文字の大きさ : [] [] []

2009年12月24日(木)「しんぶん赤旗」

主張

診療報酬

医療の再生へ底上げが必要


 医師や看護師の不足などにより、産科・小児科・救急医療をはじめ医療機関、診療科の閉鎖、公立病院の統廃合など、「医療崩壊」が深刻です。こうしたなか民主党は「累次の診療報酬マイナス改定が地域医療の崩壊に拍車」をかけたなどとして、新政権では「国内総生産(GDP)比で、医療費の先進国並みの確保をめざす」とうたってきました。

 このもとで来年度予算編成でも、診療報酬の取り扱いが焦点の一つになってきました。

引き上げのはずが

 診療報酬は、個々の医療機関の収入を左右するとともに、公的保険がカバーする医療費の総枠を決めるものです。これまで「小泉構造改革」のもとで2002年から4回連続で計8%近く引き下げられ、この間に削られた医療費の合計は13兆円にものぼります。これが医療体制の縮小と、医療従事者の過酷な労働に表れています。日本看護協会の調べでは、交代勤務の23人に1人が過労死危険レベルにあるといわれるほどです。

 新政権は公約どおり、せめてこの間の被害回復のため、診療報酬の明確な引き上げをはかるべきです。ところが概算要求にたいする「事業仕分け」では、診療報酬の削減と、市販品類似薬や漢方薬の保険外し、入院時の食費・居住費負担の一般病床への拡大までもが、もちだされました。医療団体などから抗議が出るのは当然です。

 財務省などは、「開業医の収入が多いから、勤務医に振り向けろ」「大変な診療科に回せばいい」などと、医療従事者の分断をはかり、医療費を抑えようとしています。しかし、重要なことは全体の医療費の欠乏であり、崩壊しつつある医療の底上げです。開業医の収入は設備投資や従業員に支払う給与をふくむ診療所としての収益で、勤務医の給与とは違います。大病院だけでなく住民に身近な開業医の役割は今後もきわめて重要です。

 診療報酬の改悪・引き下げは、患者にとっても十分な医療が受けられない重大な事態をうみだします。これまでもリハビリの制限、高齢者の療養病床からの追い出しなどがあいつぎました。歯科では20年にもわたって診療報酬がすえおかれ、保険治療の拡大を阻んでいます。診療報酬の改善は、国民と医療関係者の共通の課題です。

 しかも診療報酬の引き上げなど医療のための財源確保は、毎年2200億円も社会保障予算を削り、ムダな公共事業や軍事費、大企業減税に費やしてきた、財政のゆがみを正す第一歩でもあります。あわせて、新薬の不透明な価格決定と薬剤費の膨張や、高額医療機器など、医療費のムダにメスを入れることは重要です。こういうものこそ「仕分け」が求められます。

医療を守る共同ひろげ

 日本医師会はいま、くらし悪化のもとで受診抑制がひろがっているとして、新政権にたいし、患者負担の軽減を提言しています。安心できる医療制度のために、ヨーロッパ並みに患者負担は無料が当たり前と訴える日本共産党の提案に、共感がひろがっています。

 新政権のもとでも、医療費削減路線は根本的には是正されていません。公約を守らせる、国民的な共同が大切です。それは、早期発見、早期治療で病気も減らし医療費も減らす、国民皆保険制度の本来の姿につながっていきます。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp