2010年5月15日(土)「しんぶん赤旗」
B型肝炎訴訟
どこが「友愛」
解決引き延ばすな
国の態度に原告から怒り
「鳩山政権が『命を守る』と言ったのは何だったのか」「国は、われわれがポツリポツリと死んで行くのが望みなのか」―。14日、B型肝炎訴訟で「和解協議受け入れ」とは名ばかりの政府の姿勢に、札幌地裁の進行協議後の報告集会では、原告・弁護団から怒りの声が相次ぎました。
北海道原告団の高橋朋己代表(57)は、怒りに震えながら、「苦しみ続けている全国の患者に、とても報告できる内容ではありません」と語りました。
「2カ月もかかって、ただ『テーブルにつく』という結論だけなら、和解勧告の次の日にできたこと。私たちは国のずさんな医療行政で傷付けられたのです。私たちは頑張るしかありません」
全国弁護団長の佐藤哲之弁護士は「国側の態度は加害者の態度ではない。まるで人ごとのよう。最高裁判決からも4年たっている。いまさら何を検討するのか。今、政府がやるべきことは検討ではなく、決断だ。これが『友愛』を掲げる鳩山政権か。これからの主戦場は法廷の外。国の決断を促すための行動を起こしていきたい」と厳しい口調で語りました。
原告と支援者との交流会では、「国は早くからわかっていたにもかかわらず、ずっと放置してきた」「7月に具体案と国は言うが信じられない。僕たち原告団が団結してたたかっていくしかない」とのべました。
解説
被害者には時間がない
「私たちには時間がないのです。何人亡くなればいいのですか!」。肝硬変や肝がんに苦しむ原告たちの共通した思いです。
国が和解のテーブルに着いたことは当然ですが、今年3月の和解勧告から2人、提訴からすでに10人の原告が亡くなっています。対応が遅すぎます。
2006年6月、最高裁判決で、予防接種とB型肝炎ウイルス感染の因果関係を認め、国の責任が断罪されてから約4年です。札幌地裁が和解勧告して2カ月。原告が厚労相ら担当閣僚との面談を求めたにもかかわらず、会うことさえもしませんでした。
加害者が被害者に会い、心から謝罪をして償うのが道理なのに、国は原告らに門前払いをしてきました。スピードある和解協議の進行が求められます。
患者の救済範囲や賠償額などが焦点となりますが、札幌地裁の意向は「救済範囲を広くとらえる方向」です。被告国は、母子手帳などに予防接種の記録があることや血液検査で母子感染が否定できるなど被害救済を切り捨てようとしています。
接種を受けないと罰則規定があり、義務づけられていた予防接種は国民の多くが結核のBCGやツベルクリンなど複数の接種を受けています。母子手帳がなくとも、母親が亡くなっていても、兄弟姉妹が感染していなければ母子感染は否定でき、立証は可能です。
国は、甚大な被害拡大の責任に目をそむけることなく、憲法の「健康で文化的生活を営む権利」を擁護する施策を加害責任者としてただちに果たすべきです。(菅野尚夫)
B型肝炎 B型肝炎ウイルスの感染で発症する肝臓病。幼児期に感染すると持続感染(キャリアー)し、慢性肝炎、肝硬変、肝がんに進行します。主に血液を介して感染。インターフェロンの投与、ウイルス増殖を抑える抗ウイルス薬の投与などの治療法があります。集団予防接種の際に注射針や注射筒が連続して使用されたことから被害を広げました。
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