2010年5月16日(日)「しんぶん赤旗」

主張

家畜の口蹄疫

感染防止と健全な生育環境を


 宮崎県で家畜伝染病口蹄疫(こうていえき)の感染が広がっています。疑似患畜の発生はこれまでのところ同県内にとどまっていますが、14日現在で91例。殺処分対象の牛・豚は8万頭を超え、畜産業はもとより地域経済や住民生活に大きな影響を与えています。感染の拡大防止をはじめ畜産と地域経済の再生にむけた国の積極的な取り組みが求められます。

拡大防止に万全を

 口蹄疫は、牛、豚、羊などほとんどの偶蹄類(ぐうているい)動物がかかるウイルス性の伝染病です。空気、飼料、接触などで感染し、発病すると口やひづめに水疱(すいほう)ができ、衰弱し、発育障害や泌乳障害などで家畜としての価値をなくしてしまいます。人には感染しません。中国や韓国など周辺諸国での発生も報じられています。

 感染力が非常に強いため、拡大を阻止するには、感染したりその恐れのある家畜をすべて殺処分し、徹底した消毒などでウイルスを封じ込めなければなりません。

 現地では、感染の拡大防止に懸命の取り組みが行われていますが、どこまで広がるか先が見えない状況です。県外の畜産業者や家畜市場でも、万一の感染拡大に備えた対策がとられています。宮崎県内の畜産業と関連産業、地域経済や住民生活に大きな打撃を与え、全国的にも畜産にさまざまな影響をもたらしています。

 日本での口蹄疫の発生は2000年以来で、家畜伝染病予防法に基づいて国・県が防疫対策本部を設置しています。周辺地域での消毒の徹底、発病した家畜の所有者が飼養する牛・豚すべてを殺処分のうえ埋却や焼却し、当該家畜の発生地点から半径10キロメートル以内の移動制限、半径20キロメートル以内の搬出制限などが行われています。殺処分した畜産業者への補償、出荷延期のための費用や品質劣化などの損失補償、牛肉や子牛価格の暴落防止策などもとられています。

 日本共産党は、感染が確認された直後に紙智子参院議員(党農林・漁民局長)が現地に入り、対策の現状と関係者の意見を聞き、国会内に対策本部を発足させました。政府にたいして、感染拡大を防ぐ対策の強化とともに、殺処分した家畜の埋却場所の確保や消毒、検査、運搬などに必要な要員の確保、損害を受けた畜産農家にたいする万全な補償などを申し入れました。

 今回の発生は、感染地域、関連業者、殺処分された家畜頭数とも、日本では未曽有の規模です。政府の大規模化優先の畜産対策のもとで、一経営あたりの頭数が多くなり、また、宮崎県の農業生産にしめる畜産の比重が6割近いことなどから、これまで経験したことのない深刻な事態です。

再生を国の責任で

 赤松広隆農水相もようやく現地入りし、対策強化を約束しましたが、その多くは従来の枠内で、経営再建には融資が中心です。

 感染を終結させるには、地元まかせでなく政府が対策に全力をあげることが重要です。

 畜産関係者の生活補償、畜産経営の維持・再建にむけた資金の提供、さらに感染原因の一つと考えられる輸入飼料への依存からの脱却、効率最優先でなく家畜の健全な育成と安全な牛乳や食肉の供給などを軸にした、畜産政策の見直しに結びつけることが必要です。





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