2010年4月11日(日)「しんぶん赤旗」
築地市場
汚染地移転 民主 一転賛成
「公約破り」都民怒る
共産党 予算削除求め追及
日本最大の魚市場で都民の“台所”の築地市場(中央区)を、東京都が、土壌汚染されている東京ガス工場跡地(江東区豊洲)に移転させる問題が、都政の焦点となっています。昨年の都議選で移転反対を公約した民主党が、一転して移転経費を盛り込んだ予算に賛成しました。「都立小児病院廃止容認に続く公約破りだ」と批判があがっています。(東京都・川井 亮)
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都の2010年度中央卸売市場予算案は、豊洲の土地購入費1260億円や新市場の基本設計費、関連工事費など1281億円の移転経費を計上していました。
都議会では日本共産党がいち早く移転経費削除の修正案を公表し、一致点での共同を呼びかけました。日本共産党、民主党、生活者ネット・みらいなど、都議選で移転反対を掲げた会派が過半数を占め、共同すれば豊洲移転にストップをかけられるため、大きな注目を集めました。
ずさん処理実験
豊洲は、発がん性物質のベンゼンや猛毒のシアン化合物など高濃度の土壌汚染が大問題になっています。この問題で論戦が行われる都議会予算特別委員会の前日(3月10日)、都は土壌処理実験の中間報告を公表。「確実に汚染物質を無害化できる」と胸を張りました。
ところが、公表データは実験中の16カ所のうちわずか5カ所分。土壌試料の実験前の汚染物質濃度(初期値)すら示さないお粗末なものでした。
11日の予特委で吉田信夫党都議がこの事実を指摘し、「初期値も出さないのではだれも信用できない。それで『無害化できると実証』というのは都民をあざむくものだ」と追及しました。
この実験では採取された試料が、高濃度汚染が検出された場所と微妙にずれた位置の土壌だった疑惑も浮上。18日の経済・港湾委員会で清水ひで子党都議が実験の仕様書を示して追及したのに対し、都側は否定できませんでした。
拘束力ない決議
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築地市場の業者の有志が2月に現在地での再整備計画案を公表。こうした声にこたえ現在地再整備に立ち返るのかどうかが都議会で問われました。
民主党は、3月15日の予算特別委員会で土地購入費を削除する修正案の準備を表明したものの、移転推進の都と自民・公明両党との密室協議を重ね、修正案提出を取りやめ予算案に賛成する方向に転じました。
27日の委員会では、石原慎太郎知事の「現在地再整備検討の組織を設けていく必要もある」などの答弁を「方針の大転換」と評価。自公両党と「議会として現在地再整備の可能性について検討」「無害化された安全な状態での開場」との付帯決議を提案しました。
この都の答弁と付帯決議が現在地での再整備を進める何の保証にもならないことは、直後に鮮明になりました。
日本共産党の大山とも子都議が、石原知事の答弁について「現在地再整備検討の組織はしっかりした規模を持った組織を作るのか」とただしても、岡田至中央卸売市場長は「今後検討」。大山氏が都としての現在地再整備の検討、公募と業者の意向調査を迫ったのにも、同市場長は「豊洲移転が最適」と述べ、公募も意向調査も拒否したのです。佐藤広副知事も「内容の検討などは今後のこと」と逃げました。
付帯決議は強制力がなく歯止めにならないものです。04年3月の都議会で新銀行東京への1000億円出資の際、自民・公明・民主3党が経営の「適切な監視」などの付帯決議をつけ賛成したものの、大赤字となり都民の税金約855億円を棄損しました。民主党の大沢昇幹事長も3月27日深夜の記者会見で、記者団から「付帯決議だと拘束力がないのでは」と問われ、「ないといわれればないかもしれない」と認めました。
第一声の場所に
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民主党は昨年の都議選で「築地市場移転に 民主党はNO! 自民党はYES」(同党マニフェスト)と公約。鳩山由紀夫代表は第一声の場所にわざわざ築地市場前を選び、「石原都政の一つの目玉が豊洲への築地市場の移転。それをやめさせるためにはたった一つ。都議選で勝つことなんです」と訴えていました。
臨海部開発問題を考える都民連絡会の中野幸則代表世話人は「都議選で築地市場の再整備と豊洲移転反対を公約した民主党が予算に賛成したのは、都民を裏切る行為だ。国政だけでなく都政でも公約を裏切り続ければ国民の信頼を失う」といいます。
引き続き全力で「現在地再整備」
日本共産党の清水ひで子都議の話 「豊洲移転ノー」の都民の願いを実現する確かな保証が、新年度予算に計上された移転関連経費を削除することでした。民主党の裏切りは許せません。食の安全を守るためにも、「現在地再整備を」の声の実現に引き続き全力をあげます。