2010年4月8日(木)「しんぶん赤旗」
安心・安全 国の責任放棄
地域主権3法案
7日に審議入りした「地域主権改革」一括法案など3法案の問題点をみてみると―。
保育の質が低下の恐れ
保育所など児童福祉施設の設備や運営の最低基準を自治体の条例任せにします。
配置する職員数や居室の面積などについては引き続き、全国一律の基準とするものの、東京都など待機児童が多い市区町村では保育所の居室面積基準も自治体に委ねます。
現在でも、認可保育所が増設されず「詰め込み」が社会問題化していますがさらにひどくしかねない内容です。
現在、2階以上に保育室を置く場合は耐火建築物であることや2方向の避難経路を確保することなど定められています。
国の基準をなくせば、防災対策も不十分な雑居ビルに保育所をつくることも可能になる危険性があります。
高齢者施設防火策後退
特別養護老人ホームやグループホームも設備や運営に関する基準が条例委任されます。
グループホームは火災による死亡事故が相次いでおり、消防法のスプリンクラー設置義務基準を下回る小規模施設(延べ面積275平方メートル未満)に対するスプリンクラー設置など防災対策の支援が求められています。設備や運営の基準を地方任せにすることは国の責任を投げ捨てるものであり、グループホームの施設経営が厳しいなか、防災対策はますます困難になりかねません。
一方、特養ホームは建物が耐火建築物(建築基準法第2条)でなければならないとなっています。この基準が緩和されれば、防災対策が後退しかねません。
公営住宅の追い出しも
210万世帯が暮らす公営住宅の整備基準と入居資格基準を、自治体任せにします。
整備基準は、居室の広さや浴室などの設備やバリアフリー化・耐震化対策も定めています。この基準を満たしていない住宅が多く残されており、修繕や建て替えが必要になっています。しかし、多くの自治体では「財政難」を理由に先延ばしされています。
新規建設が行われないため、入居できない人が多数います。その上、入居収入基準が昨年、引き下げられたため、退去を迫られたり、“足切り”にあう人が相次いでいます。
国に課せられた居住権保障の責任を放棄するもので、さらに住民追い出しや門前払いがすすむ危険性を抱えています。
地方議員の定数削減へ
地方自治法改定案は「自由度を拡大する」として、地方議員定数の人口にもとづく上限規定の撤廃が盛り込まれています。住民の声が届くように定められた議員定数の目安をなくしてしまうもので、住民の声を遠ざけ、議会を弱体化する定数削減がさらにすすむ危険性を抱えています。
共産党の主張から
日本共産党は、「義務付け・枠付けの見直し」について、福祉・教育などの水準を保障するために不十分ながらも設けられてきた国の基準を取り払い、国の責任を放棄して財政負担を減らすことが狙いであり、住民サービスの最低水準を確保することも難しくなると批判してきました。国の基準を後退させず、地方自治体が役割と権限を発揮できるよう財源の保障の拡充を求めてきました。保育所の待機児童解消は、「詰め込み」ではなく国が計画をつくり、国の責任を明確にして認可保育所を整備していくことを求めています。
グループホームについては「どんな小さな施設でもスプリンクラーなどの設置や耐火構造への支援が必要だ。夜間の複数職員の配置も求められる」(3月26日厚生労働委員会・高橋ちづ子衆院議員)と政府に迫るなど多様な高齢者施設に対して行政の支援を強めるよう求めています。
公営住宅については、自治体に積極的な支援を行うなど国の責任で大量建設と整備を行うよう求めています。