文字の大きさ : [] [] []

2009年12月19日(土)「しんぶん赤旗」

パナソニック 偽装請負は認定

最高裁、雇用責任を免罪

逆転判決


写真

(写真)支援に集まった人たちに判決結果を知らせる弁護士=18日、最高裁判所前

 パナソニック(旧松下)プラズマディスプレイ(大阪府茨木市)の偽装請負を告発後、不当解雇されたとして、元請負会社社員の吉岡力さん(35)が同社を相手に雇用の確認などを求めた上告審判決が18日、ありました。最高裁第2小法廷(中川了滋裁判長)は、派遣先との間に「黙示の労働契約」が成立しているとして地位を認めた昨年4月の大阪高裁判決を取り消しました。

 吉岡さんは製造業派遣解禁前の2004年から就労。大阪労働局に偽装請負を告発後、雇用されましたが、5カ月で06年に雇い止めされました。

 判決は、「派遣法の規定に違反していた」として偽装請負だと認定。しかし、プラズマが採用に関与していないなど形式だけみて雇用責任を認めませんでした。

 一方、直接雇用されてから不必要な作業を強いられ、雇い止めされたことについて、「申告に起因する不利益な取り扱い」と指摘。一、二審同様に違法行為の損害賠償を命じました。

 記者会見した村田浩治弁護士は「派遣契約なら派遣元に雇用責任があると形式的にとらえた判断。しかし偽装請負や違法行為を認めざるをえなかった」と指摘。吉岡さんは「不法行為を許すことは認められない」と述べ、「必死にたたかってきたから後悔はありません。違法行為は認めたので引き続きたたかっていきます」とのべました。


解説

救済に背を向けた不当判決

 社会問題になった「偽装請負」に対する最高裁として初めての判決として注目されていたパナソニック(旧松下)プラズマディスプレイ訴訟は、労働者・国民の期待にこたえない判決となりました。

 派遣切りなど大企業による労働者の使い捨てに対して、司法による積極的な救済を図るという社会的責務に背を向けたものとして批判は免れません。

 判決は、派遣法による規制を逃れるために違法な偽装請負が行われていたことを認め、それを告発した労働者を隔離して必要性もない作業を行わせ、わずか5カ月で雇い止めしたことについて「報復」「不利益取り扱い」だと認めました。

 しかし、その一方で派遣労働者の採用に関与していなかったなどという形式的な理由で、派遣先と派遣労働者との間に「黙示の労働契約」が成立していると認めた大阪高裁判決を取り消しました。

 偽装請負を認めながら派遣先との間に雇用契約を認めず、派遣先に責任を負わせないことは極めて矛盾しています。違法行為を認めながら労働者が解雇されても救済もしないことは許されません。同様の裁判は全国で60件以上起こされており、社会的正義にそむく判決は打ち破られていくに違いありません。

 同時に、これは現行の派遣法の欠陥を露呈しており、政治の場で労働者を保護し救済するため派遣法の抜本改正が急務になっていることを示しています。

 くしくも判決と同じ18日に開かれた政府の労働政策審議会部会で、偽装請負などを行った企業に対して直接雇用させる「みなし規定」の導入や登録・製造派遣の原則禁止を盛り込んだ改正案が提案されました。

 これは、この事件のように派遣切りを告発してたたかいに立ち上がった非正規労働者をはじめ、派遣労働などが生み出した貧困と格差の根絶を求める世論と運動がつくりだした変化です。不当な判決を乗り越え、人間らしく生き働くルールを求めるたたかいが焦点になっています。(深山直人)



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp