」と指摘するのも当然です。

 鳩山政権は、芸術・文化振興にたいする国の責任放棄につながる予算縮減路線をやめるべきです。



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