2010年3月10日(水)「しんぶん赤旗」
輸入米のカビ毒検査 民間大企業に丸投げ
紙議員が農水省文書入手
輸入米(ミニマムアクセス米)のカビ毒検査など、現在、地方農政事務所が行っている政府米の保管・販売業務を、民間大企業に丸投げする―。輸入米などの安全性に対する国の責任を放棄する計画が国民に隠れて進められています。日本共産党の紙智子参院議員(党農林・漁民局長)が入手した、農水省の内部文書で明らかになりました。(今田真人)
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「取扱注意」や「読後廃棄」と書かれた文書には、今年10月以降に実施予定の農水省の「機構改革」に伴い、国産米(政府備蓄米)や輸入米の販売・保管・運送などの一連の業務を「民間事業体」に包括的に委託すると明記されています。
この「民間事業体」の資格について(1)全国各地に一定数の支店・営業所を有する(2)10万トン単位で輸入米を取り扱う―などと記述。食品大企業や大商社などを想定しています。
文書は毎年度77万トン輸入しているミニマムアクセス米について「民間事業体」からの「需給情報(時期別・輸入希望港別の輸入希望数量等)を踏まえ」、政府が輸入量を決定すると記述。年間77万トンを超える輸入も視野にいれています。
一昨年秋の汚染米事件の反省から、農水省は倉庫に保管している加工食品用の輸入米について、厳格なカビ目視・カビ毒検査を実施してきました。
また、加工食品用輸入米の国内業者への販売に際しては、細かく砕く加工(変形加工)を施し、主食米への不正な転用や国産米への「偽装」を防いでいます。
これらの業務を「民間委託」して、「食の安心、安全」を守ることができるのか、重大な懸念が生まれています。
地方農政事務所を廃止するなどの農水省「機構改革」は、鳩山内閣がいまの国会に農水省設置法の「改正」案として提出しています。しかし、この「民間委託」計画は、同「改正」案に盛り込まれていません。
根拠法について、紙氏の問い合わせに農水省は当初、1923年(大正12年)に出された「勅令による」(消費流通課)と説明。紙氏の「旧憲法時代の勅令は現憲法下では無効だ」という批判に、法的根拠を説明できなくなっています。
汚染米の教訓無視
紙智子参院議員の話 一昨年の汚染米事件では、農水省は国民の厳しい批判を受け、輸入米に対する厳しい検査を同省の責任で実施してきました。
エサ用なら汚染米を一部焼却せずに販売できるとする「逃げ道」の新方針も、日本共産党などの追及で撤回させ、カビ毒汚染米はすべて焼却処分するシステムも確立させました。
地方農政事務所の職員は、そうした厳しい検査などの実施の先頭に立ってきました。そういう公務員として当然の業務を民間大企業に丸投げするのは、汚染米事件の教訓を無視する暴挙です。
しかも、この計画を国民に隠れて進め、「勅令による」という時代錯誤の説明をするなど、二重、三重に許せません。
鳩山内閣と与党は、こうした計画を撤回し、国民の「食の安全」に責任を持つ姿勢に立ち返るべきです。