2010年3月30日(火)「しんぶん赤旗」
主張
堀越事件逆転無罪
弾圧の意図挫(くじ)く意義ある判決
国家公務員であっても、休日に自宅のまわりで普通の市民として、政党機関紙号外などを配布することがどうして犯罪として罰せられなければならないのか―。2003年の総選挙で「しんぶん赤旗」号外を配布した元社会保険庁職員の堀越明男さんが理不尽にも逮捕・起訴され、裁判がつづいていた弾圧事件で、東京高裁は一審の東京地裁の有罪判決をくつがえし、無罪を言い渡しました。国家公務員の政治活動を一律・全面的に禁止する理由がないことを事実で証明した、意義ある判決です。
市民の当たり前の行為
堀越さんは、休日に「しんぶん赤旗」号外を職場からも離れた居住地周辺の住宅の郵便受けに配布するという、市民として当たり前の行為をしただけです。ところがそれが国家公務員の政治活動を禁止した国家公務員法と人事院規則に違反するとして逮捕され、裁判にかけられました。実に37年ぶりという、国公法違反事件です。
しかも一審の東京地裁は、堀越さんを有罪としました。学者・文化人・法曹界をはじめ、国民的な批判が寄せられ、国連の自由権規約委員会も08年10月、「自由権規約で保護されている政治活動を、警察、検察官、裁判所が過度に制約しないように、表現の自由と参政権に対して課されたいかなる非合理な法律上の制約をも廃止すべきである」と、日本政府に勧告しました。
公務員であろうと、民間労働者であろうと、一市民としてビラ配布その他の政治活動をおこなうことは自由です。公務員の政治活動の禁止は、公務の公正な執行が妨げられるなどが理由ですが、公務は法令や通達などによって組織の目的に反しないようチェックする態勢があり、職員個人の、職務と関係のない政治活動を禁止するのは筋違いです。
世界的にも、イギリス、フランス、ドイツでは、職務に影響を与えない公務員の政治活動は自由であり、たとえ公務に害を発生させた場合でも、懲戒処分はあっても刑事罰はありません。実際、郵便局や社会保険庁の民営化によってそこに働く人たちは公務員でなくなり、政治活動の禁止もなくなりましたが、仕事のうえではまったく問題にならず何の混乱もなかったことからも、政治活動を禁止する理由がないのは明らかです。
東京高裁は、日本の場合、諸外国とくらべ制約が厳しすぎることを認め、堀越さんのような行為を処罰することは、「国家公務員の政治活動の自由にやむを得ない限度を超えた制約を加えるもの」で、表現の自由を認めた憲法21条などに違反するとしました。判決は国公法の政治活動への処罰規定そのものは合憲としている問題はありますが、公安警察が卑劣な尾行や盗み撮りまでして国家公務員の政治活動すべてを禁止しようとした弾圧の意図は許しませんでした。
政治活動の自由保障せよ
もともと、職務の公正な執行とは無関係に公務員の政治活動を刑事罰で禁止する国公法102条と人事院規則は憲法と国際自由権規約に違反します。
東京高検が上告を断念して無罪判決を確定させるとともに、国会で国公法、人事院規則の問題点を徹底的に追及し、法改正を提起するために、日本共産党は広範な人たちと協力していきます。