2010年2月17日(水)「しんぶん赤旗」
所得税法等「改正」案等についての
佐々木議員の質問
衆院本会議
16日、衆院本会議で日本共産党の佐々木憲昭議員が行った所得税法等「改正」案等についての質問は以下の通りです。
私は日本共産党を代表して所得税法等「改正」案等について質問します。
議題となった法案は、政権交代後、初めて出された本予算関連の国税法案であります。問われているのは、自民・公明政権の政策を抜本的に切り替えることができているのかどうかであります。
●庶民増税
まず税制の基本的な認識をお聞きします。
過去10年の税制改正を振り返ると、自民・公明政権は国民に対して増税を押し付け、他方で大企業・大資産家には減税をおこなう政策を採用してきました。これが、経済格差を広げる大きな要因になってきたことは明らかであります。
たとえば、年金生活者への課税強化をおこないました。公的年金等控除の縮小と老年者控除の廃止は、所得税・住民税の大増税となっただけでなく、保険料や各種高齢者サービスにまで影響し、「雪だるま式」の負担増を高齢者世帯に押し付けました。
また、自公政権は定率減税の廃止によって、賃金が減り続けている現役世代の可処分所得を大きく目減りさせ、生活不安を増加させました。
さらに消費税の免税点を年間売り上げ3000万円から1000万円に引き下げ、中小企業特例を縮小したことによって、小さな商店にまで消費税の実質負担が拡大し、多くの零細企業が廃業・倒産に追いやられました。庶民にとっては大増税と負担増が押しつけられ、暮らしと営業が大きな打撃を受けたのであります。
●大企業減税
その一方、大手企業はどうか。研究開発減税が繰り返されるなど、次々と法人税減税がおこなわれてきたのです。これが、大企業の税引き後利益を大幅に増やし、内部留保金や株式配当を空前の規模に増大させる要因となりました。
さらに証券優遇税制により、所得制限もなく株式譲渡や配当所得への税率を一律10%に軽減したのです。その結果、一部の資産家は億単位で減税の恩恵を受け、所得税の実効税率は「累進性を喪失している状態」となってしまいました。
自民・公明政権が推し進めてきたこのような税制「改正」は、格差を拡大し、貧困を広げる要因のひとつとなったのです。
菅直人財務大臣は先日の本会議の答弁で、自公政権が進めてきた「構造改革」路線について、「幾つかの政策が、結果として格差拡大するだけではなくて、日本の経済の成長路線への回復に必ずしも寄与していなかった」との認識を示しました。この「構造改革」の流れを根本的に切り替える決意があるのかどうか、鳩山総理の基本的認識をうかがいたい。
●消費税
次は消費税の問題です。
菅財務大臣は、消費税を含む抜本的な税制改定の議論を3月にも始める意向を繰り返し示しました。しかし鳩山総理は、昨年8月、選挙中の党首討論会で「4年間は上げる必要はない」と述べていたのです。
昨年9月の「3党連立政権合意書」(09年9月9日)では、消費税率について「現行の消費税率5%は据え置くこととし、今回の選挙において負託された政権担当期間中において、歳出の見直し等の努力を最大限おこない、税率引き上げはおこなわない」としています。
そこで確認します。消費税は4年間上げないという方針に変わりはないか、明確にお答えいただきたい。
4年間上げないのであれば、自公政権が昨年の税制「改正」法に書き込んだ「付則104条」をどうするかが問われます。ここでは2011年度までに消費税の増税法案を国会に提出し成立させることが書き込まれているからです。
藤井裕久前財務大臣は、昨年秋の臨時国会で、私の質問に答え、この付則は「修正するのがスジ」と答えました。菅大臣はどのようにお考えでしょうか。この「付則104条」は撤回・削除すべきではありませんか。そのうえで応能負担原則、生計費非課税原則に沿って、税制の民主的改革をすすめるべきではありませんか。
●所得税
政府の「平成22年度税制改正大綱」は、今後の税制抜本的改革の指標とされています。そこでうかがいたい。
「税制改正大綱」では、所得税の現状について、所得再分配機能や財源調達機能が低下しているとの認識を示しています。所得税率は累進性を持っていますが、実効税率は一定所得以上の高額所得者になればむしろ下降する状態となっており、改正は喫緊の課題であるとしています。累進性を取り戻すには、高額所得者に応分の負担を求め、所得税の最高税率を引き上げること、金融所得などを総合課税とすることがもっとも即効性があり有効であると考えます。
リーマン・ショックを契機にアメリカやイギリスなどでは、すでに所得税の最高税率や配当の税率の引き上げを実行しています。日本では、なぜ実行できないのか、その理由を述べていただきたい。
●所得控除
「税制改正大綱」では所得控除の抜本的な見直しが提起されています。そもそも所得控除、とりわけ人的控除は、「納税者本人とその家族の最低限度の生活を維持するための費用には課税しない」という考えにもとづくものです。日本の「最低限度の生活費」について菅大臣はどのようにお考えでしょうか。
これまで、日本の課税最低限の水準は国際的に低いといわれてきましたが、大臣の認識をうかがいます。
●子ども手当
こんどの税制改正では、子ども手当実施や高校授業料無償化の財源に充てるため、扶養控除のうち15歳以下の子どもを対象とする年少扶養控除と16歳から18歳までの特定扶養親族に対する特定扶養控除の上乗せ部分が廃止されます。
この結果、18歳以下の子どもを持つ子育て世代は、11年1月から所得税、12年6月からは住民税が増税となります。民主党は、すべての世帯で手当等の支給との差し引きで負担が減ると説明していますが、今のままでは、授業料負担の少ない定時制・通信制の高校生や特別支援学校にかよう子どものいる世帯および、すでに授業料の減免を受けている世帯では、負担増となるケースも発生するのではありませんか。さらに、先送りとなった配偶者控除も廃止となれば、15歳以下の子どものいる世帯でも負担増となるケースも出てくるのではないですか。お答えいただきたい。
また、所得税・住民税の増税は、国民健康保険の保険料や保育料など他の制度の負担増にはね返るため、実質的に負担が増える世帯も出てくるのではありませんか。この点をどう考えているのか、うかがいます。
●家計消費
日本経済の正常な発展のためにも、いまこそ家計負担を軽減し家計消費を拡大することが求められています。過去約10年間の平年度ベースの負担増の累積は実に13兆円にもおよんでいるのであります。庶民増税など政府の政策により国民負担がこれだけ増えれば、可処分所得は大幅に縮小し、家計の消費が大きく冷え込むのは当然ではないでしょうか。
このため日本経済は消費の落ち込みなどを主因とする内需の低迷と景気悪化をまねき、需給ギャップは30兆円以上に広がりました。すでに、アメリカやイギリスでは、ブッシュ減税の廃止、付加価値税の期限付き引き下げなどが行われ、不公平税制の是正や家計を直接支援する施策が実施されています。
消費の落ち込みを打開するには、家計を温める施策への転換が必要であります。そのためには、過去の負担増を国民に戻す政策の抜本転換が必要です。総理は、その必要性をどのように認識しているか、答弁を求めて質問を終わります。