2010年3月22日(月)「しんぶん赤旗」
主張
新型インフルエンザ
備え怠らないことが拡大防ぐ
昨年流行が拡大した新型インフルエンザの新たな患者発生が減少し、沈静化してきているとの見方が広がっています。
しかし油断は禁物です。新型インフルエンザは、ほとんどの人が免疫をもたない新しい病気です。一度かかった人やワクチンを接種した人は一時的に免疫ができても、まだかかっていない人や免疫が切れた人から再び流行が拡大する危険は十分あります。新しいタイプのインフルエンザが発生する危険もあります。備えを怠らないことが、拡大を防ぐ要です。
未知の病気に予断は禁物
インフルエンザの疑いで病院や診療所を受診した人の数は、ことし1月半ば以降連続して減少しています。患者のほとんどは新型インフルエンザの感染者で、政府も流行は「沈静化しつつある」との見方を発表しています。他方、最近は「季節型」の患者が見られるという指摘もあります。
昨年来流行した新型インフルエンザは、ブタからヒトにうつるようになった「H1N1」といわれる型のインフルエンザです。ほとんどの人は感染したことがないので免疫を持たず、急速に感染が広がりました。症状は軽いといわれましたが、診断が遅れた人や子どもたち、老人など持病のある人は重症化しやすく、国内で亡くなった人も、3月半ばまでで198人にのぼっています。学校などの休校やクラス閉鎖、看護のために家族も仕事を休まなければならないなど、社会的な影響も深刻なものがありました。
流行を通じて明らかになったのは、新型インフルエンザは初めて体験する病気なので、予想がつかないことがたくさんあるということです。普通ならインフルエンザが広がりにくいといわれる真夏の、しかも沖縄で大量に患者が発生しました。どんな人が感染しやすいのか、どんな場合には重症化しやすいのか、有効な治療法は、などの判断も確定していません。
重症化を防げるといわれるワクチンの開発も予定通り進まず、しかもどれぐらい使用すれば効果があるかもわかりませんでした。当初2回接種の予定で大幅にワクチンが不足するといわれ、接種の順番まで決められたのに、いまではほとんど1回だけの接種で効果があると変わり、大量に輸入する予定だったワクチンが余るという問題が発生しています。
こうした混乱は、“未知”の病気である以上、ある程度仕方のない面があります。むしろ心配なのは、今回の経験だけで新型インフルエンザはたいしたことがないようだと即断して、備えを怠ることです。今後ふたたび流行がぶり返さないという保証はありません。日常のうがいや手洗いをはじめ、日ごろから体調を整え、必要な場合はワクチンを接種するなど、対策を続けることが不可欠です。
鳥インフルにも備えを
もっとも心配されるのは、インフルエンザの場合、ウイルスが毒性の強いものに変わることがありうることです。また、世界的には今回の新型インフルエンザよりはるかに毒性の強い鳥インフルエンザの流行が大問題になっており、日本への上陸も懸念されます。
感染力も毒性も強いインフルエンザが大流行するなど最悪の場合に備え、医療などの必要な対策を整えるのは、国の政治の責任です。