2010年3月16日(火)「しんぶん赤旗」
協会けんぽ保険料 来月 大幅アップ
財政悪化 大本に国庫負担減
中小企業のサラリーマンに4月から、健康保険の大幅な負担増がのしかかります。約3500万人が加入する協会けんぽ(旧政府管掌健康保険=政官健保)の財政悪化を受けて、保険料率が大幅に上がるためです。
「介護」合わせ 年5万3600円増
協会けんぽの保険料は、平均年収(374万円)の人で年4万2000円(労使折半)増えます。40歳から64歳の人は介護保険料率も同時に上がり、両方あわせて年5万3600円(同)の負担増です。
財政悪化の直接の要因は、景気悪化のなかで労働者の賃金が下がっているために保険料収入が減ったことです。
しかし、おおもとには、自民党政権下で国庫補助率が下げられてきたことがあります。国は1992年に、それまで保険給付費の16・4%だった国庫補助率を、保険財政が黒字だという理由で13%に引き下げました。
財政が悪化したら元に戻すとされましたが、約束は守られず、赤字が深刻になっても国庫負担はそのままで、保険料率の引き上げや窓口負担3割への引き上げが行われてきました。
今回、国は、国庫補助率を13%から16・4%に引き上げる法案を提出しています。しかし、健康保険法ではもともと、国庫補助率は「16・4%から20%の範囲内」とされており、保険料の大幅値上げを避けるために、少なくとも20%への引き上げが必要です。
国が、協会けんぽへの国庫補助引き上げに必要な1800億円のうち約半分を、健康保険組合(大企業のサラリーマンが加入)や共済組合(公務員が加入)に肩代わりさせようとしていることも問題です(10年度から12年度の特例措置)。健保組合は「断固反対」を表明しています。
都道府県化で格差が広がる
協会けんぽは、08年9月までは政府管掌健保として国が運営していました。06年の医療改悪で都道府県単位への分割が決められ、全国一律だった保険料率に県ごとの格差が持ち込まれました。
4月からは、格差がいっそう広がります。最高の北海道(8・26%が9・42%に値上げ)と最低の長野県(8・15%が9・26%に値上げ)では、差が0・16ポイントに拡大します。いまは激変緩和措置でこの差が圧縮されていますが、措置が切れれば10年度の7倍近い差がつきます。
医療費が高い県は保険料を高くすることで、都道府県ごとに医療費抑制を競わせる仕組みです。しかし、北海道などは医療機関が都市部に集中し、通院が困難で入院が多いため医療費がかかるといった要因があります。
中小企業で働く労働者とその家族に、国の責任で医療を給付するという政管健保本来の役割を守るために、国庫補助をさらに引き上げ、国が責任を持って運営する制度にすることが必要です。
傷病・出産手当の改悪狙う
協会けんぽの保険料率は、3月分(4月納付分)から全国平均で現在の8・2%(労使折半)から9・34%に上がります。40〜64歳の人は介護保険料率も1・19%(労使折半)から1・50%に上がります。
財政状況が改善しないと、いずれは保険料率が法定の上限である10%を突破する恐れがあるため、政府は、上限を12%に引き上げる健保法改定案を国会に提出しています。
今回は見送られたものの、現金給付の切り下げも狙われています。病気で働けない場合に最長1年半支給される傷病手当や、産休中に支給される出産手当に支給額の上限を設ける、協会けんぽの加入期間を受給資格要件にする―などが今後、検討されることになっています。
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