2010年1月18日(月)「しんぶん赤旗」
通常国会の焦点を問う
NHK番組 志位委員長の発言
日本共産党の志位和夫委員長は17日、NHK「日曜討論」に出席し、民主党・小沢一郎幹事長の土地購入をめぐる金権疑惑や、鳩山政権の来年度予算案などについて、7党の党首クラスと討論しました。司会は影山日出夫NHK解説委員。
小沢氏疑惑―政治とカネ
疑惑の核心―ゼネコンのヤミ献金が土地購入の原資か
はじめに、小沢氏の疑惑をめぐり元私設秘書の石川知裕衆院議員が逮捕されたことが議論となりました。
菅直人副総理・財務相は「捜査の渦中であり、判断する材料を持っていない。コメントは控えたい」と発言。また、「この国会の最大の問題は景気・経済」だとし、国会の争点としない姿勢を示しました。鳩山由紀夫首相が小沢氏に対して「(検察と)たたかってください」と発言したことについても、「幹事長の思いを受け止めての発言だと思う」と理解を示しました。
自民党の谷垣禎一総裁は「総理、与党筆頭の幹事長の2人の周辺で次々と逮捕者がでるというのは異様な事態だ」と述べました。
志位氏は次のように述べました。
志位 これだけ深刻な疑惑が問われながら、民主党の中から追及の声があがってこない。そして、首相自身が、本来は行政の長として検察が公正で厳正な捜査を行う環境をつくる責任があるにもかかわらず、「たたかってください」と発言する。これはきわめて遺憾な発言だと思います。
この疑惑の核心はなにかというと、政治資金収支報告書の虚偽記載(の疑惑)にとどまらず、土地購入資金の原資はなんだったのか、4億円の原資はなんだったのかということです。
私たち、「しんぶん赤旗」としてこの問題を調査し、(中堅ゼネコンの)水谷建設の関係者に直接取材をして、全日空ホテルで2004年に石川氏、そして(05年に小沢氏の公設秘書の)大久保(隆規)氏、2回にわたって5000万円ずつ紙袋にいれて渡したという証言を取っている。ゼネコンのヤミ献金が原資ではなかったかという疑惑が問われているわけです。
これは、公共事業という国民の税金が食い物にされたのではないかという疑惑ですから、しっかりとした説明を小沢氏自身もする必要があるし、民主党は党としても自浄能力を発揮する必要があると思います。
社民党の福島瑞穂党首(消費者・少子化担当相)は「国民は真摯(しんし)な説明を望んでいる」と発言。同時に、企業・団体献金の禁止を盛り込んだ法案を国会に提出する考えを示しました。
国民新党の亀井静香代表(郵政改革・金融相)は「捜査は検察にまかせておけばいい」と強弁。菅氏も「志位さんが共産党の新聞をかざされたが、それも本当にそうなのかは分からない」などと述べました。
必要な招致含め国会が真相究明の努力を
志位氏は次のように述べました。
志位 今度の疑惑は、(ゼネコンから)ヤミ献金という形で流れていたのではないか(というものだ)。公共事業というのは、国民の税金でやられる仕事です。ですから、これは国会がしっかりとした真相究明の努力をすべきで、必要な招致も当然すべきだと思います。
繰り返される金権事件―企業・団体献金の禁止を
志位 それから、こういう問題がなぜ繰り返し起こるのかといったら、(自民党の)田中金脈、金丸金脈、ずっとそれ以来、自民党自身がそういう金権政治の根を断ってこなかった。その大本にあるのは企業・団体献金ですよ。これを温存してきたというところに一番の問題があるわけです。
この問題は、民主党も、3年後という時限つきではあるけれどもマニフェストに(企業・団体献金)禁止を盛り込んだ。社民党もいま(禁止法案を出すと)おっしゃった。私たちは、政党助成金の撤廃も必要だと考えていますけれども、そういう大本の根を断つという太い議論が国会では必要だと思います。
鳩山政権の4カ月をどうみる
肝炎対策基本法、高校授業料無償化…国民の力でつくった変化も
次に、鳩山政権の支持率低下が議論となりました。NHKの世論調査では政権発足直後に72%だった支持率が、現在では52%に下がっています。
志位氏は、司会者から「政権が代わっても肝心な所はなにも変わっていないと言っていたが」と問われ、次のように述べました。
志位 政治を変えてほしいという国民の非常に大きな圧力が加わっていますから、一連の点で改善が図られている面はあると思います。たとえば肝炎対策基本法、これは超党派で成立しました。あるいは高校の授業料無償化。私学は不十分ですけれども、これは一歩前進だと思います。国民の力でつくった変化というのはあると思います。
後期医療・派遣法・普天間…国民が願う肝心要のところで問題点
志位 ただ、自公政権からここを変えてほしいと国民が一番望んでいる肝心要の問題で変わっていない問題がいくつかある。
たとえば後期高齢者医療制度の撤廃。これは(国民の多くは)即時撤廃を望んでいるけれども4年後に先送りされる。
あるいは労働者派遣法の改正。いま労政審が出した(答申)案の段階ですが、製造業への派遣禁止に大きな抜け穴ができている上、実施は3年後から5年後ということになっている。
それから米軍普天間基地(沖縄県)の問題については、無条件撤去という立場に立てずに迷走している。
そして、「政治とカネ」の問題では説明責任を果たさない。こういう一連の問題が出てきています。
やはり根底には、内政は「財界中心」、そして外交は「米国追随」というこの大枠から抜け出せないという限界があると思うんですね。ここを大きく変える必要があると思います。
普天間問題―政府の対応は迷走そのもの「移設先探し」でなく無条件撤去こそ沖縄の願い
福島氏は「普天間の問題を迷走していると言ったが、それは違う」と否定しましたが、志位氏はつぎのように反論しました。
志位 さきほど、普天間の問題について迷走していないと言われたけれども、迷走そのものですよ(亀井「してないよ」)。迷走そのものです。なぜならば、「移設条件付きの返還」に固執しているからです。普天間の苦しみというのは、どこに移そうと、(沖縄)県内はもとより、本土のどこに移そうと同じ苦しみです。これはもともと沖縄県民は無条件撤去を求めていたんです。だから、無条件撤去ということで、やはり結束してがんばる必要がある。
来年度予算案
借金44兆円、一度限りの「埋蔵金」頼り…“先のない予算”に国民は不安
この後、来年度予算編成について議論になり、自民党は“放漫財政だ”といい、民主党は“前政権の見通しに誤りがあった”といった責任のなすりあいがつづくなか、志位氏は次のように述べました。
志位 今度の予算案を見ますと、一定の改善は、国民の要求を反映して出てきていると思います。
ただ、国民のみなさんが一番不安に思っているのは借金が44・3兆円ということ。一度限りの「埋蔵金」8兆円に頼っているという、先のないところに、不安を感じていらっしゃると思うんですね。
軍事費は増額、大企業・大資産家優遇は温存―ここにこそメスを
志位 私は率直にいって、二つの分野が「聖域」にされていると思います。
第一は、軍事費が結局、4兆8000億円と増額になっているわけですね。米軍への「思いやり予算」や「米軍再編」費は3370億円と史上最高になっています。これにメスが入っていない。
それから、もう一つは、大企業と大資産家に対する優遇税制です。たとえば、大企業に対する研究開発減税。これが継続になっています。株の取引にかかる優遇税制。これは(日本では)10%(の税率)しかかかってない。こんな国は世界にないですよ。アメリカはいま、25%から30%にしようとしている。イギリスは30%から40%にしようとしている。しかし、これも優遇税制を続けている。所得税の最高税率についても手をつけようとしない。
こういう大企業と大資産家に対する優遇税制に手をつけようとしない。アメリカでもイギリスでもやっているのに日本は手をつけようとしない。ここにもう一つ大きな問題がある。
軍事費と大企業、大資産家に手をつけなければ、結局、消費税の増税というところにいかざるをえないということが一番大きな問題だと思います。
志位氏の提起を受けて、司会の影山氏は、菅氏に「(消費税増税について)再来年から議論をスタートするかのように受け取られた向きもあったが、そこは否定しないのか」と質問。菅氏は、「207兆円を徹底的にいまから洗い直す。そのうえで、ほんとうに逆立ちしてもこれ以上、お金のムダがないというところにきたときに、最終的にこのままでいきますか、それとも負担を増やしてでも福祉を充実させますかと、そういう機会がくるだろう」と述べ、将来の消費税増税議論を否定しませんでした。
景気対策どうする
政府の「新成長戦略」―「診断」は正しいが「処方箋(せん)」なし
司会から景気対策に何が求められているかとの質問があり、志位氏は次のように答えました。
志位 政府の「新成長戦略」を拝見して、“処方箋”は述べられていない。ただ、“診断”は、ある程度正しいことが書いてあると思って読みました。「構造改革」のもとでの「成長戦略」で、「選ばれた企業にのみ富が集中」し、「格差が拡大」した。この認識は正しいと思うんですよ。
「選ばれた企業に富が集中」している。
急増する大企業の「埋蔵金」―社会に還元するルールづくりを
志位 この間、約10年間で雇用者報酬が280兆円から253兆円へと1割近く減ったんですね。所得が減った。
一方で、企業の内部留保が約200兆円から400兆円へと急増した。その半分は大企業がためこんだお金です。これは、まさに派遣労働などで(労働者から)吸いあげてためこんだ。
この「埋蔵金」を社会に還元させる。労働者派遣法を改正して、非正規から正規に転換する。最低賃金の底上げをやる。あるいは(中小企業の)下請けの適正な単価を保障する。こういうルールをつくることによって、いまの景気をよくしていく対策が必要だと思います。
これに対して、他党からは具体策は出ず、自民党からは「公共事業は雇用を守るために必要。最後は消費税の話になってくる」(谷垣氏)と従来路線のまま。菅氏は「経済の第三の道を探る。90年代の公共事業でもなく、2000年代の小泉・竹中路線でもない」と述べましたが、具体策は示されませんでした。
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