2010年4月22日(木)「しんぶん赤旗」
生存者家族に慰謝料
アスベスト 加害企業に賠償命令
大阪地裁
アスベスト製品を製造していた渡辺工業株式会社(大阪府和泉市)の従業員だった女性が石綿肺と肺結核の合併症を発症し、じん肺の認定を受ける障害を負ったのは、雇用契約上の安全配慮義務違反だとして損害請求を求めていた訴訟の判決が21日、大阪地裁でありました。田中敦裁判長は、被害者原告に2290万円、被害者を介護する家族の原告に「自らの仕事や家事を犠牲にした、精神的苦痛等に対する慰謝料」として110万円を支払うよう命じました。
弁護団によると、生存被害者の家族に慰謝料が認められるのは画期的といいます。
訴えていたのは和泉市の松本ケイ子さん(80)と長女の西村ユキ子さん(63)です。松本さんは1962年以降20年以上、(当時は渡辺石綿で)農業用車両のクラッチ装置の組み立てや研磨作業に従事し、現在24時間酸素吸入を要する寝たきりの状態です。
判決は「原告が就労したころまでには、少なくとも石綿に関連する法規制を把握し、これに従うことはもちろん、十分に情報収集をするなどして、石綿粉じんの健康被害等の危険性や対策について把握することは可能であったし、これを行うべきであった」として、「健康被害を予見できなかった」とする被告の主張を退けました。
西村さんは勤務先で支配人の役職に就いていましたが、母の介護で睡眠も十分にとれない状態になり、パート待遇に降格しました。
記者会見した西村さんは「渡辺工業は、判決を真摯(しんし)に受け止め、母が生きているうちに一日も早く謝罪してほしい」と話しました。また、来月19日に出される泉南アスベスト国賠訴訟判決に向け「国も早期に責任を認めて救済してほしい」と述べました。