2010年3月20日(土)「しんぶん赤旗」
主張
イラク侵略7年
違法な戦争に決着をつけよ
アメリカやイギリスなどがイラクへの侵略を開始してから、20日で7年です。イラクでの民間人犠牲者は、報道で確認されただけでも約10万人といいます(「イラク・ボディ・カウント」による)。戦争による難民・避難民は400万人以上にのぼります。
侵攻に参加したイギリスやオランダでは、イラク戦争の公的な検証作業が進められています。人的にも物的にも多大な被害を出してきたイラク戦争を検証し、その教訓にたって二度と悲劇を繰り返さない努力が、いまこそ国際社会に求められています。
破たんする一国覇権主義
イラク戦争は、ブッシュ前米政権が国際社会と米国内の強い反対を押し切って強行した、違法な侵略戦争です。
国連憲章は紛争の平和的解決を加盟国に義務づけ、安全保障理事会による承認のない武力行使を禁じています。
ブッシュ政権は、安保理が対イラク武力行使を承認しなかったにもかかわらず、攻撃される可能性があれば先に攻撃するという同政権の特異な「先制攻撃戦略」にそって、イラクに侵攻しました。国際社会の厳しい批判をかわすため、侵攻は一部の国々を糾合した「有志連合」を隠れみのにして行われました。
ブッシュ政権は、米国への対抗意識を示したイラクのフセイン政権(当時)を、イランや北朝鮮とともに「悪の枢軸」と呼んで、体制の転換を追求しました。米政権に食い込んだ「ネオコン」(新保守主義)がその先頭に立ち、イラク侵攻を狙っていました。
侵攻の口実とされたのは、イラクが大量破壊兵器を保有しているとの疑惑でした。疑惑は国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)が検証作業中で、それによって解明される可能性がありました。ところが米国は、その作業を断ち切って侵攻したのです。侵攻からほどなく、イラクに大量破壊兵器のなかったことが米国自身の手で明らかになりました。
泥沼化した大義なき戦争の悲惨さが明るみに出るなか、ブッシュ政権は国際的に孤立を深め、国内で厳しい批判を浴びながら退場しました。米国の一国覇権主義は深刻な破たんに直面しています。
侵略戦争は当のアメリカにも深刻な傷を残しています。米兵の犠牲者は4400人に迫っています。戦場から戻っても、心身の障害などから社会に適応できない問題も広がっています。米政府自身も政治的、財政的に大きな負担をひきずっています。
戦争はなお終結していません。オバマ現政権はイラク撤退を進め、駐留米軍は現在の9万6000人から今夏には5万人に削減する予定です。しかし、いぜんとしてアフガニスタンと一体で、国際テロ組織アルカイダとの「戦争」をすすめています。
日本も検証と反省を
オバマ大統領はイラク戦争をすべきでなかったとしています。しかし、違法な侵略戦争だという根本的な誤りを認めるにはいたっていません。違法な戦争だったと認めることこそ、誤りを繰り返さない歯止めです。
日本も、小泉政権下でアメリカの戦争を支持し、自衛隊をイラクに派兵した国として、戦争協力の検証と反省が求められています。
■関連キーワード