2010年3月3日(水)「しんぶん赤旗」
大企業の内部留保 大資産家優遇税制
政府の姿勢 変化
共産党が論戦で動かす
首相「具体的検討したい」
2日に衆院通過した来年度予算案。日本共産党は組み替え要求も提出して反対する一方、この間の国会論戦では、日本共産党のかねてからの主張が、政府の姿勢に大きな変化をつくりだしてきました。「大企業・大資産家に応分の負担を」―。暮らしの危機を打開するためになくてはならない課題をめぐる新しい動きです。(清水 渡)
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日本共産党の志位和夫委員長は1月18日の党国会議員団総会で、「大企業に国民生活と日本経済に対する社会的責任を果たさせる」ことを提起。政府予算案について「大企業と大資産家に対する優遇税制は温存する」ものだと批判しました。
衆院本会議の代表質問(2月2日)で、志位氏は「『選ばれた企業のみに富が集中』するシステムをあらため、大企業の巨額の内部留保と利益を、雇用と中小企業に還元させる政策への転換が必要」「額に汗して働く国民の税金よりも、ぬれ手で粟(あわ)の株取引で大もうけをしている大資産家の税金が低いのはあまりに異常」だと迫りました。
一方、鳩山由紀夫首相は、施政方針演説(1月29日)で「命を守りたい」との「理念」を連呼しましたが、財源について、大企業・大資産家に負担を求める立場は一切、示しませんでした。代表質問での志位氏の提起に対しても「内部留保の活用というものは本来、企業がそれぞれの状況に応じて経営判断を下すべきもの」と冷たく背を向けるだけでした。
しかし日本共産党との論戦の中で、鳩山内閣の姿勢に変化が見られました。内部留保の問題では、8日の衆院予算委員会での議論が出発点です。
志位氏は大企業の内部留保が10年間で142兆円から229兆円へと急膨張する一方、労働者の雇用者報酬は279兆円から262兆円に落ち込んだことをグラフで示して、システムの転換を強く求めました。鳩山首相は「グラフを拝見すると、内部留保が大変にふえているという実態はあると思う。それをどうするか、一つの(政治的な)判断はあり得るのではないか」と答弁したのです。
さらに鳩山首相は志位氏との党首会談(2月17日)では、「大企業の内部留保を還元させる具体的な方法を検討してみたい」とまで踏み込みました。
さらなる運動で転換を
財源論では大資産家優遇税制の問題で変化が見られました。
2月12日の衆院予算委員会では日本共産党の佐々木憲昭議員が証券優遇税制の問題を取り上げました。同税制は株式譲渡益や配当にたいする課税を、20%の本則から10%に軽減しています。自公政権の時代に始まったこの制度について、鳩山首相は2月2日の衆院本会議では、「大変経済が今厳しいという現状があり、10%に軽減をしている」と述べ、継続を当然視していました。
しかし佐々木氏が、鳩山首相自身がブリヂストン株だけでも7年間で約5200万円もの減税を受けているとの試算を示し、証券優遇税制の是正を求めると、鳩山首相は「優遇税制が適当か新政権でもしっかりと議論はされるべきだ」とのべざるをえなくなりました。
鳩山首相はその後、志位氏との党首会談で、証券優遇税制の是正、所得税最高税率の引き上げについて、政府税調での「検討課題」だと明言しました。
所得税の最高税率については2月19日の衆院財務金融委員会で佐々木氏の追及に菅直人財務相が「日本では最高税率を下げてきたが、必ずしもそういう考え方だけでは日本経済全体が持ち上がらなかった」と引き上げ検討を表明。証券優遇税制についても、2月24日の衆院財務金融委員会で峰崎直樹財務副大臣が「できるだけ早く(10%から20%に)引き上げたいという問題意識は共有している」と表明しています。
消費税増税を許さず、生まれてきた変化を現実の転換に結びつけるため、さらなる論戦と国民の運動が重要になっています。
「応分の負担を」の声次々
衆院予算委公聴会
変化の動きは政府内にとどまりません。2月24日におこなわれた衆院予算委員会公聴会での公述人の意見は―。
「税、社会保障を通じた公正な所得再分配の強化、労働分配率の向上、教育の機会均等の保障、さらに、公正で透明な企業間取引などが不可欠」(逢見直人連合副事務局長)
「(大企業がもつ)過剰資金に対して適切な課税を取る」「財政(学会の)関係者からすると、(所得税の)累進強化というのは…ある意味で常識的なこと」(二宮厚美神戸大学大学院教授)
「税制改革に際しては、例えば所得税の累進率や控除額の見直し、相続税の強化…検討の余地は多い」(高橋伸彰立命館大学教授)
「(法人税を)40%に引き上げる」「所得税の最高税率を40(%)だったのを50(%)に引き上げる」(菊池英博日本金融財政研究所所長)
ニュアンスや具体策の違いはあれ、ほとんどの公述人が「能力に応じた負担」に言及しました。