2010年5月11日(火)「しんぶん赤旗」

農産物の価格保障と所得補償の違いは


 〈問い〉日本共産党の農業政策に、「価格保障と所得補償を組み合わせる」とありますが、その二つはどう違うのでしょうか。

 〈答え〉日本共産党は、農業の再生に何よりも必要なのは農家経営が持続できる条件の整備であり、農産物の価格保障を中心に、所得補償を組み合わせ、生産コストをカバーする施策をしっかりと行うことだと訴えています。

 価格保障は、農産物の価格(または農家手取り価格)を一定の水準に維持する施策です。販売量が増えるにつれて収入が増えるため、農家の意欲と誇りを高めることにつながり、農家経営の安定、生産の拡大にもっとも有効だと考えています。

 これにたいし、所得補償は、農産物の生産や販売量とかかわりなく、耕作面積や家畜単位など一定の基準で農家の所得を補償する仕組みで、農業の多面的な機能の発揮、条件不利地での営農を補償する施策として、位置づけられるものです。現行の中山間地域等直接支払いや転作補助金などはこれにあたります。

 価格保障の仕組みは、農畜産物ごとの生産や流通、消費のあり方などに応じてさまざまですが、米については、かつての全量政府買い入れに戻すのではなく、民間流通が定着している現実をふまえて、平均的な生産コストと農家の平均販売価格の差額を補てんする「不足払い制度」を提案しています。当面、農水省調査の全国平均の米生産費1俵(60キロ)あたり1万6500円(2006年〜08年平均)を保障する、というものです。

 あわせて、水田のもつ洪水防止や水質浄化など国土や環境をまもる役割を評価して、10アールあたり1〜2万円の所得補償を実施することも提案しています。これによって、農家は、1俵平均で1万8000円前後が保障されることになります。これらの実施にあたっては、全国一律ではなく、地方の条件を踏まえて行うことも訴えています。

 民主党政権が目玉とする「戸別所得補償」政策は、平均的な生産費と販売価格の差額の補てんという点で、日本共産党の提案する「不足払い制度」と重なるところがありますが、補償水準が低すぎることに加えて、販売量と切り離した面積単位の「補償」であるために、販売量の拡大が収入増に直結せず、生産への意欲に結びつきません。

 民主党が価格保障を拒否し、所得補償にこだわるのは、生産刺激的な補助金の一律削減を義務づけるWTO(世界貿易機関)農業協定に無批判的に従っているからです。しかし、WTOのもとでも、欧米諸国では価格保障をしっかり維持しています。食料自給率の向上が切実な課題となっている日本でこそ、農家経営にたいする支援は、価格保障を中心にすべきだと考えています。

(2010・5・11)





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