2010年4月25日(日)「しんぶん赤旗」

明日をめざして 立ち上がる労働者たち

NTT東 北海道

始まりは1人の女性

派遣化拒否 「私も」続々


 NTT東日本―北海道(札幌市)で、契約社員がグループの派遣会社への転籍強要を拒否して立ち上がっています。最初に転籍の「同意」を撤回して雇用継続をかちとった30代女性のたたかいをきっかけに、20〜30代の若者たちに「同意」撤回を通告する動きが広がっています。(田代正則)


 NTT東日本―北海道は2009年10月、契約社員を集め、10年1月から、グループ内の人材派遣会社NTT北海道テレマートに700人全員を転籍させ、派遣社員として同じ仕事をさせると説明しました。

 契約社員に渡された資料には、同意しなければ「3月末をもって雇用止めとなります」と脅しの言葉が書いてありました。

 契約社員の多くは5〜8年も働き、「正社員以上に仕事をしている」と誇りを持っていました。1年契約を繰り返すいまの働き方でも不安なのに、会社が雇用責任を負わない派遣にされ、正社員化の希望が遠のきます。

 人をもののように使い回すやり方に不満を抱いたものの、雇い止めは避けたいと、多くの労働者が心ならずも「同意」しました。

 連合加盟のNTT労組は会社の方針を受け入れましたが、全労連加盟の通信産業労組北海道支部は09年11月、派遣社員化の強要をやめよと要求書を会社に出しました。

 そして北海道労働組合総連合(道労連)や各地域労連と協力し、札幌市内などの職場前でいっせい宣伝に取り組み、4千枚のビラを配布しました。

 すぐに反応がありました。ビラを読んだ女性からメールが届きました。派遣会社への転籍は誰も納得していないと訴え、本当に撤回が可能なのかと質問してきました。

 通信労組は、契約更新を繰り返せば、期間の定めのない雇用とみなされ、雇い止めは許されないことを、判例を示して丁寧に説明しました。何度かメールをやりとりした後、道労連事務所を訪ねた女性は「派遣化はどう考えてもおかしい。いままでどおり働き続けたい」と打ち明けました。

 野見昭光通信労組北海道支部書記長と出口憲次道労連事務局長らと話し合い、女性は決意を固めました。「私、たたかいます」

 派遣化強行直前の09年12月30日、転籍「同意」の撤回を通知。10年2月16日、札幌地裁に雇い止めを中止するよう仮処分を申請しました。

 日本共産党の大門みきし参院議員もNTTに対し、「雇い止めの脅しは許されない」と申し入れ、厚生労働省北海道労働局にも指導を要請しました。

 ついに会社は雇い止めをやめ、3月1日、雇用継続の契約書を女性に手渡しました。

 「最初に立ち上がった彼女は、すごい」。続いて声をあげた女性が語ります。「彼女のおかげで、雇い止めは許されないんだと知りました。私も『同意』を撤回することにしました。みんな、同じ思いです」

 通信労組に加入し「同意」撤回を会社に通告した契約社員は、最初の女性を含め5人になりました。現在も相談や組合加入が続いています。


9.6兆円もため込み

 NTTグループは、09年3月期の連結決算で、9兆6千億円もの内部留保をため込んでいます。トヨタ自動車の13兆4千億円に次ぐ額です。通信労組は、内部留保のごく一部を取り崩すだけで、雇用確保が可能だと主張しています。





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