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2010年1月8日(金)「しんぶん赤旗」

主張

アルカイダへの対応

米国は軍事報復戦略を見直せ


 米国が、国際テロ組織アルカイダの壊滅をめざす軍事作戦を拡大しています。アフガニスタン・パキスタンとイラクでの「対テロ戦争」を、イエメンやソマリアにも広げかねない勢いです。

 「対テロ戦争」は一般市民に犠牲を広げ、テロを抑えるどころか拡散させている―。アフガン戦争の泥沼化が長引くなか、軍事力でテロに報復する米国の方針に、世界的に懸念が強まっています。「対テロ戦争」が新たな様相をみせようとするいま、その方針は根本から見直されるべきです。

反感募るイエメン

 昨年のクリスマス、米国に向かっていた旅客機内で爆弾テロ事件が起きました。テロは失敗に終わったものの、2001年9月の米同時テロ以来、「テロとの戦い」を最優先にしてきた米政府に大きな衝撃を与えました。

 米国は、イエメンのアルカイダ勢力がテロ首謀者だとし、これを壊滅する軍事作戦を強化しています。アフガンとイラクの戦争も担当しているペトレアス米中央軍司令官がイエメンを訪問し、同国を「対テロ戦争」で優先させて軍事支援を拡大すると伝えました。これまでもイエメン政府軍によるアルカイダ攻撃作戦には、米軍の情報やミサイル攻撃が可能な無人航空機などの装備が使われているとみられています。

 米国にとって、イエメンはアルカイダとの戦いが始まった国です。同時テロに先立つ2000年、寄港中の米駆逐艦がテロにあい、米兵17人が死亡しました。以来、米国はイエメンへの軍事支援を強めてきました。今回の爆弾テロ事件は、米軍の後押しでイエメン政府軍がアルカイダへの掃討作戦を強めていたさなかに起きています。

 部族・宗派対立が複雑なイエメンで、政府軍の軍事作戦は対立する民兵組織にも向けられており、アルカイダ攻撃との区別はあいまいです。掃討作戦は女性や子どもにも被害を広げ、難民が流出しています。米国の新たな軍事干渉に対しては、イエメン国民が反感を募らせていると伝えられます。

 オバマ大統領は、世界のどこであれ、アルカイダを追い詰めるとしています。昨年12月のノーベル平和賞受賞演説でも、アルカイダを壊滅させるとの方針を改めて表明しました。「唯一軍事超大国」である米国が「世界の安全保障を引き受けてきた」と述べて、「対テロ戦争」を正当化しました。

 米国と英国は共同で資金や訓練などの軍事支援を強めています。今月28日にはアフガン問題での国際会議の機会をとらえ、イエメンへの軍事協力を拡大する国際会議を開く予定です。

戦火限りなく

 テロは決して容認できません。しかし、8年余におよぶアフガン戦争は、軍事力でテロ問題は解決できないことを鮮明にしており、米政府もそれを認めざるをえません。アルカイダの活動が広がっている背景には、米軍による無法なイラク侵略やアフガン攻撃があると指摘する声もあります。アルカイダはアフリカでも各地で活動しているとみられ、オバマ米政権の方針でいけば、戦火は限りなく広がりかねません。

 軍事攻撃の拡大は報復の連鎖を引き起こします。そこに目を向け、連鎖を断つことが第一です。



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