2010年3月20日(土)「しんぶん赤旗」

イラク戦争答弁書

何のための“政権交代”だったのか


 数十万人とも100万人ともいわれる死者と、国内外で数百万人もの避難民をつくりだしたイラク戦争開始から7年。それと時を合わせたかのように閣議決定された今回の政府答弁書は、その犠牲を悼み、平和への新たな決意を表明するにはほど遠いものとなりました。

 そして、半年前に民主党中心の新政権が誕生したのは、いったい何のためだったのかということを、改めて考えさせられるものでもありました。

自公の考えなぞる

 答弁書は、日本政府によるイラク戦争支持と自衛隊派兵について、当時の自公政権の考え・判断をなぞることに終始し、その検証を「将来の課題」に追いやってしまいました。

 米国と一体にイラク戦争に加わった英国でさえ、独立調査委員会が設けられ、政府高官らの証人喚問が進んでいるのに、です。

 沖縄・米軍普天間基地問題での迷走・逆走、日米核密約はなかったとする立場の表明につづく今回の答弁書。イラク戦争を、現地を含め間近に取材したものにとって、新政権の政策的後退は、わずか半年でここまで来てしまったのかという感すらあります。

 重大なのは、イラク戦争の評価に現れた政府の姿勢が、日米軍事同盟をめぐるすべての問題に連なっているということです。

数千人の住民殺害

 2004年11月、イラク中部ファルージャ。米軍は1万5000人もの兵力を投入し、数千人の住民を殺害するという、まさに殲滅(せんめつ)作戦を行いました。

 このファルージャの悲劇は、大量破壊兵器除去、テロリスト掃討という戦争の「大義」がまったくのうそっぱちで、侵略戦争そのものだということを象徴するものでした。そして、虫ケラのように動くものすべてを銃撃したその攻撃の最前線に立ったのが、沖縄の海兵隊の部隊だったのです。

 自公政権と同様、鳩山政権もこのイラク戦争の無法を認めないのであれば、それは結局、“侵略力”としての米海兵隊の役割にも目をふさぐことになります。

 そうなれば、必然的に、普天間基地の“移設先探し”をさらに混迷させ、絶対に解決できない袋小路に自らを追い込むことになります。

 何よりも、戦争の誤りを認めないということは、その誤りを再び繰り返すことにつながります。果たして、新政権にその自覚はあるのか。(小泉大介)



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