2010年4月1日(木)「しんぶん赤旗」
主張
「医療崩壊」阻止
命守る課題で共同広げよう
病院・病棟閉鎖や救急体制の縮小、さらに身近な医院の廃院など、地域医療の崩壊が深刻です。あわせて、いま公的医療保険制度そのものの崩壊も重大です。
全日本民主医療機関連合会の調査によると、国保料が払えない人からの保険証取り上げ、「派遣切り」などによる無保険、そして3割などの重い窓口負担が原因で、受診が遅れて死亡した事例が昨年だけで少なくとも43件に上りました。医療を提供する体制も、医療保険制度も、ともに危機打開の緊急対策が求められています。
日本共産党四つの提案
日本共産党が3月11日、各分野の方々と開催した「経済懇談会」で志位和夫委員長は、特に「医療崩壊」では新政権がまともな対応をしていないことを指摘して、四つの緊急課題を提案しました。
一つは後期高齢者医療制度の速やかな撤廃です。新政権は廃止を先送りし、保険料値上げを防ぐ手だても取らず、二重の公約違反で高齢者に痛みを押し付けています。それどころか、新しい高齢者医療制度として65歳以上の高齢者を国保に集めて「別勘定」の制度をつくるなどと、“うば捨て制度”の拡大すら検討しています。
後期高齢者医療制度は速やかに廃止して、もとの老健制度へ戻すとの「公約実行」を真っすぐ迫ることがいよいよ重要です。
二つは、高すぎる医療費の窓口負担の引き下げです。現役世代は3割、高齢者は1割から3割という重い窓口負担が、命すら脅かす受診抑制を引き起こしています。この問題では日本医師会も昨年10月の提言で、欧州では無料や低額が一般的だとして患者負担の引き下げを求めています。
三つは、高すぎる国保料の引き下げです。民主党は、政権を取ったら9千億円投入して国保財政を立て直すと言っていましたが、実際に予算化したのは40億円だけでした。日本共産党が提案しているように4千億円あれば緊急に1人1万円の引き下げも可能です。
四つは、診療報酬の抜本的な引き上げです。民主党は、医療崩壊を食い止めるためOECD(経済協力開発機構)並みの医療費確保を言いましたが、診療報酬引き上げも0・03%と実質ゼロ回答で、医師会などから抗議と失望の声が上がっています。
懇談会の席で志位委員長は「医療、社会保障の立て直しが経済を健全な発展の軌道に乗せることにもつながる」と提起しましたが、全国保険医団体連合会、日本医労連などの代表から賛同の声が出されました。医師、看護師の人手不足の解消は安全な医療に欠かせません。経営の立て直しや医療・介護労働者の雇用の拡大、賃金保障が進んで、まともに税金を払えるようになれば継続した経済発展にも結び付いていく、という当事者の言葉は貴重でした。
経済危機打開と重ねて
患者、国民の命を守って事態を前に進める日本共産党のたたかいと、医師会など医療関係者、広範な国民各層との共同が進んでいます。これは一過性のものではなく、逆流を乗り越えて要求実現に向かっていく大きな流れにならざるを得ないものです。
国民の命、健康を守り、医療制度を立て直す緊急の取り組みに、経済の危機打開とも重ねて、いっそう力を尽くすことが重要です。
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