2010年4月18日(日)「しんぶん赤旗」
「地域主権改革」一括法案
国の子育て支援の責任放棄
参考人質疑で浮き彫り
「地域主権改革」一括法案などを審議している参院総務委員会で16日、参考人質疑が行われ、待機児童解消など子育て支援に背を向け、国の責任を地方に押し付ける法案の問題点が浮き彫りになりました。
改定理由なし
地域主権一括法案では、保育所など児童福祉施設の最低基準を都道府県条例に委任します。山井和則厚生労働政務官は「地方自治体の創意工夫、地域のニーズに応じて向上させていくことを目的としている」と説明しています。しかし、参考人からは、すでに現行基準で地方の創意工夫やニーズに合わせた向上ができ、改定で国が財政保障の責任を地方に押し付けるだけであることが示されました。
帝京大学教職大学院の村山祐一教授は「最低基準は単なる基準ではなく、国が財政保障を行い、国基準以上のことは自治体が独自性を発揮して行っていく仕組みとなっている。児童福祉法で保育行政は地方の独自性を認めることを明確に位置付けている」と指摘。待機児童については、国が十分な支援をせず自治体が保育所整備をできていないことが問題であり、「最低基準の規制緩和や最低基準を地方に権限委譲すれば解決する問題ではない。児童福祉法に基づいた内容をきちんと実施することにある」と強調しました。
一括交付金化
「地域主権改革」で政府は、権限委譲とともに国からの交付金を使途自由な一括交付金化することを検討しています。村山氏は「最低基準は今でも大変、不十分です」と指摘。どの保育園でもいる園長や主任保育士は最低基準に明記されておらず、国の運営費基準で書かれていることをあげ、「保育行政を一般財源化した結果、地方では保育所の修理も増改築もできていない。権限を地方に移せばうまくいくかというと今の制度ではいかない」と言及しました。
これに関連して慶応義塾大学の片山善博教授も「地域主権の文脈の中で一般財源化が言われるが、現場には(予算を)削る理由を与えることになる。削られるのは声の小さいところ。子どものことが挙げられていたが学校図書館の図書購入費も一般財源化され削られた」とのべました。
施設の最低基準が条例委任になれば、防火防災対策も財政が厳しい地方自治体まかせになってしまいます。村山氏は「国が子どもの命にかかわるからこの基準だけは守りなさいということをやらないといけない。幼い子どもたちは判断できないわけですからきちんとしないといけない」とのべました。