2010年2月20日(土)「しんぶん赤旗」
党大会・「政治とカネ」・経済危機・普天間問題
朝日ニュースター 志位委員長が語る
日本共産党の志位和夫委員長は19日放映のCS放送・朝日ニュースター番組「別刊! 朝日新聞」に出演し、キャスターの早野透氏(朝日新聞編集委員)のインタビューに答えました。テーマは、日本共産党第25回大会、「政治とカネ」の問題、経済危機打開の道筋、米軍普天間基地問題など多岐にわたり、濃密な1時間のやりとりとなりました。
党大会に注目
「今の時期は一つの転換期ですね」(早野氏)
「(4年前の党大会決議には)自民党政治のゆきづまりはもう“危機的だ”と書かれている。予言的でしたね」。早野氏は冒頭、手元に置いた『25回大会決定集』を読みながら日本共産党の情勢分析をこう評し、「党大会にはJA中央会の専務理事の方も(来賓あいさつに)きたそうで。『保守の基盤』といわれたところが共産党大会にきたのはどういうことなんでしょうか」とたずねました。
志位氏は、昨年10月のJA全国大会に初めて招待され、あいさつでのべた党の農業政策に共感の声が寄せられたことや、全国各地で党と農協、森林組合、医師会などとの懇談がもたれるようになった変化を詳しく紹介。「自公政権の壁が崩れ、見晴らしがよくなって“全方位”で見ると、一番近いところに立っていたのが共産党だったという感じです」とのべると早野氏は、「いまの時期は一つの転換期ですね」と感想をのべました。
さらに早野氏は、「党大会の一番の基本的ないまの政治への見方は『過渡的な情勢』ですが、それはどういう意味ですか」と問いかけました。
志位氏は、自公政権退場で、政治の大きな前向きの変化がおこったが、他方、自民党政治に代わる新しい政治をどうするかは国民は探求の途上にある、新政権にもそのことは反映していて、部分的には前向きの変化があるが、外交はアメリカ従属、内政は財界中心という「二つの異常」から抜け出せていない、そういう状況を踏まえて「過渡的な情勢」と特徴づけたと説明。そして、「国民が新しい政治を本格的に探求する時代が始まりました。共産党は前向きな変化を大いに促進する立場で奮闘します。とくに対米従属と財界中心から抜け出す大きな仕事をやる。そして、『過渡的な情勢』というのは悪い方向にいく危険もはらんでいますから、そういう逆流は許さない仕事もしっかりやります」と表明しました。
「政治とカネ」
国会の到達点踏まえ真相究明を
鳩山由紀夫首相、小沢一郎民主党幹事長をめぐる「政治とカネ」の問題で、早野氏は「かつての自民党の悪いところを引きずっている」と問題視しました。
志位氏は、小沢氏の資金管理団体の土地取引をめぐる事件では、公共事業を受注したゼネコンからの闇献金疑惑や、東北地方の公共事業受注で小沢事務所が「天の声」として強力な影響力をもっていた疑惑があると指摘。「公共事業は国民の税金でやる仕事ですから、その一部が還流していたことになると、税金を食い物にした疑惑です。かりに刑事的な訴追の対象にならないにしても政治的・道義的責任が問われる。国会の責任で究明すべきです」と力説しました。
これに対し早野氏は「不起訴だからといってこれで一件落着とは到底思えないし、ジャーナリズムもちゃんといろいろ調べていかなければ」。
志位氏は、1976年のロッキード事件では、国会が政治的・道義的責任の有無も含めて国政調査権を発動して真相究明をはかることが確認されたことにふれ、「いまもそういう立場できちんと各党が合意し、真相究明へのレールを敷くべきです」とのべました。
経済危機打開
内部留保と利益を社会に還元せよ
早野氏が次に注目したのが、経済危機から国民の暮らしを守る政治の責任を真正面からとりあげた志位氏の衆院予算委員会での質問(8日)です。
「すごく面白い、なるほどなと思ったのは、日本だけGDP(国内総生産)が伸びない。それはなぜかを考えると雇用された人にわたるお金が減っているわけですね。ほかの先進国はそれなりに伸びている」。早野氏はこうのべて志位氏の質問のポイントを、▽大企業の内部留保を社会に還元する▽“非正規社員から正社員への雇用転換”をすすめるルールをつくる▽大企業と中小企業との公正な取引ルールをつくる――ことだったと解説。志位氏は、大企業の内部留保がこの10年間で142兆円から229兆円へ急膨張した背景を指摘しました。
志位 二つ仕掛けがありましてね。一つは、雇用の分野で、リストラ、賃下げ、非正規雇用への置き換えをやって、労働者から搾り上げた。もう一つは、下請け中小企業をいじめにいじめて、単価を引き下げて、搾り上げた。この二つの搾り上げで過剰な内部留保をつくったわけです。
私たちは、この過剰な内部留保を全部崩せというつもりはない。過剰な部分を取り崩して社会に還元する。とくに雇用と中小企業に還元する政策転換が必要です。還元させるためには、大企業にカネを出せといっても出てきませんから、社会的な規制のルールをつくっていく。たとえば労働者派遣法を抜本改正して派遣社員を正社員にしていく。下請け中小企業についていいますと、下請代金法と下請中小企業振興法という二つの法律があるんですが、両方ともまともに機能しているとはいえません。無法が横行しています。それぞれをしっかり実効あるものにしていく。そういうルールをつくって、大企業がため込んだお金を吐き出させる。そして吐き出させるだけでなく、大企業に過剰なお金がたまらないような経済システムにしていく。つまり、もうけはちゃんと社会に還元されるような経済のシステムにつくり変えていく。それをやろうではないかというのが私たちの提案なんです。
早野 志位さんにそういうお話をうかがうと、「あっ、そうなんだよね」と思うんですけれども、これがなかなか転換していかない。共産党に頑張ってもらわないといけないんですけれども、もう少し頑張りようがありませんか。
志位 一昨日(17日)、鳩山首相との会談をやったんですが、その場でこの問題を提起しましたら、鳩山首相も、「内部留保については、検討すべきだと思う。課税するという方法も考えられる」ということも言っていましたよ。巨額の富を一部の企業だけが独り占めをしてしまっているシステムは何とかしなければならないというのは、これは多くの人々が認めざるをえなくなってきたのではないですか。
中小企業問題
政治の力で下請法を実効あるものに
中小企業問題でもやりとりになりました。
志位氏は、下請代金法で禁じられている「買いたたき」で公正取引委員会がこの5年半で行った勧告処分がたった1件、「下請け切り」での勧告処分にいたっては0件という実態を指摘しました。
志位 なんで取り締まれないのか。いまの仕組みは中小企業の告発(申告)、あるいは書面調査を待って(公正取引委員会が)動き出すという格好になるんですね。
早野 とてもできないな。昔から系列とかいわれていたけれども、依然としてそういうことなんですね。
志位 (仕事を)切られちゃうから親企業に不利なことは書けないんです。よほどの覚悟がないかぎりできないんですね。
早野 であれば、政治の力でやらなくちゃいけない。
志位氏は、そのためにも政治の力で下請2法(下請代金法、下請中小企業振興法)を実効あるものにする重要性をあらためて強調。さらに、町工場を倒産・廃業の危機から守っていくために、工場の家賃や機械リース代など固定費の直接補助に踏み切るべきだとのべ、この問題では17日の党首会談で鳩山首相が機械のリース代支援について「検討する」と表明したことを紹介しました。
普天間問題
無条件撤去で米国と交渉を
普天間基地問題で迷走を続ける鳩山政権の姿勢について早野氏は「どういうふうに大きくとらえたらいいでしょうか」と質問しました。
志位 政府がゆきづまっているのは、普天間基地の移設先を決めなければという「移設条件付き返還」にしがみついているからです。この枠の中から出ようとしないから答えが出てこない。つまり(「移設条件付き返還」論は)普天間を返す代わりにどこか他のところを差し出しましょうと(なってしまう)。ですからこの問題は「移設先」探しをいくらやったって絶対にゆきづまるしかないんです。
早野 それはそうだなあ。
志位 (沖縄)県内のどこにもっていったって、もっていく場所はないでしょう。じゃあ日本の本土のどっかにもっていけるかと。みんな反対ですよ。ここは腹をすえて無条件撤去というところに行くべきです。それで沖縄全体が団結する、本土も連帯する、その世論をバックにしてアメリカと堂々と交渉をやるべきです。
早野 たしかに普天間基地が無条件になくなれば、それはそれで日本国民はいいかなと思ったりもするんですけど、端的な話、やっぱり海兵隊が日本にいなくちゃ危ないというところに逢着(ほうちゃく)するわけだけれども。
志位 私たちが無条件撤去ということを要求すると、いまの政権側は、そうはいっても海兵隊は日本の平和を守る「抑止力」だというんです。
早野 北朝鮮もなんだかぶっそうだし、中国だって軍事力を増強してるじゃないかと。
志位 そこまではっきりいえなくても、漠然と抑止しているということをいうわけです。しかし、実際に沖縄の海兵隊が果たしている役割というのは、ベトナム侵略戦争。
早野 イラクにもいってますな。
志位 アフガン戦争、イラク戦争。すべて、日本を拠点にして殴りこんだわけでしょう。だから私は「侵略力」だといっているんですけど、それが実態じゃないですか。日本を守る任務を与えられた海兵隊なんか、一兵たりともいませんよ。
早野 うーん。
志位 それが実態なんだから、やはり海兵隊は、沖縄はもとより日本のどこにも必要ないという立場に立って交渉する。だいたい海兵隊に基地を提供している国は世界に日本しかないんですから。
早野氏は「『日米同盟』という言葉を民主党も平気でいっているが、僕ら長い政治記者は、『日米同盟』なんていう言葉が出てきたときはみんなびっくりした。鈴木(善幸)内閣のころは外務大臣が辞めたりしたような出来事もあった」と振り返りました。
志位氏は「(軍事同盟は)日本では普通の言葉になっているが、世界では普通の言葉じゃないんですよ」とのべ、世界の軍事同盟で実態的に機能しているものは、NATO(北大西洋条約機構)、日米、米韓、米豪の四つしかないこと、これらの軍事同盟のもとにある国は世界人口の16%にすぎないことを示し、外部に仮想敵をもたない地域の平和共同体が広がっている時代になっているとのべました。
また日米両政府がいう「対等な日米関係」という見方についても、在日米軍の実態、日米地位協定による特権、日本国憲法へのあからさまな改定要求のどれ一つをとっても対等な国家間の関係ではないとのべました。
法制局長官の答弁禁止
歯止めない解釈改憲に
早野氏は、民主党が「政治主導」の名で内閣法制局長官の国会答弁を禁止しようとしている問題について、「勘ぐれば内閣法制局長官が一定の憲法解釈で世界に出ていって戦争しちゃいけないという歯止めにもなっていたが、政治主導で(法制局長官が)答弁するなと。明日からは海外に行ってもいいんだみたいなことになりかねないという危ぐはもちろんある」とのべました。志位氏は次のように応じました。
志位 これは非常に大きな問題ですね。とくに官僚答弁の禁止ということのなかで、小沢さんは内閣法制局長官の答弁を禁止するというところに非常に大きな執念を燃やしているところが重大です。これは本当に危険な道なんです。
もともとは内閣法制局というのは、私たちからすればあまり芳しくないことをやってきたわけです。すなわち憲法違反の自衛隊を無理やり合憲だと理屈を立てる。イラクやアフガンへの派兵も合憲だと理屈を立てる。いろいろへ理屈を立てて、海外派兵を進めてきた歴史があるんですね。しかしその内閣法制局も、彼らなりの一つの整合性をもって答弁しなくてはなりませんから、いくらなんでも憲法9条に照らして、ここから先は無理だということをいってきたのです。
内閣法制局によれば、9条があるためにできないことが三つある。一つは、海外に武力行使を目的にして派兵することはできない。二つ目は、集団的自衛権の行使はできない。三つ目に、国連軍にも参加できない。こういうことをいってきたのです。これがどうしても邪魔だということで口をふさいじゃおうって動きは、とても危険です。つまり歯止めのない解釈改憲になる。これは絶対に反対です。
最後に「民主党政権を一言でいうと」との質問に志位氏は、「国民は『政治を変えてほしい』という期待を寄せたと思うんですけれど、現状はかなり多くの部分で期待を裏切っていると思いますね」と答えました。