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2009年12月21日(月)「しんぶん赤旗」

主張

COP15

実質前進への新たな出発点に


 会議に向けて高まった国際世論を、前進の跳躍台にしなければなりません。地球温暖化を防ぐ国連の会議COP15(気候変動枠組み条約第15回締約国会議)は、課題に見合う成果をあげられませんでした。それでも土壇場での決裂回避は、温暖化を許さない国際世論の圧力がもたらしたものです。

 会議終了で一段落する余裕はなく、実質的な前進に向けて交渉を進めなければなりません。行き詰まりを突破するには、国際世論が弾みをつけ、交渉を突き動かさなければなりません。

根深い対立とは

 全会一致での採択ができず、「留意」するとされた合意が唯一の成果でした。それも、採択に賛成した国々でさえ「欠陥だらけ」といわざるをえなかったものです。ほとんどの国は、交渉を決裂させるわけにはいかず、この合意を次のステップの足がかりにするしかないとの判断で受け入れました。

 合意に示されたように、気温上昇を「2度以内に抑える」ことに反対する国はもはやありません。温暖化の影響が激しい島しょ国やアフリカの国々は「1・5度以内」を要求しています。しかし、先進国や新興国がこれまでに発表した目標では、気温上昇は「3度」にもなるとみられています。各国の努力は求められる水準から大きく隔たっていることを直視する必要があります。

 各国が合意にそって、2020年までの温室効果ガスの排出削減目標を提出するまでに、1カ月余しかありません。事態を転換させるだけの政策がとられなければ、交渉は前進できません。先進国が大きな責任を負っています。とりわけ米国が大きく足を踏み出すことが前進の鍵になっています。

 会議を通じて、先進国と途上国との「根深い対立」が注目されました。それは、これまでの世界の経済発展のあり方が抱える問題を浮き彫りにしています。難航する交渉は、公正・民主的な経済秩序づくりに向けた、生みの苦しみです。

 第2次大戦後に植民地が次々に独立する中で、民主的な新国際経済秩序の建設が迫られてきました。しかし、世界経済は一部の先進国に牛耳られ、その陰で飢餓や貧困、重債務、資源の奪取など途上国が直面する問題の解決が先送りされてきました。それが、先進国と途上国との国際協力を必要とする地球温暖化という待ったなしの問題を前に、矛盾となって噴き出した格好です。

 会議が、法的拘束力のある政治文書さえ採択できなかったことは、事態の深刻さを浮き彫りにしました。地球環境は維持できるかどうかの瀬戸際にあります。先進国と各国に、従来の枠組みを超えた知恵と努力が求められています。

維持可能な発展

 先進国は、資金援助の規模を20年には毎年1000億ドルとすることで合意しました。途上国も一定評価しています。これを第一歩に国際協力を通じて、先進国の従来の歩みとは違う維持可能な経済発展のあり方を探り出すことが、途上国にとって不可欠です。「カーボン(炭素)デモクラシー」の原則を含む、より公正な温暖化対策のあり方もその過程でこそ結実することでしょう。それは新たな民主的国際経済秩序の本格的な建設に進むものになるはずです。



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