2010年5月3日(月)「しんぶん赤旗」
主張
「5・3」63周年
“憲法の力”発揮する正念場
日本国憲法が1946年11月3日に公布され、翌47年5月3日に施行されてから63周年の、憲法記念日を迎えました。
昨年の総選挙で自民党の政権に終止符が打たれ、あからさまな明文改憲の策動は後退しています。主権者・国民自身の選択が作り出したこの状況は、大いに確信とすべきものです。しかし自公政権時代につくられた改憲手続き法を施行して改憲に道を開く策動は続いており、国民の失望が広がる鳩山由紀夫政権のもとでも憲法の原則を踏まえ解決すべき問題は山積しています。“憲法の力”を発揮し、政治を前に進める正念場です。
戦後65年安保50年の節目
日本国憲法は、日本の侵略戦争がアジアと日本の人々に大きな被害を与えたことを踏まえ、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすること」(憲法前文)を決意して定められました。国家主権と国民主権、戦争放棄、基本的人権などの原則は、日本国憲法のすぐれた特徴です。
ことしは第2次世界大戦が終結して65年の年であるとともに、日本をアメリカとの軍事同盟に縛り付ける、日米安保条約が改定されて50年の節目です。戦後65年にもなるのに外国の軍事基地が置かれ、騒音や犯罪などの被害に国民が脅かされるというのは、前文や9条に示された憲法の原則に照らし許されることではありません。
鳩山政権は米軍普天間基地の無条件撤去を求める世論に対し、沖縄の海兵隊は日本を守る「抑止力」で日米同盟は大切だからと、撤去ではなく、「移設」のための交渉に血道をあげています。しかし戦争を放棄した憲法の原則に立てば、外国と軍事同盟を結び、外国の軍隊の力を借りて「平和」を守るという発想そのものが間違っています。まして沖縄の海兵隊は、日本を守るどころか、アメリカが世界中に侵略するための軍隊です。あくまで軍事力に頼り対抗しようというのは、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」「安全と生存を保持しようと決意」(前文)した憲法の精神に反するものです。
国民の暮らしが、「派遣」や「非正規」など不安定雇用の拡大や社会保障の削減で脅かされ、貧困と格差が拡大している現実も、憲法の原則から見て許されることではありません。憲法25条は「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と明記しています。27条は「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」と定めています。
鳩山政権に公約どおり後期高齢者医療制度を廃止させること、派遣法の抜本改正を実現して人間らしい労働を取り戻すことなどは、一刻の猶予も許されません。
民主主義発展させてこそ
昨年の総選挙の結果、自民党の政権を退場させた国民は、政治の進路をさらに探求する「新しい時期」を迎えました。鳩山政権の公約違反に「期待外れ」の声がひろがるなかで、政治を前に進めるために重要なのは主権者・国民の意思をさらに政治に生かすことです。
憲法9条も25条も国民の声が政治に届かなければ実現しません。鳩山政権が狙う選挙制度改悪や国会法改悪をやめさせ、憲法が定める「国民が主人公」の政治をいっそう前進させることが重要です。
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