2010年3月29日(月)「しんぶん赤旗」

主張

郵政「改革」

公的事業体として再生めざせ


 亀井静香金融・郵政担当相の郵政「改革案」に民主党の閣僚から異論が噴出し、緊急の閣僚懇談会で議論することになりました。

 亀井担当相は、改革案は与党の意見を聞き、首相の了解も得て決めたものだと反発しています。

 民主党からの異論は民営化を徹底する立場からの異論であり、かけがえのない郵政事業を維持してほしいという国民の願いに逆行する動きです。しかし、改革案そのものにも大きな問題があります。

民営化路線の破たん

 改革案は郵政の株式会社化を維持し、ゆうちょ銀行の預入限度額とかんぽ生命の保険金上限を大幅に引き上げるとしています。日本郵政の下に窓口業務などを担当する郵便局会社、郵便、ゆうちょ、かんぽの4社を置く体制から、日本郵政・郵便局・郵便の3社を統合し、その下にゆうちょ、かんぽを置く体制に再編します。ゆうちょ、かんぽの全株を売却する現行方針を改め、親会社が3分の1超の株を保有するとしています。

 自公政権が「構造改革」の「本丸」としてごり押しした郵政民営化は、腐敗と国民サービスの後退で破たんが明白になっています。

 ゆうちょのカード事業との提携で巨額の利益をむさぼったのは、西川善文・前社長の出身行の三井住友グループです。「かんぽの宿」のたたき売りで、ぬれ手であわの大もうけをあげたのは、「官から民へ」の「改革」の旗振り役の宮内義彦氏が会長を務めるオリックス・グループです。国民共有の財産を食い物にした、新たな利権と腐敗のおぞましい実態が次々と明るみに出ました。

 何より、「万が一にも国民の利便に支障が生じないようにする」という政府の約束が、完全に踏みにじられていることです。簡易局閉鎖、ATM(現金自動預払機)の撤去、手数料引き上げ、時間外窓口の閉鎖、集配局の統廃合など、住民の命綱となってきたサービスの後退は深刻です。

 国民の暮らしを支える事業から、経営効率を高めることや資金の自由な運用など、利益最優先の経営へと変質を図った郵政民営化の帰結と言うほかありません。

 過疎地や離島でも、いつでも誰でも、生活に不可欠な郵便局のサービスを低料金で利用できる「ユニバーサル・サービス」の保障が改めて求められています。

 そのために必要なことは、利潤の追求ではなく、公共の福祉の増進を郵政事業の目的としてはっきりさせる方向への改革です。株式会社化を維持する改革案の方向では、利益を増やして株価の引き上げを求める多数の株主の圧力から逃れられません。

利益優先に終止符を

 亀井郵政担当相は日本郵政の株式について、「3年後は無理でも5年後までには上場したい」とのべています。あくまで郵政民営化の枠内の方針であり、これでは亀井氏が強調するユニバーサル・サービスの維持も看板倒れに終わらざるを得ません。

 貯金・保険の限度額引き上げも利益優先の株式会社化と一体の関係であり、事業をいっそう利潤追求に駆り立てる危険があります。

 利益優先・民営化に終止符を打ち、公共の福祉の増進を目的として、郵政事業を名実ともに国民サービスを守る公的な事業体として再生することこそ求められます。





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