2010年5月10日(月)「しんぶん赤旗」
主張
改憲手続き法
道理ない施行は中止すべきだ
憲法を改定するための国民投票などの手続きを定めた改憲手続き法(国民投票法)が18日に「施行期日」を迎えるのを機に、改憲への機運を盛り上げようという動きが一部に出ています。しかし、主権者である国民がいま改憲を望んでいるわけでも、改憲手続き法が施行されていないからといって不都合を感じているわけでもありません。改憲手続き法が施行されるから改憲の議論をなどというのは本末転倒のきわみであり、道理のない改憲手続き法の施行自体、延期・中止するのが当然です。
なくても不都合がない
日本国憲法は、憲法を改定する場合、国会が3分の2以上の賛成で「発議(ほつぎ)」し、主権者である国民の投票で過半数が賛成すれば承認されることになっています。しかし、そのための具体的な手続きを定める改憲手続き法は、1946年に憲法が公布、47年に施行されてから60年以上も定められていませんでした。改憲手続き法がなくてもなんの不都合もなかったのは、国民が憲法改定を望まず、具体的な日程に上ることがなかったからです。
2007年になって改憲手続き法が定められたのも、国民が憲法改定を要求するようになったからではなく、当時の自民党・公明党の政権が「任期中に改憲したい」という安倍晋三首相の意向を強く受けて成立を強行したためです。民主党は改憲手続き法の制定そのものには賛成し独自の法案を提出しましたが、自公は自ら提出した法案の採決を強行しました。
改憲手続き法の制定が国民の求めたものではなかったことは、改憲手続き法の制定はゴリ押ししても、その公布から3年近くたつのに、施行の前提となる法制上の措置や国会での憲法審査会の設置などが、狙い通り進められてこなかったことを見ても明らかです。
改憲手続き法は、施行までに「投票年齢」を現在の20歳から18歳に改めるとしていますが、そのために必要な公職選挙法の改定などは手付かずです。国民投票に際しての公務員の政治活動についても制限しないよう公務員法などの改定を実施することになっていますが、これもおこなわれていません。これらの法制上の措置を欠いたまま改憲手続き法を施行するのは、本来あってはならないことです。
改憲手続き法が施行されれば改憲原案の審査権限を持つことになる国会の憲法審査会も、衆院では政権交代前の昨年、審査会規程が議決されましたが委員の選任はされておらず、参院では規程の議決さえされていません。憲法改定を検討する条件もないのに改憲手続き法の施行だけを急ぐ理由は、どこからみても存在しません。
憲法を守り生かすことを
先日の憲法記念日を機に各マスメディアが実施した世論調査でも、国民が改憲を望んでいないことは明らかです。“改憲派”の「読売」の調査でも「改憲賛成」が43%と大きく減少して「反対」の42%ときっ抗しました。「朝日」の調査では、戦争を放棄した憲法9条改正に「反対」が67%と圧倒的です。
いま日本では、国民主権、戦争放棄、基本的人権など、現在の憲法の原則を生かして解決すべき問題が山積しています。改憲手続き法を施行して改憲の機運を盛り上げようとするのではなく、憲法を守り生かすことこそ重要です。
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