2010年2月4日(木)「しんぶん赤旗」
主張
衆参代表質問
これでは「いのち」が守れない
各党の代表質問が一巡しました。日本共産党からは衆院で志位和夫委員長、参院で市田忠義書記局長が質問に立ちました。
鳩山由紀夫首相は施政方針演説で、「いのちを守る」政治への転換を強調しました。
雇用と賃金がかつてなく落ち込み、多くの中小零細企業の倒産・廃業が続いています。深刻な経済危機から国民の暮らしを守るために、抽象的な言葉ではなく現実の政治でどう応えるのか―。首相の答弁が注目されました。
前首相とそっくり同じ
日本の景気悪化が欧米と比べても深刻なのは、長期にわたって大企業が国民の所得を吸い上げてきた結果、国内需要が弱り切っているためです。鳩山内閣は「新成長戦略」をアピールしていますが、問われているのは「成長」しても暮らしが少しも良くならないという経済のあり方そのものです。
大企業が過去最高益を更新していた時期にも、1人当たり賃金は低下し続けました。この10年で雇用者報酬が27兆円も減る一方、企業の内部留保は200兆円から400兆円に倍増しました。増加の半分は大企業のため込み金です。
政府も「新成長戦略」の中で、「構造改革」によって「選ばれた企業のみに富が集中」し、国民には「実感のない成長と需要の低迷が続いた」と分析しています。
大企業の巨額の内部留保は、労働法制の規制緩和による正社員の非正規雇用への置き換え、下請け単価たたきなど中小企業へのしわよせで積み上げられたものです。
政治に求められているのは「選ばれた企業のみ」に富を集中させている原因にメスを入れ、その富を社会に還元させることです。
2日の衆院本会議で志位委員長は、大企業の内部留保と利益を雇用と中小企業に還元させる政策への転換が必要だとただしました。これに対して鳩山首相は次のように答えています。
「内部留保の活用は本来、企業がそれぞれの状況に応じて経営判断を下すべきものだ」
「その上で、労働者の雇用と生活をしっかり守るように最大限努力することは重要だ」
「その上で」という接続詞も含めて、前政権の麻生太郎首相の1年前の本会議答弁とそっくり同じです。
麻生内閣でも、例えば河村建夫官房長官は、雇用の維持に内部留保を活用するよう「積極的に経営者団体などを通じて要請を強くしていきたい」と答弁しています。鳩山首相が、せめてその程度の姿勢も示せないのでは、「働く人々のいのちを守る」という首相の言葉には、実体がまったく伴っていないと言わざるを得ません。
明確な転換こそ
志位委員長が町工場の固定費への補助を求めたのに対しても、首相は「限られた予算の効率的な活用という観点からも望ましくない」と冷たく背を向けました。
市田書記局長が日本農業を破壊する対豪、対米の自由貿易協定を断念するよう迫ったのに対して、首相は「国際交渉は前向きに推進する」と拒否しました。
経済危機から国民の暮らしを守る焦点の問題で、自公政権からの転換が見られないのでは、何のための政権交代かと言われます。
「政治を変えたい」という国民の願いに応え、旧来政治から明確に転換することが求められます。
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