2010年4月13日(火)「しんぶん赤旗」
いまの日本、搾取の状況は?
〈問い〉「搾取」という言葉が最近よく使われますが、いまの日本での搾取の状況はどうなっているのですか。
〈答え〉貧困と社会的格差の拡大が深刻になるなかで、「搾取」を題名にした書籍も出ています。
搾取とは、機械や原料など生産手段の所有者が、その生産手段を使って生産する人間の労働の成果をただ取りする仕組みを指した経済学用語です。資本主義の生産は、労働者が資本家に労働力を売って労働すると、自分が受け取る賃金よりもはるかに多くの新しい富を生み出し、それが資本家のもうけ(剰余価値)になる――という仕組みで動いています。
高校生向け『資本論』解説書を出版した元NHKキャスターの池上彰さんは、「なぜ利益が生まれるのか。8時間働いて、4時間分が自分の労働力分の給料で、残りの4時間で新しい価値を生み出しているんだよ、というメカニズムが分かったとき、これが今の若者には目から鱗(うろこ)なんです」と語っています。
資本は、買い入れた労働力からできるだけ多くの剰余価値を生む労働の搾り出しに、知恵と手だてをつくします。「ルールなき資本主義」と言われる日本では、『資本論』に描かれたイギリスをさらに超える現実が進行しています。
労働時間の面では、ただ働きの押しつけ=時間外労働をさせながら賃金を支払わない違法の「サービス残業」が、天下御免で横行しています。同じ時間でより多くの労働をさせるという労働密度の強化の面では、世界に知られた「過労死」が多発しています。雇用の面では、「非正規労働者」が労働者人口の3分の1を占め、その「派遣切り」、大量解雇が社会の大問題になっています。
こうした搾取強化の結果、労働者の側での貧困や社会的格差の拡大がすすんできたのです。
他方では、資本家の側での富の蓄積です。資本家は剰余価値を元手に新しい投資をおこない、他の資本家との競争のなかで生産拡大に走ります。そして、得た利潤をさまざまなかたちで蓄積します。日本では、最近10年間で、賃金=「雇用者報酬」が279兆円から253兆円に1割も減る一方で、大企業の「経常利益」が15・1兆円から32・3兆円と、2倍以上になっています。そして、大企業の「内部留保」が、海外の子会社とか企業の株式保有などで蓄えられ、142兆円から229兆円へと膨らんでいるのです。
* 不破哲三・社会科学研究所所長の『マルクスは生きている』(平凡社新書)では、搾取とは何か、現代日本の搾取の現場はどうなっているかについて、解明しています。
〔2010・4・13〕