2010年3月12日(金)「しんぶん赤旗」
経済危機から暮らしをどう守るか
日本共産党が経済懇談会
雇用・中小企業・農林漁業・社会保障・財源
志位委員長が「五つの提言」
経済危機のもとで悪化する国民生活を守り、日本経済を健全な発展の軌道に乗せる道はどこにあるか―。日本共産党は11日、経済懇談会「経済危機から国民のくらしをどう守るのか」を党本部で開催しました。労働・農業・中小企業・医療・女性・青年など各分野の幅広い50団体の代表120人が参加し、活発に意見交換しました。志位和夫委員長は国会論戦や各団体との懇談を踏まえ、「五つの提言」を報告。参加者からは、営業とくらしの現場の切実な要求や、提言への共感がこもごも語られました。司会は、小池晃政策委員長が務めました。
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志位氏は、一昨年秋以来の日本の経済危機が世界でもとくに深刻なのは、日本がリーマン・ショック前の10年間で主要7カ国中唯一、GDP(国内総生産)が伸びていない「成長の止まった国」、雇用者報酬が落ち込む「国民が貧しくなった国」になっているからだと指摘。「ごく一握りの大企業が富を独り占めにする経済システム」を改革しないと明日はないとして、「大企業の過剰な内部留保と利益を国民の暮らしに還元させる」ことを提起。共産党の主張に首相も「具体的な方法を検討してみたい」と明言するなど反響がひろがっていると紹介しました。
そのうえで、志位氏は「ルールある経済社会」へ「五つの提言」をおこないました。
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雇用
第一は「人間らしい雇用」のルールをつくることです。非正規から正社員への雇用転換の要として「労働者派遣法の抜本改正が必要だ」と強調し、日本共産党の修正案を紹介しました。一方、政府の派遣法改定案は「二つの大穴」があいていると指摘し、「派遣法の抜本改正を勝ち取り、『正社員が当たり前』の社会をつくろう」と呼びかけました。
また1997年を頂点に、勤労者世帯の収入が減り続け、この1年間だけでも17万6000円減少していることを紹介。「奪われた所得を取り戻すことなしに、暮らしも経済もよくならない」として大幅賃上げを求めるたたかいへの連帯を表明しました。
中小企業
第二は、大企業と中小企業との公正な取引のルールをつくることです。大企業と中小企業の間に賃金格差が広がっている原因の一つに「下請け単価が際限なく切り下げられ、従業員の給料も払えないことがある」と告発。「政府の責任で大企業、親企業の無法を一掃し、公正な取引ルールをつくる必要がある」と強調しました。
また、「中小企業を日本経済の根幹」に位置づける中小企業憲章にもとづく総合的振興策の必要性や、町工場への固定費補助などの緊急の対策を力説。首相に「機械のリース代の支援は検討する」と約束させたことを実現したいとのべました。
農業再生
第三は、農林漁業の再生に取り組み、食料自給率の本格的な向上に取り組むことです。
志位氏は「米価をはじめ農産物価格の暴落が続き、『とても続けられない』という声が全国どこでも寄せられる」と告発。民主党政権の「戸別所得補償」制度の問題点が噴出しているとして、(1)所得補償の水準があまりに低い(2)転作作物への補助金を大幅に減額しようとしている(3)輸入自由化推進と一体の方針であること―をあげました。これに対し、共産党が主張する農業再生のための二つの柱―(1)価格保障を中心に、所得補償と組み合わせ、生産コストの保障をしっかりおこなう(2)歯止めのない輸入自由化をやめ、国境措置を維持・強化し、食料主権を保障する貿易ルールをつくる―がいよいよ重要になっていると述べました。
社会保障
第四は、社会保障を削減から拡充に転換することです。
志位氏は、日本が税金と社会保障による相対的貧困率の削減効果が最も小さい国になっていることを紹介。「自公政権による社会保障削減政策がつくった傷跡を、すみやかに是正することが急務だ」と強調し、とくに「医療崩壊」を立て直す四つの緊急課題―(1)後期高齢者医療制度のすみやかな撤廃をはかる(2)高すぎる医療費の窓口負担を引き下げる(3)国の責任で高すぎる国民健康保険料を引き下げ、保険証の取り上げをきっぱり中止する(4)診療報酬の抜本的増額で医療崩壊を立て直す―を提起しました。
共産党の国会論戦で首相から前向き答弁を引き出していることも紹介し、「どれも民主党が公約しながら、後退している問題だ」とのべ、実現を迫ることを呼びかけました。
財源
財源問題では、軍事費と大企業・大資産家優遇税制にメスを入れる必要性を強調。10年度予算案で米軍関連経費が史上最高となっていること、所得税負担率も合計所得金額が1億円を超えると低下するという逆累進となっていることを紹介しました。
そのうえで、消費税増税問題に言及。増税勢力による「ヨーロッパの消費税は日本より税率が高い」という議論について、税の総合的効果を示す数値を紹介し、日本は現在の消費税率でも、所得課税と合わせた税全体としても格差を拡大させており、主要国で最悪の数値となっていることを示し、「これ以上税率を上げたら、ますます貧困と格差が広がる」と告発し、消費税増税反対の世論と運動を呼びかけました。
活発な発言
懇談では、深刻な雇用状況とともに賃上げへの決意が語られました。全労連の大黒作治議長は「賃上げが内需拡大につながる。正規も非正規も力を合わせて春闘をがんばる」と決意表明。JMIUの三木陵一書記長も「(提言で)賃上げ闘争に激励をいただいた」とのべ、最低賃金引き上げをぜひ実現してほしいと発言しました。首都圏青年ユニオンの河添誠書記長は政府の労働者派遣法改定案に重大な規制緩和策が盛り込まれていると指摘するとともに、雇用保険が切れて困窮化する派遣労働者への対策を求めました。
新日本婦人の会の高田公子会長は34年間の家計簿調査では1998年をピークに実収入が大幅に減っていることを紹介。「雇用の破壊が家計を直撃し、20〜30代の落ち込みが目立つ」と指摘しました。
全商連の国分稔会長は、「首相に『町工場は日本の宝だ』といわせたことは全国に響き渡り、確信を広げている」と発言。東京中小企業家同友会の水戸部良三副代表理事は中小企業憲章制定で「大企業に偏った政策の転換などが可能になる」と語りました。受注連建設事業協同組合の星野輝夫理事長は、公共入札のダンピング(低価格入札)の横行が建設ワーキングプアを広げていると指摘しました。
「医療崩壊」をめぐっては、全国保険医団体連合会の竹崎三立副会長が開業医の収支差額が20%も落ちるなど医療提供者側の崩壊と医療保険制度の崩壊を告発。医労連の田中千恵子委員長は、医療労働者の深刻な実態を示し、賃上げのために公的資金投入ができないかと提起しました。
農業問題では、農民連の笹渡義夫事務局長が「コメをつくってメシが食えない」ワーキングプア化を告発。民主党政権の戸別所得補償制度の問題点について「提言の指摘はどんぴしゃだ」とのべました。日高教の加門憲文委員長は、「『国民が貧しくなった国』で子どもや生徒の学ぶ権利が奪われている」として、高校の完全無償化や新卒者の雇用問題の位置づけを提起しました。
日本青年団協議会の渋谷隆事務局長は地域経済活性化をどうするかと提起。民青同盟の田中悠委員長は青年労働者の状況を報告しました。
志位委員長 閉会あいさつ
志位氏は閉会あいさつで、発言者からの発言に謝意を表明し、「それぞれの発言を共同のたたかいに生かし、日本共産党の政策に生かしていきたい」と述べました。
志位氏は、五つの提言は、その全体が日本経済を内需・家計主導で発展させる意義をもつものだと強調。日本共産党のとりくみとともに発言者が紹介したたたかいの一つ一つが「日本経済を、まともな発展の軌道に乗せていくことにつながる大義あるたたかいであり、経済システム全体を変えるたたかいだ。大いに共同と連帯を強めたい」と結びました。
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