2010年4月17日(土)「しんぶん赤旗」

派遣法改定案

共産党「抜け穴」ふさげと主張


 16日の衆院本会議で審議入りした政府の派遣法改定案。日本共産党の質問で浮かび上がった問題点と各党の姿勢は―。


製造業 「常用雇用」を例外

 派遣法改定案の大穴の一つ目が「製造業への派遣を禁止する」といいながら、「常時雇用する労働者」(常用雇用)の派遣を例外として認めていることです。

 改定案には「常用雇用」の定義がありませんが、厚生労働省は、短期雇用の繰り返しでも1年以上の雇用見込みがあれば「常用雇用」としています。

 これでいくと、製造業で働く派遣労働者55万人の64%が「常用雇用」となります。これでは例外どころか、製造業への派遣の大半が認められることになります。

 高橋ちづ子議員は、政府が「常用雇用は雇用の安定性が比較的高いから例外に」と言っていることに対し、派遣契約の中途解除で解雇された派遣労働者の8割は「常用雇用」で、安定雇用とはほど遠い実態であることを示し、「製造業派遣をきっぱり廃止すべきだ」と迫りました。

 鳩山由紀夫首相は、「常用雇用は雇用の安定性が高い」と破たんした理由を繰り返し、「大穴」を残していることを正当化。また、自民党議員の質問に対し、「製造業労働者1000万人のうち規制の対象は20万人にとどまる」と答弁。原則禁止は名ばかりであることを認めました。

 民主党の岡本英子議員は、「製造業派遣の解除は間違っていた」としながら、きっぱり禁止するよう求めず、大企業による無法な「派遣切り」とたたかえない姿勢を示しました。

 自民党の棚橋泰文議員は、「登録型と製造業派遣の原則禁止で44万人が失業する」などと決めつけ、「大穴」の開いた改定にさえ反対しました。

 社民党の服部良一議員は改定案に賛成しながら「名ばかり常用雇用をはびこらせてはいけない」などと述べました。

登録型 専門26業務を例外

 改定案のもう一つの大穴は、仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ不安定な「登録型派遣」を禁止するといいながら、約100万人いる「専門26業務」を例外としていることです。

 「専門業務」は専門的知識・技能があり、賃金などの交渉力があるという口実で、派遣期間に定めがありません。そのため、派遣先はいつまでも働かせることができます。

 高橋議員は、「事務用機器操作」など専門業務といえないものが多く、お茶くみ、コピーなど契約と無関係の仕事をさせられている実態をあげ、「名ばかり専門業務がまかり通っている。厳格に絞り込むべきだ」とただしました。鳩山首相は、「派遣を認めても問題のない業務だ」と、実態とかけ離れた答弁をしました。

 民主党は、“原則禁止で人を集めることができなくなってはいけない”などと述べ、“抜け穴”を認める姿勢を示しました。

 社民党は「事務用機器操作など業務内容が悪用される実態がある。例外が広がる危険がある」などと述べました。

みなし雇用規定なし崩し

 違法派遣があった場合、派遣先が直接雇用を申し込んだとみなす「みなし雇用」規定について、高橋氏は、派遣先が違法だと知らなかったといえばすまされかねない内容の上、直接雇用が申し込まれても、その労働条件が「派遣元と同一」とされているため、労働者が雇い止めにされてしまうと批判。無期雇用とすべきだと要求しました。

 さらに、法案に「グループ内派遣」を認める規定が盛り込まれていることを批判。昨年、民主党など野党3党が提出した「改正案」に盛り込まれていた「均等待遇の確保」「派遣先の団体交渉応諾義務」なども削除されていると批判しました。

 社民党は、党首自らが改定案を認めているにもかかわらず、「今回の改正案が3党合意案から後退したことは非常に残念」「団体交渉応諾義務の道を開くべきだ」などと主張しました。

 政府側が、改定案は「公労使のぎりぎりの合意」である労政審の答申に基づくものだと修正を拒んできたことについても論戦の焦点となり、高橋氏は「答申を一つも変えてはならないとするなら、国会で審議する意味などなくなるではないか」と批判しました。

 長妻昭厚労相は、「審議会の趣旨を踏まえ、取り組んでまいりたい」としか答えられませんでした。

 一方、公明党の古屋範子議員は、「原則禁止」について、「労働力を確保できるか不安」などとのべ、派遣労働者の正社員化についても「派遣は一時的需要調整であり、常用雇用を求めるのは、制度矛盾」などと反対しました。

 労政審答申についても「ぎりぎりの調整」などと強調し、「事前面接の解禁」を削除したことについても「与党内融和を優先した政略だ」などと非難しました。





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