2010年5月4日(火)「しんぶん赤旗」

郵政民営化見直し 「国民の利便に資する」というが

株式会社化 矛盾が噴出


 郵政民営化の見直しに向け、鳩山政権は今国会で法案成立を図ろうとしています。「国民の利便性に資する改革」とうたいますが、矛盾と問題点が噴出しています。(矢守一英)


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 政府は4月30日、郵政「改革」法案を閣議決定しました。

 郵政事業の経営形態を株式会社化で維持したままです。その上で、現行の日本郵政グループを5社から3社体制に再編するとしました。

 具体的には日本郵政(持ち株会社)と郵便事業会社(日本郵便)、郵便局会社を統合し新たな親会社とします。そのもとに、金融2社(ゆうちょ銀行、かんぽ生命)を置く3社体制です。株の出資比率は、政府が親会社に対し3分の1超、親会社が金融2社に3分の1とします。

不採算地域は

 郵政事業の「見直し」をいうなら、国民が将来にわたり、郵便、貯金、保険のサービスを全国の郵便局で一体に受けられるようにすることが必要です。ところが、現行のゆうちょ銀行、かんぽ生命は金融のユニバーサル(全国一律)サービスを提供する法的な義務を負っていません。

 法案では、金融の全国一律サービスの義務付けは親会社だけで、直接、金融サービスを提供する金融2社には義務を課さないとしています。

 このこと自体も問題ですが、政府の方針である株式会社化と金融のユニバーサルサービスとは根本が矛盾しています。金融のユニバーサルサービスとは、たとえ不採算の地域であってもサービスを提供することだからです。株式会社は、利益の最大化が目的であり、もうからない地域からの撤退する可能性があります。国民サービスが切り捨てられる恐れは十分あります。

 現に、過疎地や離島では民間の金融機関が店舗を減らす中、郵便局が唯一の金融窓口というところが少なくありません。

 一体で経営されてきた郵政3事業がバラバラにされたことが、郵便と貯金の業務を同時に担うことができないなどサービス低下の原因になってきました。政府は「(郵便、貯金、保険の)郵政3事業が一体的に提供できるように再編成する」(「郵政事業の抜本的見直しの方向性」2008年12月)としてきましたが、結果は3分社化体制となっています。これでは分社化による消費税や預金保険機構への支出金などの弊害はなくならず、効率的なサービスにはつながりません。

海外で投機も

 郵便貯金の預入限度額の引き上げが検討されています。1人当たり1000万円から2000万円に引き上げるものですが、合理的な根拠はありません。

 郵貯は小口金融が基本で、国民の生活資金を安全・安心に預け入れるのにふさわしい限度額が設けられてきました。限度額の引き上げは、事業の拡大や利潤追求という株式会社化の方向と一体の関係です。郵貯資金を海外で投機的に運用する構想も出ています。郵政事業のあり方が利潤第一へとゆがめられる危険があります。


日本共産党はこう考えます

 日本共産党は、郵政事業のあり方について、利潤の追求ではなく、公共の福祉の増進を事業の目的としてはっきりさせる方向への改革が必要だと考えています。

 全国2万4千余の郵便局ネットワークによって提供されている生活に不可欠なサービスを、全国一律サービスとして保障する公的な事業体(公社)として再生することを目指すべきです。経営形態は、政府案のような株式会社化した上での3分社化ではなく、3事業一体で運営する体制にします。





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