2009年12月30日(水)「しんぶん赤旗」
製造業大企業
利益剰余金 バブル期の倍
トヨタは「1万人正社員化×220年分」
雇用守る体力あり
雇用破壊が社会問題となっている一方、大企業には雇用を維持する体力が十分にあります。内部留保の一部である利益剰余金だけをみても、資本金10億円以上の製造業大企業は、バブル期の2倍近くため込んでいます。トヨタ自動車の利益剰余金は、正社員1万人の年収220年分を超えます。
32兆円増
自動車、電機など輸出大企業はじめ製造業大企業は、世界的な経済危機を理由に、昨年秋から「非正規社員切り」を競い合ってきました。人員削減は正社員にも及んでいます。一方、財務省の法人企業統計をもとに、企業側も認める内部留保である利益剰余金をみると、製造業大企業は9月末時点で約64兆円ため込んでいます。ピークの2007年12月末の78・7兆円からは2割弱減ったものの、バブル期の1989年9月末時点と比べると約32兆円増と、ほぼ倍加させています。
各社の連結決算をみると、トヨタ自動車の利益剰余金は、9月末時点で約11兆3700億円です。ピーク時と比べて減らした約1万人の期間従業員を、すべて年収500万円の正社員として採用しても、227年かからないと使いきれない計算になります。期間従業員の雇用を維持し、正社員化する体力は十分にあります。
株主には
一方、各社は、株主配当のためには内部留保を取り崩しています。トヨタは、半年(4〜9月期)の純利益(最終利益)が560億円の赤字になったと発表しています。にもかかわらず、627億円の株主配当(中間配当)を決定しています。赤字でも配当するためには、内部留保を取り崩すしかありません。株主配当のためにはできても、雇用のためには内部留保の活用ができないというのは理屈に合いません。
製造現場への労働者派遣が「解禁」(2004年3月施行)される前の03年3月末時点と今年9月末時点の利益剰余金を比較すると、トヨタが4兆1000億円増やしています。ホンダが約2兆円増の5兆1000億円、日産が1兆5000億円増の2兆4000億円、キヤノンが1兆6000億円増の2兆9000億円です。輸出大企業の多くが、人件費を抑制して積み増ししている内部留保を、雇用のために活用することが、大きな課題となっています。
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利益剰余金 企業の年々の利益を積み上げたものから、株主配当などで社外に出ていく部分を除いたものが内部留保です。このうち、営業活動を通じて蓄積されたものが利益剰余金。内部留保の大きな部分を占めています。
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