2010年3月5日(金)「しんぶん赤旗」
論戦ハイライト
高い保険料が命奪う国でいいか
国保 負担増路線 転換こそ
小池政策委員長の質問
日本共産党の小池晃政策委員長が行った4日の参院予算委員会での質問。高すぎる国民健康保険(国保)料がもたらす深刻な実態に切り込み、解決の方向を明確に示しました。全国で大きな反響を呼んだその質問とは――。
所得再分配の役割果たせ
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小池氏は冒頭、政府が昨年、日本の相対的貧困率を初めて発表し、1997年以降最悪となったことを挙げました。
そして、その原因について、「雇用破壊による、非正規労働者の低賃金などの分配問題に加え、所得の“再分配”においても税と社会保障制度がその役割を果たしていないためだ」と強調しました。
経済協力開発機構(OECD)によると、日本は、税や社会保障の負担を入れない市場所得での貧困率(16・5%)は他国に比べ低い一方で、税や社会保障の負担を加えた可処分所得の貧困率(13・5%)は高率です。
小池 本来、税や社会保障には、貧富の格差をなくし貧困率を減らす役割があるにもかかわらず、日本ではそれらが発揮されていない。自公政権のもとでの社会保障の負担増がこうした事態を生み出した。この根本的転換が求められているのではないか。
鳩山首相 税と社会保障がむしろ貧困率を高くしている事実は認めなければいけない。解決にむけ努力する必要がある。
負担軽減へ国庫負担増を
その上で、小池氏が重い社会保障負担の典型として取り上げたのが国民健康保険問題です。
2008年度の国保料の収納率は前年度比2・14ポイント低下の88・3%と、国民皆保険制度となった61年以降最低となりました。
小池氏はズバリ、「原因は高すぎる保険料にある」と指摘し、主な政令指定都市の保険料をパネルで示しました。
小池 所得300万円の4人家族で40万円もの保険料、これが払える保険料の水準なのか。
首相 所得300万円の方がその1割以上の国保料を払わなければならないのは、率直に申し上げて相当高い。
小池氏は「(国保料が自治体ごとに決まるからといって)自治体だけにこの責任を押し付けることは許されない」と述べ、高い保険料の原因が国保会計に対する国庫負担を引き下げてきたためだと力説しました。
加入者の保険料のほか、地方と国の負担からなる国保。84年には自治体の国保会計の49・6%を占めていた国庫負担が2007年度には25%にまで下がり、その結果1人当たりの保険料は2倍以上になっています。
小池氏は、全国調査した結果、例えば新潟市では前出のケースで今春、約3万円も保険料が上がることや、東京23区では平均7・2%の値上げとなることを強調。厚労省の国保収納率向上アドバイザーも「公費によって、国保を少しでも福祉の基本としてのあるべき姿に近づける努力をすべきではなかろうか」と指摘していることを示し、鳩山首相に保険料の引き下げのための手だてを講じるよう求めました。
鳩山首相は「財政の厳しい状況の中、簡単な話ではないが、低所得者の方々の保険料になんらかの知恵をあみだすことが必要ではないか」と答弁しました。
そこで小池氏は、08年の国会で、当時は野党・民主党の鈴木寛議員(現文科副大臣)が市町村国保について「9000億円弱の予算措置をわが党が政権をとった暁にはさせていただく」などと答弁したことを指摘。民主党が政権についたにもかかわらず、後期高齢者医療制度の廃止も先送り、市町村国保への財政措置も先送りになっていることを批判し、正面から首相に迫りました。
小池 高すぎる国保料の負担軽減に踏み出すのかどうか、政治の姿勢が問われている。その意思はあるのか。
首相 この問題は看過できない。財源の確保に努力したい。
小池氏は国保だけでなく中小企業の協会けんぽにも同様の問題があることを指摘。4月からは平均4万3000円の大幅引き上げが計画されているとして「労働者だけでなく、中小企業の事業主にも重い負担増だ。『国民生活が第一』といいながら、負担増などもってのほかだ」と強調しました。
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保険証取り上げ自殺者も
次に小池氏は、自治体が、保険料を払えない人たちから保険証を取り上げる問題を追及。全日本民主医療機関連合会(民医連)が実施した全国調査をもとに札幌市の60代男性(大工)のケースを紹介しました。
この男性は、保険証を取り上げられたため、おなかに痛みを覚えるも病院に行かずにいた結果、体重が激減、知人の紹介で民医連の無料低額診療を受けたらすい臓がんと判明し、間もなく全身に転移して亡くなりました。さらに、保険証の取り上げと度重なる督促で自殺にまで追い込まれたケースもあります。
東京都板橋区の29歳の男性には、差し押さえもありうるとした厳しい督促状が毎月のように届き、窓口で10割負担を強いられる資格証明書が送られた1カ月後、自ら命を絶ちました。
小池氏は男性に届けられた督促状の束を首相に示しながら――。
小池 首相、これを見てください。こんなことはあってはならない。保険証の取り上げが市町村の義務とされたのは、97年の自社さ政権の時だ。当時、民主党にいた首相も賛成した。それ以来、こうした事態が全国に広がったのだ。胸の痛みを感じないのか。
首相 痛みは当然、人間であれば感じる。しかし取り上げる根幹の制度は廃止できない。
小池氏は、保険証の取り上げや資格証明書の発行が増加しているのに、保険料の収納率は下がっている事実を示し、「保険料の滞納対策としても破たんしている」と強調しました。
さいたま市では、医療保険の継続を優先させ、滞納者には直接会って相談していることを紹介した小池氏。「その結果、資格証明書の発行はゼロになっている。こういう自治体の努力を後押しすることが国に求められている」と迫りました。
小池 「友愛政治」「いのちを守る」というのなら、保険証の取り上げなどもうやめていこうじゃないですか。
首相 さいたま市の状況もよく勉強させてもらいたい。
小池氏は「こうした問題を正すのが新しい政権の責任だ。しっかりやっていただきたい」とのべ、しめくくりました。
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