2010年4月20日(火)「しんぶん赤旗」
主張
派遣法改定案審議入り
「正社員が当たり前」取り戻せ
労働者派遣法改定案の審議が、今週から衆議院の委員会でも始まります。使い捨て自由の劣悪な働き方から、「正社員が当たり前」の人間らしい働き方を取り戻す第一歩とするために、徹底した審議が求められています。
残された大きな抜け穴
労働者派遣は、当初臨時的・一時的な場合に限って例外的に認めることとし、対象業務を13に制限してスタートしました。それが財界の要求による度重なる改悪で原則自由化され、今日約400万人といわれるまでに拡大しました。ワーキングプア、貧困と格差など日本の社会を土台から揺るがす深刻な問題をひきおこした根源に、非人間的な派遣労働の拡大に象徴される雇用破壊があることは否定できない現実です。
ここまで不安定労働を広げた自民党の政権は昨年、国民の強い批判をあびて退場しました。期待をうけて登場した民主党中心の政権は、鳩山由紀夫首相が施政方針演説で「派遣労働を抜本的に見直す」ことを表明しました。ところが提案された政府の改定案は、抜本改正どころか、抜け穴をつくって「使い捨て労働」を温存した内容で、改正の名に値しないものです。
労働組合、市民団体、法曹界、そして「派遣切り」の犠牲になった労働者のあいだに失望と怒りが広がっています。日本弁護士連合会の宇都宮健児会長は、「労働者保護に値する抜本改正にはなおほど遠く、法案策定の過程において、法改正を切実に望む派遣労働者の声が十分に反映されていたのか疑問が残る」と批判しました。
派遣法を真に労働者保護の法律にするために、国会審議を通じて抜本的な修正が不可欠です。すでに問題点は明確になっています。
政府は、製造業務派遣と登録型派遣を「原則禁止」にしたといいますが、製造業務で「常用雇用」の派遣を認め、登録型は政令で指定されている専門26業務を例外としています。この二つの例外を合わせると、8割もの派遣労働が野放しにされます。規制対象になる2割も「常用雇用」や専門業務のかたちにすればよいことになり、まったく禁止効果がありません。
日本共産党の高橋千鶴子議員が16日の衆院本会議で「例外というかたちで『二つの大穴』をあけ、ほとんどが派遣のまま残されるという、まさに派遣労働『原則容認』法案といわざるを得ません」と問題点を端的に指摘しました。専門26業務は、大幅に縮小する政令の見直しが必要です。製造業務は、景気の良しあしで派遣が「調整弁」にされ、大量解雇のような犠牲がダイレクトに出る業務であり、きっぱり禁止すべきです。
「派遣切り」の被害なくせ
改定案にはほかにも、現行法からの改悪や不十分な改定、施行期日の長期先送りなど多くの問題点があります。違法派遣があったとき、派遣先が派遣労働者に直接雇用を申し込んだとみなす「みなし雇用」規定は、新たに盛り込んだものですが、正社員雇用になっていないこと、派遣先が「知らなかった」といえば免罪されることなど、問題だらけです。「第2人事部」と批判されているグループ内派遣を認めていることも問題です。
「派遣切り」にあった労働者は、「政府案では私たちは救われない」と叫んでいます。この叫びに応える抜本修正を求めるものです。