2010年1月13日(水)「しんぶん赤旗」
大企業、巨額の内部留保
従業員1人あたり→トヨタ4178万円、NTTドコモ1億8755万円
全労連などが5000社を調査
大企業約5000社(資本金10億円以上、金融関係をのぞく)は世界的な不況下で売り上げも利益も減らすなかでも、巨額の「内部留保」をため込んでいることが、全労連と労働運動総合研究所の調査で明らかになりました。労働者と中小企業が雇用と経営の苦境に立たされるなか、大企業だけがひとり肥え太る異常な姿を示しています。
財務省の法人企業統計(08年度決算)や有価証券報告書をもとに算出し、『2010年国民春闘白書』として発表したものです。
白書は、賃金や下請け単価の抑制、非正規雇用の拡大などに加えて、国民所得減で設備投資も増えず、不要不急の資金がたまる結果になっていると分析しています。
白書によると、トヨタは内部留保を5306億円減らしたものの、それでも従業員1人あたり4178万円にものぼります。在庫調整や人減らしで総資産が減少したため、逆に内部留保が占める割合は上昇しています。
全労連・労働総研では「大企業に社会的責任を果たさせ、内部留保の社会的還元で、内需拡大・生活充実の経済へ転換する第一歩とすることが重要」と強調しています。
雇用確保・賃上げ 体力十分
『2010年国民春闘白書』から、主要企業の内部留保を見ると―。
日産自動車は国内外で2万人の人員削減をすすめていますが、1人あたり2372万円もため込んでいます。
ソニーも内外で1万8000人(正規8000人)を削減しますが、127億円増やし1人あたり2071万円にのぼっています。
「非正規切り」で批判をあびた自動車や電機各社は内部留保を減らしているものの、巨額のため込みに変わりはありません。
11万人リストラをすすめるNTTグループでは、NTTドコモが1人当たり1億8755万円と断トツ。ゼネコンでは、建設不況でも内部留保を増やしている清水建設をはじめ各社が大きなため込みを維持しています。
ワンマン運転化をすすめている東京地下鉄は、1人あたり3284万円と高水準です。
持ち株会社では、りそなホールディングスが1人当たり1億3663万円など、金融持ち株各社は巨額のため込みを抱えています。
今春闘で大企業は、定期昇給の凍結までいい出していますが、雇用を守り、賃上げもできる十分な体力があることを示しています。
内部留保について財界・大企業は、「工場など資産に形を変えており取り崩せない」などと主張しています。
これに対して白書では、内部留保は預金など手元資金として保有したり、株式・公社債など換金性が高い証券投資に振り向けており取り崩すことは可能だと指摘。「内需拡大・生活充実の経済へ転換するために、内部留保を社会に還元することは大企業の社会的責任」だと強調しています。
『2010年国民春闘白書』は、内部留保のほか経済、賃金、労働時間、雇用、社会保障、政治など33項目にわたって活用できる豊富なデータや課題などをコンパクトに掲載。定価1000円。発行・学習の友社03(5842)5641。
内部留保 利益から税金、株主配当など社外流出分を引いた残りのもうけをため込んだもの。国民春闘白書では、利益剰余金、資本剰余金、引当金などを総計しています。
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