2010年3月13日(土)「しんぶん赤旗」
主張
水俣病対策
こんどこそ全被害者の救済へ
水俣病被害者の救済を求めた「ノーモア・ミナマタ訴訟」で熊本地裁が当事者に勧告した「和解協議」が回を重ね、まもなく地裁が和解内容についての「所見」を示すとも伝えられています。
昨年の不知火(しらぬい)海沿岸住民に対する大規模検診をきっかけに、首都圏在住の水俣病被害者が東京地裁に提訴するなど、広い地域で被害者が立ち上がり始めています。この重大な局面で重要なのは、多くの被害者を切り捨てる「水俣病特措法」の枠内にとどめるのではなく、国と熊本県の責任を認めた最高裁判決に基づいて、すべての被害者を救済することです。
「特措法」では救えない
水俣病は、熊本県水俣市のチッソ水俣工場が不知火海に垂れ流した有機水銀を蓄積した魚介類を住民が食べ、感覚障害、運動障害、視野狭窄(きょうさく)、言語障害などを引き起こした公害病です。加害企業チッソと水俣病の発生・拡大を野放しにした国と熊本県は、2004年10月の最高裁判決に従い、すべての被害者を救済すべきです。
しかし政府は特措法の枠内での対応に固執しています。特措法では、チッソが有機水銀の排水をやめた1968年12月以前に公害健康被害補償法(公健法)の指定区域内に居住していた人に、救済対象を限定しています。基準の緩和や地域指定の拡大もとりざたされていますが、特措法の枠内だけではすべての被害者を救えません。
昨年9月の大規模検診では政府が指定した地域以外でも多くの住民が水俣病と診断されました。今年2月の東京での「関東水俣検診」でも指定地域外の住民や、69年以降生まれた住民の多くが水俣病と診断されました。健康調査をやればやるほど被害は広がります。こんどは国と熊本県の責任で、不知火海沿岸とそこでの居住歴をもつすべての人々を健康調査すべきです。健康調査もせず、限定的な措置ですまそうとする政府の態度では、真の解決につながりません。
加害企業であるチッソを、被害者補償にあたる部門ともうけをあげる事業部門に分ける「分社化」も問題です。チッソの後藤舜吉会長は今年の年頭所感で、分社化で「水俣病からの桎梏(しっこく)から解放される」といいました。事業部門のもうけはしっかり確保し、補償部門は株式売却益の範囲内でしか補償をしません。それはいずれ消滅するものです。水俣病被害者互助会の佐藤英樹会長が「被害者は苦しみ加害者だけが喜んでいる。被害者を愚弄(ぐろう)するもので特措法は間違っている」と怒るのも当然です。
水俣病の被害者を救済するというなら、被害者を切り捨てる「水俣病特措法」の仕組みを根本からあらためるしかありません。
救済のための具体策
最高裁判決にもとづき、国、県、チッソは被害者すべてを救済することが重要です。日本共産党国会議員団は、被害者すべての救済を実施するために、(1)国と県による健康調査の実施、チッソの分社化を認めない、(2)公健法の判断基準(77年)をあらため、すべての水俣病被害者を救済する恒久的枠組みをつくる、(3)司法救済による迅速、広範な救済をはかる―を求めています。
すべての水俣病被害者の救済のため、日本共産党は被害者のみなさんとともに全力をあげます。