2010年4月16日(金)「しんぶん赤旗」
低空飛行訓練激化
米軍機苦情 全国の8割 群馬 過去最多
政府は中止求めよ 井上議員要求
|
群馬県の県都・前橋市や高崎、渋川両市上空で米軍戦闘機の低空飛行訓練が激化し、地域に住む80万人の命と生活を脅かしています。県に寄せられた苦情は昨年、過去最多の478件。日本共産党の井上哲士議員は訓練中止に向け政府が対応するよう求め、長島昭久・防衛政務官は、実態の調査と報告を約束しました(8日の参院外交防衛委員会)。事態は国の主権の根本が問われるものとなっています。
昼夜2分おき
2005年から09年の間に防衛省が受けた全国の米軍低空飛行訓練の苦情は665件、うち群馬県は521件で、実に8割近くにのぼります。外防委の質問で井上氏は、高崎市の住民が記録した騒音回数の記録を示しました。今年3月1日から同4日まで、午前10時台から午後9時すぎまで、多い日で72回、ひどいときには2分ごとに戦闘機が住宅地上空を飛行しました。
実態承知せず
「米空母ジョージ・ワシントンの横須賀配備(08年)に伴い、戦闘機(厚木基地)による昼夜問わない訓練が急増している。県や前橋市からも中止の要望が出ている。どのような対応をしているのか」
井上氏の質問に対し、長島政務官は「日米合同委員会の合意に沿って、安全面に最大限考慮を払い、地元住民への影響を最小限にするよう申し入れた」と回答。しかし国が取った対応は、学校受験に配慮するよう米軍側に申し入れただけで、米軍は3月9、10の両日、訓練を自粛したものの、その後、再開しました。防衛省は、訓練の実態把握について「米軍の運営にかかわることなので承知していない」(同政務官)との態度です。
戦闘機想定外
日米合同委の合意では、日本の航空法の最低基準を“順守”することになっています。井上氏は、「全国で、航空法81条の最低高度基準を下回った米軍機の訓練がいくつも報告されている」と指摘。国土交通省は、「この規定は取材、遊覧飛行を行うヘリコプターの低空飛行の安全性確保が目的」と答弁し、最低高度基準自体、戦闘機は想定外であるとの考えを示しました。
自衛隊の飛行訓練空域は、全国で25カ所設定されています(高高度訓練地域15、低高度訓練地域9、超音速飛行空域1)。1971年に162人の犠牲者を出した岩手県雫石町での自衛隊機と全日空機による衝突事故を教訓に、これらの空域は基本的に洋上に移されました。しかし、内陸の群馬県上空には、高高度訓練地域(エリアH)と低高度訓練地域(エリア3)が設定され、エリアHはほぼ米軍横田空域の中に位置します。
どこの国かと
井上氏の質問では驚くべき実態が明らかに。防衛省は、この二つのエリア内で自衛隊機は訓練していないことを認めたのです。
「米軍の空域内にわざわざ自衛隊機の訓練地域がつくられ、実際に自衛隊機は訓練せず、米軍機が住宅密集地を旋回し騒音をまき散らしている。いったいどこの国なのか」―井上氏の追及に、長島政務官は「重要な指摘。詳細を調べて後日答える」と述べざるを得ませんでした。(遠藤誠二)