2009年12月21日(月)「しんぶん赤旗」
後期医療で健診率急落
対象者絞り、有料も 本紙全国調査
46道府県軒並み低下
後期高齢者医療制度に強制加入させられた75歳以上の高齢者の健康診査(血液・尿検査など)の受診率(2008年度)が、以前の老人保健制度のもとでの健診受診率(07年度)と比べ、46道府県で軒並み低下したことが20日までにわかりました。後期高齢者医療制度を運営する各都道府県の広域連合を本紙が取材、集計しました。
健診の受診率は、東京都を除く道府県で最大28・8ポイント(島根県)低下。9道県が1けた台に落ち込みました。一番高い東京都(48・3%)以外は40%に満たず、20%にも届かない道府県が17から28に11県増えました。
後期高齢者医療制度の実施(08年4月)に伴い、健康診査の制度も大きく変更され、75歳以上は別枠に切り離されました。
40〜74歳までの「特定健診」は医療費削減の目的に従属させられ、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の改善を迫る仕組みになりました。検査項目は「メタボ対策」に特化され、病気の早期発見に必要な項目が除外されました。
一方、市町村に実施義務があった75歳以上への健診は、広域連合の「努力義務」に後退。検査項目も「特定健診」に沿って減らされました。
さらに、厚労省は健診対象者を「絞り込む」よう指示。多数の広域連合が生活習慣病の患者などを健診の対象外としました。「重複検査を避ける」などという厚労省の説明に対し、日本共産党の小池晃政策委員長は「74歳まではいくら重複しても健診を受けられる。明らかな差別だ」(08年4月10日の参院厚生労働委員会)と批判していました。
75歳以上の健診の財源は、以前は公費(国・都道府県・市町村が3分の1ずつ負担)でしたが、各広域連合が基本的に保険料(国が3分の1負担)でまかない、積極的に健診を行うほど保険料が上昇する仕組みに改悪され、多くの市町村で無料だった健診が有料になりました。
制度元に戻せ
日本共産党の小池晃政策委員長の話 健診受診率の急落は高齢者の健康にとって重大な問題です。地域で健診に熱心に取り組んできた医師会の方と話をすると、健診を「メタボ対策」に特化した国のやり方に怒りの声が上がります。75歳以上の高齢者の医療を年齢で差別し、健診まで改悪した後期高齢者医療制度の害悪は明らかです。
健診費用の財源を高齢者の保険料や受診料に求める「自己責任」主義は、公衆衛生の向上を国に義務付けた憲法25条に反します。受診券を持って行かないと健診を受けられなくなったことも受診の妨げになっています。
後期高齢者医療制度を早急に廃止し、健診の制度も元に戻すべきです。
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