2010年2月3日(水)「しんぶん赤旗」

志位委員長の代表質問

衆院本会議


 日本共産党の志位和夫委員長が、2日の衆院本会議でおこなった代表質問は次の通りです。


 私は、日本共産党を代表して、鳩山総理に質問いたします。

 さきの総選挙での国民の審判は、「政治を変えたい」という国民の熱い願いを示すものとなりました。発足から4カ月半たった鳩山政権は、この願いにこたえているでしょうか。私は、国政の焦点となっている問題で、鳩山政権の政治姿勢をただすとともに、わが党の抜本的対案を明らかにするものです。

「政治とカネ」の疑惑にたいする認識と対応を問う

写真

(写真)代表質問する志位和夫委員長=2日、衆院本会議

 まず、「政治とカネ」の疑惑にたいする総理の認識と対応を伺います。

 民主党・小沢幹事長の資金管理団体・陸山会による土地購入疑惑が、国政の重大な問題となっています。

 その最大の焦点の一つは、土地購入を前後して、ゼネコンからのヤミ献金があったのではないかという疑惑です。この問題について、わが党の機関紙「しんぶん赤旗」は、中堅ゼネコン「水谷建設」の関係者から、2度にわたって合計1億円を小沢氏側に渡したとの詳細な証言を得ています。小沢氏は、「やましい金は受けとっていない」といいますが、土地購入の原資についての説明は、「政治献金」、「銀行からの融資」、「個人の資産」と二転、三転しています。このこと自体が、原資を明らかにしたくない、明らかにできないことの表れではないでしょうか。

 さらに重大なことは、「水谷建設」の関係者が、大久保被告から「(仕事を)とったら5千万円、お願いします」と献金を要求されたと、これも「しんぶん赤旗」に証言し、「水谷建設」は実際に岩手県胆沢ダムの工事を受注しているということです。西松疑惑をめぐっても、小沢事務所が「天の声」として東北地方の公共事業の本命業者の選定に決定的な影響力をもつようになり、ゼネコンは「天の声」を得るために小沢氏側に多額の献金をおこなっていたとの疑惑が、公判廷で提起されています。「お宅がとった胆沢ダムは小沢ダムだ。そのことを忘れるな」――西松建設東北支店長は、大久保被告からこういわれたとされています。ここには公共事業という国民の税金でおこなわれる事業を食い物にしたという、それが刑事訴追の対象となるかいかんにかかわらず、けっして看過することはできない政治的道義にかかわる疑惑が提起されているのです。総理に、その認識はありますか。

 総理は、「捜査を見守る」として、この問題について、施政方針演説で一言も触れませんでした。しかしこれは国会が切り開いてきた到達点を無視する姿勢です。

 田中角栄元首相の「犯罪」が問われたロッキード事件のさいには、衆参両院議長の立ち会いのもとで5党党首会談が開催され、刑事責任の究明は検察・司法の職責だが、国会は司法の手がおよばない政治的道義的責任の有無も含めて国政調査権を発動して真相究明をはかることが確認され、検察・司法の究明と、国会の究明が、“車の両輪”となって疑惑解明が進みました。ここにわが国会が切り開いてきた政治疑惑究明の到達点があるのです。私は、この到達点にたった真摯(しんし)な対応を、民主党党首でもある総理に強く求めるものです。

 この問題の根源には、田中金脈、金丸金脈以来の金権政治と、その元凶である企業・団体献金が古い自民党政権のもとで温存されてきたという大問題があります。「古い仕組みを終わらせる」というなら、企業・団体献金の即時禁止に踏み切るべきであります。政党助成金をめぐる数々の疑惑も指摘されています。いまや政治腐敗の根源の一つともなっているこの憲法違反の制度も撤廃すべきです。総理の答弁を求めます。

経済危機から国民の暮らしをどう守るか――三つの転換を提案する

大企業の巨額の内部留保と利益を、雇用、中小企業に還元せよ

 いま、国民の暮らしの実態は、失業、雇用、中小企業とも底なしの悪化を続けています。経済危機から国民の暮らしを守るために政治は何をなすべきか。私は、旧来の政治からの三つの転換を提案し、鳩山政権の姿勢を問うものです。

 第一は、大企業に、暮らしと経済に対する社会的責任をはたさせる政治への転換です。なぜ日本の景気悪化はここまで深刻なのか。国民の所得が奪われた結果です。雇用者報酬――勤労者の所得は、1997年の280兆円をピークに、2009年には253兆円にまで、27兆円、1割も落ち込みました。一方、企業の内部留保は、この10年間に、約200兆円から400兆円に急増し、その半分近くが大企業のため込み金です。

 この事実は、政府も認めています。昨年12月末に発表された政府の「新成長戦略」では、この10年来の政策の結果、「選ばれた企業のみに富が集中し、中小企業の廃業は増加、国民全体の所得も向上せず、…需要の低迷が続いた」と指摘しています。私は、この「診断」については正しいと考えます。しかし、「診断」は正しくとも、解決のための「処方箋(せん)」はここでは何ら明らかにされていません。

 なぜ「選ばれた企業のみに富が集中」することになったのか。私は、大企業がため込んだ巨額の内部留保は、労働法制の規制緩和による正社員の非正規社員への置き換え、下請け単価の買いたたきをはじめとした中小企業いじめのうえに積み上げられたものだと考えますが、総理はどう認識していますか。

 「埋蔵金」というなら、大企業がため込んだ巨額の内部留保こそ、国民に還元すべき最大の「埋蔵金」ではないでしょうか。「選ばれた企業のみに富が集中」するシステムをあらため、大企業の巨額の内部留保と利益を、雇用と中小企業に還元させる政策への転換が必要だと考えますが、いかがですか。答弁を求めます。

“非正規社員から正社員への雇用転換”を雇用政策の中心に

 私は、そのための具体的な方策として二つの点を提起するものです。

 一つは、“非正規社員から正社員への雇用転換”をすすめることです。派遣、パートなど、不安定な非正規社員として働く労働者は3人に1人、若者と女性では2人に1人にまで広がりました。ヨーロッパ各国では、非正規社員の比率は1割前後であり、日本の実態はきわめて異常といわなければなりません。政府は“非正規社員から正社員への雇用転換”を雇用政策の中心にすえ、具体的な目標と方策をもつべきではありませんか。

 とりわけ、その焦点となるのが労働者派遣法の抜本改正です。この問題について、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会が昨年12月にまとめた答申では、「製造業派遣の原則禁止」をいいながら、1年以上の雇用が見込まれれば、「短期細切れ」の雇用契約の反復でも、製造業への派遣を容認するという「大穴」があけられています。また、「登録型派遣の原則禁止」をいいながら、26の「専門業務」なるものは禁止の例外とされ、そこで働く100万人もの派遣労働者は、派遣のまま使い続けられるものとなっています。さらに、その実施を3年から5年先送りするとしています。これらは財界の抵抗に屈した重大な後退といわなければなりません。

 派遣法改正にあたっては、製造業派遣の全面禁止、登録型派遣の禁止の例外とされている「専門業務」の抜本的見直しなど、労働者保護法として真に実効あるものへの抜本改正をおこない、その実施は先送りでなく速やかにおこなうべきではありませんか。答弁を求めます。

中小零細企業の経営を守る政治への転換を

 いま一つは、中小零細企業の経営を守る政治への転換です。中小企業は、雇用の7割を支え、付加価値の5割を生み出す、文字通りの「日本経済の主役」です。ところが、倒産・廃業がふえつづけ、倒産によるものだけでも毎月1万人規模の雇用が奪われる事態が続いています。

 下請け中小企業は、大企業が空前の利益をあげているときにも、単価の買いたたきに苦しめられ続けてきましたが、一昨年の秋以降は、不況を理由にしたいっそうの買いたたきと、「下請け切り」が横行しています。ところが当局が、買いたたきとして認定し、その是正を勧告したのは、この5年間に全国でたった1件、事実上の野放し状態です。下請け関連法を厳正に適用して無法を一掃するための実効ある措置をとるとともに、大企業と下請け企業との公正な取引のルールをつくるべきではありませんか。

 大企業と小企業の労働者の賃金格差は拡大の一途をたどり、この10年余で格差は2倍にまで広がりました。これは、1999年の中小企業基本法の大改悪によって、「大企業と中小企業との格差是正」を投げ捨てた結果ではありませんか。政府は、中小企業憲章の制定とともに、基本法を改正し、格差是正を中小企業政策の根本にすえ、総合的対策をはかるべきではありませんか。

 町工場は、営々とした努力で、高度な技術を身につけ、経済を土台から支えている「日本の宝」です。一度その灯を消してしまったら、とりかえすことはできません。その灯を守りぬくために、仕事がなく倒産・廃業のふちに追い詰められている町工場にたいして、工場の家賃、機械のリース代、水光熱費など、固定費補助に踏み切ることがどうしても必要だと考えますが、いかがですか。

 労働者を「使い捨て」、下請け企業を「使い捨て」、巨額の富を独り占めにする。こんなやり方に未来はありません。大企業の巨額の内部留保と利益を、国民に還元させる政策への転換をはかり、国民の所得を引き上げることこそが、最大の景気対策であります。総理の見解を求めます。

社会保障――先送り、中途半端でなく、削減から拡充への転換を

 第二の転換は、自公政権の社会保障費削減路線がつくりだした数々の「傷跡」を速やかに是正することです。この点で、鳩山政権の姿勢に、国民の期待を裏切り、自らの言明にも背く一連の問題点が生まれていることを、指摘しないわけにいきません。

 鳩山政権は、後期高齢者医療制度について、廃止を4年先送りする方針を決めました。これは、差別制度を速やかに撤廃し、老人保健制度に戻すことを掲げていた、総選挙前の方針からの重大な後退です。しかも総選挙後公約してきた保険料の負担軽減策も実行せず、4月から全国平均で14・2%、8800円もの負担増をかぶせようとしています。国民の願いを裏切る“二重の後退”に怒りが広がっています。後期高齢者医療制度は、速やかな撤廃にふみだすべきではありませんか。

 鳩山政権は、障害者自立支援法によって押し付けられた「応益負担」をなくし、速やかに「応能負担」に転換すると公約し、政権交代後は、今年4月から、まず住民税非課税の障害者への「応益負担」をなくすと約束してきました。ところが来年度予算案では、そのために必要な額の3分の1しか計上せず、「応益負担」を中途半端に残しています。憲法にも福祉の理念にも反する「応益負担」は、公約どおり速やかに廃止すべきではありませんか。

 自公政権によって強行された医療費の窓口負担の引き上げに、どういう態度をとるかも問われています。サラリーマンの窓口負担を3割に引き上げた健康保険法改悪にさいして、当時の野党4党は「3割負担凍結法案」を共同提出しました。民主党は、提案者の一人として、「さらなる受診抑制を招く」と3割負担を厳しく批判しました。現に日本医療政策機構の調査によれば、年収300万円未満の世帯で、医療費が不安で具合が悪くても医療機関にかからなかった人が4割に達し、窓口負担の引き上げによる深刻な受診抑制が起こっています。総理は、この受診抑制の事実を認めますか。世界にも類のない高すぎる窓口負担は、軽減にむけてふみだすべきではありませんか。

財源政策の抜本的転換を――「二つの聖域」をなぜ続けるのか

 第三の転換は、旧来の政治が「聖域」としてきた軍事費と大企業・大資産家優遇という二つの分野にメスを入れ、庶民増税への不安を解消することです。このことを、私は、臨時国会の代表質問でも強く求めましたが、政府予算案は、そのどちらをも温存するものとなっています。

 軍事費は、4兆7908億円で前年度より162億円の増額とされています。とくに、米軍がグアムに建設する基地費用の負担は、前年度比4割増の472億円となっています。しかし、民主党は、グアムへの費用負担について、「国際的に前例がない」「理由と積算根拠が明らかでない」などと反対してきたではありませんか。自ら反対してきたグアムへの費用負担を大幅に増額するとはいったいどういうことか。総理に説明を求めます。

 大企業・大資産家への行き過ぎた減税も温存されました。とくに、株取引への課税が10%という異常に低い水準に下げられたままなのは、いったいどういう理由でしょうか。いま、アメリカでは、株取引への最高税率を25%から30%に引き上げることが提案されています。イギリスでは、株式配当への最高税率が32・5%から42・5%へと引き上げられます。金持ち優遇の税制が、貧富の格差の拡大に追い打ちをかけ、カジノ経済を助長したとの反省から、その是正がはかられているのです。額に汗して働く国民の税金よりも、ぬれ手で粟(あわ)の株取引で大もうけをしている大資産家の税金が低いというのは、あまりに異常です。アメリカやイギリスに学び、是正をはかるべきではありませんか。

 軍事費と大企業・大資産家を「聖域」としながら、消費税増税など庶民増税の議論をおこなうなど、絶対に国民の理解を得られるものではありません。わが党は、この二つの分野を「聖域」とする財源政策の抜本的転換を強く求めるものです。

米軍基地問題をどうやって解決するか――「抑止力」論と決別せよ

 最後に、米軍基地問題について質問します。

 さきの名護市長選では、辺野古(へのこ)への新基地建設反対を掲げた稲嶺進候補が勝利をおさめました。稲嶺新市長は、「辺野古の海にも陸にも基地を造らせない。その公約を信念を持って貫きたい」と明言しています。この選挙結果は、米軍基地の「県内たらい回し」――辺野古への新基地建設を押し付けてきた日米両政府への痛烈な審判であり、「基地のない沖縄」を願う沖縄県民の歴史的勝利であります。

 ところがこの結果に対して、平野官房長官は「斟酌(しんしゃく)しない」とのべ、総理も「ゼロベース」と繰り返しています。これは、辺野古案を除外するつもりはないということです。名護市民の審判を無視、否定するこうした態度は、断じて許されるものではありません。私は、政府が、選挙結果を厳粛に受け止め、名護市・辺野古への新基地建設を撤回することを強く求めるものです。

 普天間基地の苦しみは、県内はもとより、本土も含めて、どこへ移しても同じ苦しみであり、「移設条件つき返還」では問題は解決しません。問題解決の道が、「代替施設なき返還」――「無条件撤去」を、正面から米国に求める以外にないことはいよいよ明白であり、展望のない「移設先探し」はもうやめるべきです。

 だいたい総理自身、2005年7月26日の本会議の質問で、この壇上で、「普天間基地については、代替施設なき返還をアメリカに求めるべきであります」と、小泉首相に要求していたではありませんか。先日の衆院予算委員会の質疑で、わが党の赤嶺議員がこの事実を指摘し、「政権についたいまこそ、この主張を実行に移すべきではないか」とただしたのにたいし、総理は、「米軍との交渉をかんがみたときに、それは現実的に不可能だ」としか答えませんでした。総理にあらためて問います。「現実的に不可能だ」という根拠はいったい何ですか。総理になると「不可能だ」と態度を変えた理由は何ですか。しかとお答え願いたい。

 昨年12月の党首会談で、私が、普天間基地の無条件撤去を主張したのに対し、総理は、「海兵隊は日本の平和を守る抑止力として必要」とのべました。しかし、海兵隊とは、ベトナム戦争、アフガン・イラク戦争など、米国の先制攻撃の戦争で、まっさきに「殴り込む」ことを任務とした部隊であり、その実態は、平和のための「抑止力」でなく、戦争のための「侵略力」ではありませんか。だいたい「抑止力」というが、いったいどういう危険にたいする「抑止」なのか。具体的に説明していただきたい。沖縄県民にとって海兵隊とは「抑止力」でなく、事故と犯罪をもたらす「危険の根源」にほかなりません。「抑止力」の3文字で、「米兵におびえ、事故におびえ、危険にさらされながら生活を続け」る苦しみを、これ以上、沖縄県民に押し付けることは、もうやめるべきです。

 海兵隊は、沖縄にも、日本にも必要ない――この立場にたって、普天間基地の無条件撤去を求めて、米側と本腰の交渉をおこなうべきです。そのことを強く求めて、私の質問を終わります。



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