2010年4月10日(土)「しんぶん赤旗」
老朽原発 材質もろく
吉井議員指摘 運転延長は危険
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温暖化対策に名を借りて老朽原発を酷使すれば、取り返しのつかない事態になる―。日本共産党の吉井英勝衆院議員は9日、衆院経済産業委員会で、運転開始から40年たってなお運転を続けている日本原子力発電・敦賀原発1号機(福井県敦賀市)の問題をとりあげて、政府の安全軽視の姿勢を批判しました。
吉井議員は、金属がある温度以下になると急激にもろくなる問題で質問しました。原発を長期間運転すると、原子炉容器や機器などの金属材料は、核反応で発生する中性子を浴び、もろくなる温度が上昇します。吉井議員は、敦賀原発1号機の場合、運転開始当初はマイナス23度だったが、現在は51度に上昇したのではないかと指摘。経産省はそれを認めました。
吉井議員は「巨大地震など、緊急に原子炉を冷却しなければならない事態が発生すると、ECCS(緊急炉心冷却装置)が働いて、(51度以下の)常温の冷却水が一時に入り、原子炉容器が破損する可能性がある」と述べ、運転延長をやめよと追及しました。
また吉井議員は、1960年代に日本原子力産業会議(現・日本原子力産業協会)が行った試算を示して、炉心溶融など最悪の原発事故を想定した放射性物質の総放出量や、原子炉から何キロメートルの範囲がどの程度被ばくするのか、電力各社に試算させるよう求めました。直嶋正行経産相は「ご指摘は論理的には理解できる」としながらも、「すべてやるとなると別の要素が加わる」などと、原発災害対策に後ろ向きの答弁に終始しました。
解説
40年超、今後10年で18基に
敦賀原発1号機が営業運転を開始したのは1970年3月。70年代に運転を始めた18基の原発(注)が、2010年代、次々に運転開始40年を超すことになります。
老朽原発を廃炉にすることで原発から段階的に撤退して自然エネルギー重視に転換するのか、危険を顧みずに原発を酷使するのかが問われています。
原発は、もともと寿命が30〜40年程度とされていました。しかし2000年ごろから老朽化が問題となったため、政府は、60年間運転することを想定した対策を05年にまとめるなど、老朽原発を酷使する路線をとってきました。
原発の機器は、過酷な環境にさらされるため、老朽化による事故が頻発しています。04年に死傷者11人を出した美浜原発3号機の蒸気噴出事故は、老朽化による配管の減肉を放置していたことによるものです。
また、温度や圧力の変動を繰り返したり、中性子の照射を長期間浴び続けることで金属材料がもろくなり、ひび割れなどの原因になっています。コンクリートの劣化も指摘されています。
一方、先月末に島根原発1、2号機で123件の点検漏れが発覚するなど、電力会社の保守・管理能力や政府の審査能力そのものが問われる事態が続いています。
長期間の酷使による機器の劣化状況を把握できる保証はまったくありません。
老朽原発の酷使は、もともと技術的に未確立な原発の危険性をさらに高めるものです。この方向から根本的に転換するべきです。(中村秀生)
(注)福島第1(1)〜(6)、美浜(1)〜(3)、大飯(1)(2)、高浜(1)(2)、島根(1)、玄海(1)、伊方(1)、敦賀(1)、東海第2