2010年3月19日(金)「しんぶん赤旗」

志位委員長が提出した

「日米核密約」に関する質問主意書


 日本共産党の志位和夫委員長が提出した、「日米核密約」に関する質問主意書は次の通りです。


 政府は、本年三月九日、日米間の密約問題に関する「有識者委員会報告書」を発表した。「報告書」の最大の問題点は、一九六〇年一月六日に日米間で合意された「討論記録」の存在を認めながら、これを核持ち込みの密約――核兵器を搭載した米艦船・航空機が、事前協議なしに日本へ寄港・飛来することを認めた秘密の合意であることを、否定していることにある。わが党は、こうした主張は、「討論記録」そのものが核持ち込み密約であることは文書のうえからも疑いないこと、日米政府間に「討論記録」について共通の理解があったことも米側の一連の文書で疑いないことなどからみて、成り立たないと考える。

 そのうえで、以下の事項について質問する。

一、政府は、「討論記録」が、日米間の公式の合意文書であることを認めるか

 イ、「討論記録」は、「岸・ハーター交換公文」として公表された第1節と、「交換公文」の解釈についての了解事項が記載された非公表(秘密)の第2節からなっており、第2節の冒頭には、つぎのように明記されている。「同交換公文は、以下の諸点を考慮に入れ、かつ了解して作成された」。

 ロ、さらに、一九六〇年一月六日、マッカーサー駐日大使がハーター国務長官に送った電報には、次のように明記されている。「藤山氏と私は本日、以下のそれぞれについて、二つの英文の原本に頭文字署名し、取り交わした。・協議方式に関する討論記録(二つの原本は『秘』指定され、日本が保持する複写は後で『極秘』指定されることになっている)」(以下略)。

 なお、米国側は、「討論記録」を、日米安保条約を構成する文書の一つに位置づけている。一九六〇年一月七日、マッカーサー駐日大使がハーター国務長官に送った電報では、「条約を構成する文書群」の一つに「藤山と私が一月六日に頭文字署名した」「討論記録」をあげている。さらに、一九六〇年一月九日、マッカーサー駐日大使がハーター国務長官に送った電報では、「われわれが承知している条約文書の全リスト」として、一七の文書があげられ、その文書の一つとして「協議方式に関する討論記録」が明記されている。

 日米両政府間で「了解して作成され」、日米両政府の代表が頭文字署名をおこない、それを秘密文書として取り扱う確認をおこなった――これらの事実は、「討論記録」が、日米両政府間の公式の合意文書であることを、疑問の余地なく示している。

 政府は、「討論記録」が日米両政府間の公式の合意文書であることを認めるか。それを否定するのであれば、その根拠は何か。

二、一九九四年以後も、核搭載能力を維持した原子力潜水艦が寄港している可能性を認めるか

 「有識者委員会報告書」では、米国政府は、「討論記録」に基づいて、核搭載艦船の日本寄港は事前協議の対象外とする立場をとっているとしている。そうなると、「報告書」の解釈によっても、米国は、核搭載艦船の寄港を事前協議なしに自由におこなうということになる。こうしたもとで「非核三原則」を守る保証はどこにあるのか。

 わが党議員の質問に対して、岡田外務大臣は、三月一〇日の衆議院外務委員会の答弁で、「(米国政府により)一九九一年に、水上艦船及び攻撃型潜水艦を含む米海軍の艦船及び航空機から戦術核兵器を撤去する旨表明がなされました。そして、一九九四年の核態勢見直しの結果として、水上艦船及び空母艦載機から戦術核兵器の搭載能力を撤去するというふうにアメリカは政策決定しております。したがって、今、そういった持ち込みということが起こり得ないというふうに我々は考えております」と述べた。

 しかし、これは米国政府が一九九四年におこなった核兵器政策の変更を、理解していない発言である。

 イ、一九九四年九月に米国防総省が発表した「核態勢の見直し」(NPR)では、「水上艦艇に核兵器を配備する能力を廃棄」するが、「潜水艦に核巡航ミサイルを配備する能力を維持する」ことを明記している。

 ロ、二〇〇八年九月、ゲーツ国防長官とボッドマン・エネルギー長官が署名した報告書「二一世紀における国家安全保障と核兵器」では、「海洋発射核巡航ミサイルからなる非戦略核戦力(戦術・戦域核戦力のこと)は維持される」と明記している。

 ハ、二〇〇九年五月、米議会から委託された「米国の戦略態勢に関する議会委員会」の最終報告は、「アジアにおいては、拡大抑止は若干のロサンゼルス級攻撃型原潜の陸地攻撃核巡航ミサイル(TLAM/N)の配備に大きく依存している」と明記している。

 ニ、この一〇年間(二〇〇〇年〜二〇〇九年)のロサンゼルス級、改良型ロサンゼルス級原子力潜水艦の日本への寄港回数は、累計で四七九回にのぼる。二〇〇九年だけでも寄港回数は四二回にのぼる。

 政府は、一九九四年以後も、日本に核兵器搭載能力を維持した原子力潜水艦が寄港している可能性があることを認めるか。それを否定するというなら、その根拠は何か。

 さらにロサンゼルス級の攻撃型原潜の日本寄港は、今年一月、二月にも繰り返しおこなわれており、今後もつづくことが予想される。政府は、寄港する原子力潜水艦に核兵器搭載能力を維持したものが含まれていないことを保証できるか。保証できるというのであれば、その根拠は何か。

 右質問する。


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(写真)94年に米国防総省が発表した「核態勢の見直し」(NPR)と志位委員長の指摘部分。傍線部分2行目に「潜水艦に核巡航ミサイルを配備する能力を維持する」とある



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(写真)09年5月の「米国の戦略態勢に関する議会委員会」最終報告と志位委員長の指摘部分?傍線部分に、「アジアにおいては?拡大抑止は若干のロサンゼルス級攻撃型原潜の陸地攻撃核巡航ミサイル(TLAM/N)の配備に大きく依存している」とある



グラフ


グラフ


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