2010年3月19日(金)「しんぶん赤旗」
憲法にそむく「名古屋市議半減」に反対し、民主主義を守りましょう
日本共産党愛知県委員会
日本共産党愛知県委員会が18日に発表したアピール「市民のみなさんに訴えます―憲法にそむく『名古屋市議半減』に反対し、民主主義を守りましょう」の全文は次の通りです。
河村たかし名古屋市長は、市議会の2月定例会に、市議会議員の数を現在の75人から38人にする「市議半減」案を提出しました。しかも、選挙区の半分以上(16区のうち9区)を1〜2人区にしようという案です。
いま全国に、47の都道府県議会と1700余の市町村議会がありますが、議員数の「半減」などという、乱暴なことをやったところはありません。
河村市長の「市議半減」案にたいし、議会・議員のあり方に批判をもっている市民のなかからも、立場の違いをこえて、「半減はやりすぎ」、「市長の独裁につながる」という、不安や批判の声がでています。
さる1月8日、憲法学者や市民運動のリーダーら13人のみなさんが、「民主政治を守るために、議員定数の半減に反対しましょう」という共同声明を発表しました。いま、この共同声明への賛同署名が大きくひろがっています。
「市議半減」案は、憲法が定めた地方自治の仕組みのなかで、自治体の長にたいして議会がはたすべき役割そのものに関係する問題です。日本共産党は市民のみなさんに、「市議半減」案を憲法の根本精神にかかわる問題として、ともに考えていただくことを、心から訴えます。
憲法が定める議会の役割を否定
日本国憲法は、自治体の長と議会をいずれも住民が直接選び、それぞれが住民を代表する「二元代表制」という制度を地方自治の仕組みとして定めています。
市長は、名古屋市の代表として直接、住民から負託を受けて予算を編成し、これにもとづく行政を行います。一方、議会は、様々な民意を代表する議員が、十分な審議のうえで、名古屋市の予算案などを議決します。
「二元代表制」とは、大きな執行権をもつ市長と議決権をもつ議会が、チェック・アンド・バランス(抑制と均衡)の関係で、おたがいの独断や暴走を防ぐという民主主義の仕組みです。これは、全国の市長や議会の共通認識であり、守るべきルールです。
ところが河村市長は、「二元代表制は立法ミス」という立場です。「名古屋市の河村たかし市長は2日の記者会見で、地方自治のシステムである二元代表制について『立法者のミスだ』と述べた。市長と議員がともに公選される制度に異議を唱えた」「首長の権限強化に向けた制度改革が必要との考えを示した」(「毎日」2009年11月2日付)と報じられています。憲法が定める地方自治の仕組みと議会の役割を根本から否定する考えです。
実際、河村市長は、議会の態度が自分の提案どおりにならない状況になると、自らの応援団による議会解散・リコール運動などをちらつかせて、議会を従わせようとする攻撃をくりかえしてきました。
いま、河村応援団が組織され、大量の立候補者の準備がすすめられ、河村応援議員で議会の多数をねらっています。河村市長は、議員定数を半減して1〜2人区を多数にするとしていますが、批判勢力をしめだして、市長いいなりの「翼賛議会」をつくろうというもくろみです。
市長が議員を半分に減らし、市長いいなりの議会につくり変えて、憲法が定める議会のチェック機能が働かないようにしてしまう。そして、市長が思いのままにできる専制体制をつくろうとする―こんなことが、許されてよいのでしょうか。
「市議半減」で、1人区を含む少人数区が多数になれば、「死に票」が増え、市政への市民の多様な意思の反映が切り捨てられることにつながります。市民の多様な意見や要望、市政へのさまざまな立場からの批判の声が届かない議会になってしまいます。
市民犠牲の市政を押しつけることがねらい。
河村市長は、議会のチェック機能を無力化させて、どのような市政をすすめようとしているのでしょうか。
「市民税10%減税」は、市長選のときの「金持ち(は減税)ゼロ」の公約に背いて、その実態は、大企業・金持ちに手厚く、中小企業や庶民にはほとんど恩恵のない「逆立ち減税」でした。一部の大企業は1社で年2億円減税なのに、中小企業の多くは年5000円程度。個人では、年2000万円を超す減税を受ける高額所得者がいるのに、市民税均等割だけの人の減税額は年300円。もっともくらしのきびしい非課税世帯には減税ゼロです。市長は「減税は生活支援のためではない」と言い切り、地元経済や市民生活の苦境をよそに、この「減税」を売り物に、大企業・大金持ちの名古屋への呼び込みに、市役所を総動員しようとしています。
しかも、その「減税」の財源をつくるために、市立病院・保育園の統廃合・民営化や自動車図書館の廃止、市独自の子育て支援手当の廃止、保育料の大幅な値上げなど、福祉・医療サービスの削減と負担増が市民に押しつけられようとしています。また、公約した中学卒業までの通院医療費無料化は実施がタナ上げされました。
河村市長は「福祉は地域委員会でやってもらう」とのべているように、あらたにつくった「地域委員会」を市の福祉への責任を放棄し、地域に押しつける“受け皿”にしようとしています。しかも、住民にやってもらいたいという福祉の財源に、「減税分を寄付してもらえんか」と見通しのない寄付をあてにするありさまです。
こうした市民犠牲の市政をさらに押しつけていくため、議会は邪魔だとばかりに出してきたのが「市議半減」案です。
市民のみなさん。
いま、憲法の定める地方自治の民主的原則がこの名古屋で危機にさらされています。いまこそ、立場の違いをこえて、「市議半減」に反対する一点で共同して声をあげ、民主主義の破壊をくいとめようではありませんか。
日本共産党は、住民自治とくらし・福祉を守るため、市民のみなさんと力をあわせ、全力をつくす決意です。