2010年4月5日(月)「しんぶん赤旗」
NHK日曜討論 市田書記局長の発言
日本共産党の市田忠義書記局長は4日、NHK番組「日曜討論」に出席し、鳩山内閣の政権運営や米軍普天間基地問題などについて各党代表と討論しました。司会は影山日出夫解説委員。
自民離党・新党の動き
表紙だけ替えるやり方
問われるのは政治の中身
冒頭、影山氏は、与謝野馨元財務相の自民党離党など、新党をめぐる動きが活発になってきているとして、いまの政治の現状をどうみるかと問いかけました。
自民党の茂木敏充幹事長代理は、与謝野氏の離党は「残念だ」と述べながら、自民党と政策も一緒で、「ただ内でやるか外でやるか(の違い)だ」などと発言。市田氏は、次のように発言しました。
市田 今回の新党騒ぎの一番の問題は、自民党が前回の総選挙でああいう(政権退場の)審判を受けたのに、その総括と反省がないまま、表紙だけ替えるというやり方では国民の信頼を得ることはできないということです。ロッキード事件が起きたときには新自由クラブが、リクルート事件、金丸事件のときには日本新党ができましたが、いずれも結局は自民党政治の延命策だったわけです。やはり、看板、表紙ではなく、政治の中身が問われているんじゃないかと思います。
内閣支持率の急落どうみる
後期医療・派遣法・普天間…
肝心要の要求で国民を裏切る
「政権交代への期待があせてきたという感じはないか」(影山氏)との問いに、民主党の細野豪志副幹事長は、「予算が浸透するまでには一定の時間がかかる」などと述べたほか、「政治とカネ」の問題では、政治資金制度についての与野党協議機関づくりを提案しているなどと述べました。市田氏は、内閣支持率急落の背景について、次のように述べました。
市田 一言でいうと、やはり期待を裏切られたということが、民主党政権の支持率が下がった最大の理由だと思います。自公政権が暮らしと平和を壊してきた。だから(国民は)自民党政治を変えてほしいと思って民主党政権に託したんです。ところが、(民主党政権は)公約を裏切る。それから国民が“ここを変えてほしい”という肝心要のところで、要求に背を向けています。
みずから「うば捨て山」だといっていた後期高齢者医療制度をすぐ廃止するというのが(民主党の)公約だったはずですが、これを4年後に先送りしました。しかも新しい案は、「うば捨て山」の“入山年齢”を75歳から65歳に前倒ししようという考え方です。
それから労働者派遣法の問題についても、あれだけ日比谷の「派遣村」で“派遣切り”が大問題になったのに、今度の案(労働者派遣法改定案)をみると、「使い捨て」労働の温存です。
普天間(基地「移設」)については、「国外、最低でも県外」といっていたのに、すでに「県内たらい回し」という方向が明らかになりつつあります。
「政治とカネ」では、(鳩山由紀夫)総理と(小沢一郎)幹事長と、小林(千代美衆院議員)さんの3氏の秘書ら計6人が逮捕・起訴されています。さきほど(細野氏は)制度論をいわれました。制度論も大事ですが、真相を究明し、国民の前に事実を明らかにするということから逃げ込むために制度論をもってきてはダメです。企業献金をやめようと思ったら、別に制度を変えなくてもすぐできます。私たちはもらっていません。政党助成金ももらっていません。その気になれば、今日からでもできるんです。だから、真相の究明と制度(改正の両方)をきちんとやっていくべきです。
国民とともに政治を前に
相次ぐ公約違反や「政治とカネ」問題の根本原因について、市田氏は次のように述べました。
市田 こういう問題の土台には、結局政権は代わったけれども、財界やアメリカにはモノがいえないという古い政治の枠組みから抜け切れていないということに、一番問題があると思います。同時に、“では自民党に帰ろうか”ということにもなっていない。やっぱり“両方ともいやだ”と。政治を前に向けるために、私たちは国民のみなさんといっしょに頑張りたいと思います。
米軍普天間基地問題
移設先探しではなく
撤去こそ解決への一番の道
焦点の普天間基地問題で公明党の高木陽介幹事長代理は「私たちはしっかりと(辺野古への新基地建設の)合意を取り付けてきた」と発言。与党も「キャンプ・シュワブに移そうという案をわが党は示している」(国民新党・自見庄三郎幹事長)と「県内たらい回し」の姿勢を示しました。市田氏は問題の解決方法について普天間基地の無条件撤去しかないことを強調しました。
市田 なぜ(鳩山首相が)ぶれるかというと移設先探しに狂奔しているからです。普天間の苦しみはどこに移しても同じ苦しみ。地元の要求は無条件撤去です。
長崎だとか、徳之島だとかグアムだとか移設先探しに狂奔している。自民・自公政権時代の14年間、SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意以降、問題が解決しなかったのは、結局「県内たらい回し」ということだったから沖縄県民はOKと言わなかった。
民主党政権案は、キャンプ・シュワブ陸上にヘリパッドをつくる。新たにうるま市のホワイト・ビーチに3000メートル級の滑走路を3本つくる。辺野古沖につくる基地よりももっと大きい基地をつくるという計画です。普天間も、滑走路の補修をやっている。普天間も残す。基地機能を5割以上ほかへ移すという徳之島でも大反対が起こっている。こういうやり方では解決できない。戦時国際法にも違反して奪った土地の上につくった基地を、代わりのモノをよこさなかったら返さないということほど無理無体はない。本腰すえて無条件撤去をアメリカと堂々と交渉すべきです。
沖縄県民の思いを大事にすると言いながらアメリカとの合意も大事だと言うのは絶対矛盾です。アメリカと軍事同盟や基地協定を結んでいる国でも交渉して撤去させた例は去年、南米のエクアドルでもありましたし、1992年にはフィリピンも撤去させています。そういう方向こそが一番の近道です。
よく「抑止力」といわれるが、(普天間基地の部隊は)アフガンとかイラクとかに飛び立つアメリカの出撃基地です。全然沖縄の平和と安全に役立ってない。
無条件撤去に全力尽くせ
普天間基地問題は、鳩山首相がいう「5月までの解決」について各党が認識を問われました。自民党の茂木氏は「このまま(辺野古への新基地建設で)いっていれば、2014年にすべてが解決する問題だ」としました。市田氏はアメリカと本腰を入れた無条件撤去の交渉が必要であると強調しました。
市田 自分で5月とおっしゃったんですから責任は重大だと思います。沖縄県民の思いを大事にして無条件撤去に全力を尽くすべきです。沖縄の地元紙は「これ以上悪い案は思いつくことすら難しい」「選挙詐欺」と書いています。選挙中、首相は沖縄でも遊説して、党首討論でも「国外、最低でも県外」と言っている。いま、県内と言われている。これほどの選挙詐欺はない。総理が責任を果たすためには、本腰入れて無条件撤去のために頑張ることです。
民主党の財源論
「二つの聖域」にメスを入れず自民も民主も消費税増税議論
民主党がマニフェストで掲げた公約の財源をめぐって細野氏は「税収がどのくらい出てくるのかというのも景気次第で変わる」としました。市田氏は、次のように述べました。
市田 マニフェストの見直し論が起こっている背景になにがあるか。財政全体を見直すと20兆円ぐらいの財源が生まれてくると民主党はずっと言っていた。政権取れば財源はいっぱい生まれてくると。これの破たんがマニフェスト見直し論の根底にあると思います。
民主党政権の一番の問題点は「二つの聖域」にメスを入れるという姿勢がないことです。一つは軍事費。事業仕分けの中で逆に軍事費は162億円増えた。米軍再編経費は500億円。SACO経費や「思いやり予算」を含めたら3400億円。政党助成金320億円は全然、手付かずです。
もう一つは大資産家、大企業優遇税制にメスを入れる姿勢がないことです。結局、議論になっているのは、消費税です。われわれは別ですけど与野党、自民党も民主党も消費税をどうするかという議論に行き着かざるを得ないのは、そこにメスを入れようとしていないからです。
わが党の立場はマニフェスト絶対主義ではありません。マニフェスト至上主義でもないし、民主党のマニフェストに書かれたことが白紙委任されたわけではありません。例えば比例定数80削減、日米FTA(自由貿易協定)、日豪EPA(経済連携協定)。高速道路を無料化するぐらいだったら優先順位として子どもやお年寄りの医療費無料のために使うべきです。いい方向への修正ならいいですが、悪い方向でやられたら困る。
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